松田 直樹
税務大学校
研究部教授


要約

1 研究の目的と方法

昨年度の研究(「国際投資等に係る税制のあり方―主な諸外国における最近の動向・趨勢を踏まえてー」税務大学校論叢第59号1〜138頁)では、近年、主な諸外国において、国際投資等に係る税制上の障壁を除去する流れが、益々、加速してきている一方で、租税回避行為への対抗策も強化されてきていることに鑑み、我が国でも、国際投資等の促進に繋がる措置が、今後、より積極的に講じられるようになれば、国際投資等の促進策と租税回避行為等の牽制策とにおいてバランスのとれたメリハリのある税制を構築する必要性が高まろうという問題意識の下、かかる税制の構築のための一つの選択肢となり得るであろう包括的否認規定について、主な諸外国等の包括的否認規定の制度設計上の特徴・趨勢や有用性・限界等を考察し、示唆を得た上で、その制度設計上のポイントを論考した。
上記の考察・論考を経て得られたのは、効果的な包括的否認規定を制度設計するには、目的テストや主観テストを組み込むことが一つの重要なポイントとなろうという結論であったが、その後、平成21年度税制改正が行われ、本改正では、法人税法23条の2において、外国子会社配当益金不算入制度を創設する措置が講じられた。本件措置は、上記の国際投資等の促進に繋がる積極的かつ抜本的な措置と位置づけられるものであることから、上記のような問題意識からすると、本件措置が講じられたことにより、租税回避行為等の牽制策を強化する必要性は更に高まったと考えられるが、本件措置によって、どのような租税回避行為等がどの程度誘発されるのか、また、どのような形で牽制策を強化することが必要となるのかなどは、必ずしも十分に明らかではない。
確かに、本件措置により、間接外国税額控除制度が廃止され、国外所得免除方式への部分的な移行が実現したことにより、税制及び執行が簡素化されるほか、国外資金の国内還流に係る税務上の障壁の除去が大きく進展し、その結果、国内への資金還流が促進され、国内での研究開発投資等が増加することなどもあり得ると考えられる。しかし、他方では、租税回避行為等が誘発されるなど、本件措置によるデメリットも生じ得ると想定されるところ、デメリットに対処するための特段の手当てはされていない。その理由としては、本件措置の導入を先ず優先する必要があること、また、デメリットの具体的な中身が明らかではないことなどが挙げられようが、今後、デメリットの中身が明らかになれば、特段の手当てをすることが必要となることも十分に考えられる。
本研究では、上記のようなメリットや可能性を有している外国子会社配当益金不算入制度を創設する措置は、高く評価されるべきでものであると考えられるものの、本制度の創設によって生じ得る幾つかのデメリットや問題点に対処することも肝要であるとの考えの下、本制度の創設に伴ってどのようなデメリットや問題点が生じ得るのかについて考察を加え、また、これらのデメリットや問題点に対処する上で効果的な手段となる措置やアプローチについての手掛かりを得ることを主たる目的とするものである。かかる考察を行うための手段やかかる目的を達成するための方法は様々であろうが、国外所得免除制度等を採用している主な国々が直面している問題点や、領土主義課税方式への移行を検討している主な国々における議論の趨勢・動向等に目を向けることは、特に有益であると思料する。

2 研究の概要

第1章:国際的二重課税調整方式を巡る議論と動向

我が国では、昭和28年に導入された直接外国税額控除制度と昭和37年に導入された間接外国税額控除制度が、国際的二重課税の調整方法として長きに亘り機能してきた。確かに、制度導入後の税制改正において、制度の適用範囲等の見直しが幾度となく行われたが、制度自体の抜本的な変更が必要であるとの声は、長い間、殆ど聞こえてこなかった。例えば、税制調査会平成12年7月答申でも、国外所得免除方式はタックス・ヘイブンなどによる有害な税の競争を助長するとの国際的な議論があることから、今後とも、外国税額控除方式を維持することが妥当であるとの趣旨が述べられていた。ところが、近年、グローバルな企業活動と国際投資等を促進することが内外において特に重要な課題と位置づけられるようになると、外国税額控除制度のメリットよりも、そのデメリットがクローズ・アップされるようになった。
とりわけ、外国税額控除制度については、近年、その控除枠の彼我流用という問題が少なからず認められるようになった。また、この問題を巡って争われた最高裁平成17年12月19日判決では、問題となった租税回避スキームは外国税額控除制度を濫用するものであるとして、結局のところ、原審である大阪高裁平成15年5月14日判決で敗訴していた税務当局に軍配が上がったものの、本最高裁判決で示された制度の濫用の概念の有用性の程度・射程範囲については、必ずしも明らかではないという課題が残された。このような問題・課題などを抱えた外国税額控除方式に対する最近の考え方・評価に微妙な変化が生じてきていることは、税制調査会平成19年11月答申が、外国税額控除方式から脱却する議論が進展している米国や英国等を含めた諸外国の動向についても注視して行く必要があるとの見解を示すようになったことからも示唆された。
このような流れの変化が認められる中、経済産業省が外国子会社配当益金不算入制度を創設する税制改正を行うことを要望するようになったが、経済産業省も、本制度の創設によるデメリット・問題がないと考えていたわけではなかった。経済産業省は、我が国の場合、国外所得免除制度を採用している諸外国と比較しても、同等レベルの租税回避防止措置(タックス・ヘイブン対策税制、移転価格税制)が既に導入されているとしながらも、外国子会社配当益金不算入制度を導入した時に、本来の趣旨を逸脱した租税回避行為を誘発するとの懸念から、制度・執行上強化が必要となることがあれば、かかる強化措置については、丸1企業にとって過度なものとならないこと、丸2納税者の予見可能性を確保すること、丸3制度移行に伴う企業行動の変化を見極めることなどが肝要であることから、適正かつ最小限のものとすべきであるとの見解を示していた。
確かに、我が国の租税回避防止措置の中には、諸外国の制度と比較して同等レベルのものも含まれているであろうが、不十分又は脆弱であるものも含まれていると思料する。しかも、外国子会社配当益金不算入制度の創設は、国際取引の実態把握をより困難なものとし、また、一定の条件を満たす国外の子会社から国内の親会社への配当を優遇する措置となり得るものであることから、既に巷で推奨されているオランダで支払配当に対する源泉税が免除される共同組合組織(COOP)を中間持株会社として設立するタックス・プラニング等は勿論、実態把握の困難性や制度のループ・ホールに付け込む租税回避行為等も積極化することによって、税収への影響だけでなく、現行制度の不十分さや脆弱さが更に深刻なものとなることも危惧される。このような危惧が単なる杞憂でないことは、以下の英米における国外所得免除方式や領土主義課税方式への移行論を巡る議論や動向等からも示唆される。

第2章:米国における議論の趨勢と動向

最近の米国では、多国籍企業の国際競争力が低下してきており、また、少なからぬ多国籍企業が、国外の子会社の当該国外源泉の所得を米国に還流させることなく留保したり、様々なタックス・プラニングを利用して、米国での税負担を軽減させるなどの動きを少なからず示している。その結果、米国における多国籍企業の海外での稼得所得からの税収は、かなり低いレベルのものとなっている。さらに、米国の税制上の輸出促進措置であった海外販売会社(FSC)や領土外所得排除(ETI)等を定める規定については、GATT・WTOが禁止する輸出補助金に該当するとして、その改廃を余儀なくされている。このような状況を打開せんとして、多くの税制改革案が示されており、例えば、2005年に発表された大統領諮問委員会の改革案では、国際的二重課税の調整方法として、領土主義課税方式を導入することが提言されている。
しかし、領土主義課税方式の導入案についても、その他の税制改革案と同様に、メリットとデメリットがあり、賛否両論が渦巻いている。確かに、国内での研究開発等に向けられる外国子会社からの配当に限って税負担を軽減することを定めた2005年の時限立法(内国歳入法§965)の下、例年以上の資金還流が実現したが、その効果は一部の大企業に限定されていたほか、本法で指定されている目的・使途に反する形で還流した資金を流用するなどの濫用も多かったとの指摘もある。また、領土主義課税方式への恒久的な移行案のデメリットも看過できるものではなく、とりわけ、移転価格問題の深刻化が予想されることから、議会や財務省は、移転価格のルール強化なしに同方式を採用することは凡そ真剣には考えていないとの指摘や、同方式の採用・適切な運用のためには、移転価格ルールの強化に加え、租税条約網の拡充や権限ある当局による紛争処理の更なる積極化等が必要となろうとの見方がされている。
実のところ、合同租税委員会議長が「移転価格は死んでいる」と述べているように、最近の米国の移転価格税制は、既に大きな問題に直面している。かかる問題を惹起している主役である費用分担契約の下では、関連者間で分担するのは、所得ではなく、費用であり、また、利益の実績値ではなく、予想値に基づいて費用分担が行われるため、研究開発の結果として高い価値の無形資産が生じても、米国の移転価格税制である内国歳入法§482が定める所得相応性基準に基づく否認が制限される可能性があり、そうすると、多国籍企業が本国で行う研究開発費用をグループ間で分担する場合、低税率国の関連会社に開発プロジェクトの初期段階からコストを負担させて共同開発者とし、後に大きな利益が出た時に、関連会社がロイヤルティの支払いをすることなく、利益の分け前として、かなりの額を得ることが可能となってしまうという問題があると言われている。
そもそも、内国歳入法§482の適用の合理性が問題となる裁判では、納税者は、通常の場合よりも重い立証責任を負うことなどを背景として、税務当局側が少なからず勝訴してきたほか、1995年には、費用分担契約に関する財務省規則§1.482-7が措置され、「適格費用分担契約」に該当するものに限り、内国歳入法§482の適用対象外とするとの制限が加えられたという経緯がある。ところが、費用分担契約が問題となったXilinx事件租税裁判所判決(2005)等で税務当局は苦渋を舐めたことから、2009年に措置された財務省臨時規則§1.482-7Tの下では、費用分担契約に係る文書化義務が厳格化されたほか、「投資家モデル」に基づき、既存の無形資産を提供する参加者に多くの研究開発の成果に起因するリターンが帰属し、ノン・ルーティーンの貢献を行わずに開発活動に係るファイナンスを提供するだけにとどまる参加者には、資本収益率相当の対価が帰属するにとどまるとの取扱いを行うこととされている。
上記の財務省規則が費用分担契約を利用した所得の国外移転に歯止めを掛けることができれば、領土主義課税方式が惹起する問題も幾分緩和されると想定されることから、本方式の導入案も、より有力な選択肢となり得るであろうが、最近は、金融危機に端を発した景気の悪化を受けて税収が減少するという状況の下、オバマ大統領は、国際的脱税・租税回避に強硬なスタンスで臨む税制改革案(CFCルールの強化措置等を盛り込んだランゲル法案やタックス・ヘイブンを利用した取引に対する課税強化措置等を盛り込んだレビン法案等と同様な問題意識に立脚するもの)を示している。本改革案には、過少資本税制や移転価格税制の機能を強化する措置も含まれているが、税収の更なる減少に繋がる可能性を秘めた領土主義課税方式の導入という選択肢については、蚊帳の外に置かれた形となっている。

第3章:欧州諸国における議論の趨勢と動向

英国でも、最近、多国籍企業の国際競争力の低下が問題となっている。また、Test Claimants in the FUGroup 事件ECJ判決(Case C-446/04)、Cadbury Schweppes 事件ECJ判決(Case C-196/04)及びTest Claimants in the Thin Cap Group 事件判決(Case C−524/04)では、当時の英国の配当課税制度、CFCルール及び過少資本税制がEC条約等と抵触する(又は抵触する虞がある)との見解が示された。このような問題があることなどを背景として、歳入庁は、2007年、「法人の海外利益に対する課税」と題したドキュメントを発表し、本ドキュメントでは、国境を跨ぐ配当に係る国際的二重課税の調整方法として、国外所得免除方式を採用するが、本方式の採用に伴い、貸付けやロイヤルティの支払契約等を利用して英国の親会社の利益を国外の子会社に移転した上で、課税免除となる配当として支払うなどの動きが生じ得ることが危惧されることから、CFCルール等を強化するという案を示したという経緯がある。
ところが、上記の案に対して産業界が猛反発し、また、国外所得免除方式への移行措置が講じられない場合には、法人税率が28%である英国から、法人税率が12.5%であるアイルランド等に本店や企業活動の多くを移すなどの意向を医薬品業界の大手企業等が示したことなどを背景として、財務省も、上記の案を棚上げするとの意向を翻した上で、2008年12月には、上記のディスカッション・ドキュメントに修正を加えたドラフト案を公表するという動きを示した。本ドラフト案では、2009年財政法で国外所得免除方式に移行する一方、CFCルールの根本的な改正については、将来的な課題とするという意向が示されている。本方式の下では、株式保有割合やポートフォリオ目的の投資に係るものであるのか否かなどに関係なく、英国において国境を跨ぐ配当への課税が免除される。
もっとも、税収減少を抑えるなどの観点から、補完手段として、丸1配当を支払う国で税の軽減がされている配当や資本的な性質を有する配当、丸2税務上の利益を得ることを主要な目的とする「一定の類型に該当するスキーム」に関係している利益分配などについては、課税免除の対象外とされているほか、親子会社間での資金貸付に係る利子控除の制限を強化するという観点から、丸3「利子に対するワールドワイド・デット・キャップ」の採用及び丸4一定の金融取引の主要な目的が租税回避であるものは、その税務効果を否認するという「容認できない目的ルール」の機能を拡充することとされている。また、欧州以外に資本を移動させる一定の取引に対する財務省の同意に関する規定(所得税法§765等)は廃止されるものの、丸51億ポンド以上となる株式や資産の移転について報告義務を課することとされている。
英国の財務省が2008年に発表した上記のドラフト案で示されている一連の補完手段が立脚する視点・アプローチと凡そ共通するものは、国外所得免除制度や資本参加免除制度を有する主な欧州の国々(ドイツ、フランス及びオランダ等)が講じている租税回避行為等への対抗策の中にも見い出すことができることから、これらの補完手段は、これらの大陸法の国々の対抗策の有用性と限界等も参考としているものと考えられるほか、最近の英国では、今日的な租税回避行為・スキームに適切に対処するためには、従来とは異なる否認アプローチ(「原則に基づくアプローチ」と称されるもの)をも採用することによって、伝統的な否認アプローチの再構築を行うことが肝要であるとの考え方が強まってきているとの事実もある。上記の一連の補完手段は、決して、このような事実、流れ及び文脈等と離れた対抗手段として手当されたものではないという点に留意する必要があろう。

第4章:我が国への示唆と提言

上記の通り、米国では、領土主義課税方式への移行によって、税収不足や移転価格の問題等が更に深刻化するとの危機感が、同方式への移行を躊躇させる一つの大きな要因となっており、2010年予算法でも、タックス・ヘイブンを利用した脱税や租税回避行為への対抗措置を強化するという選択肢が優先的に採用されることが確実視されている。確かに、英国では、2009年財政法が成立したことにより、国外所得免除方式への移行が実現する運びとなったが、英国の主な国際課税制度の機能がCadbury Schweppes 事件欧州司法裁判所判決等によって実質的に制限されることとなり、また、資本参加免除制度等を採用している主な欧州の国々等では、配当に係る優遇措置を狙った租税回避行為等が認められることなどを踏まえ、「利子に対するワールドワイド・デット・キャップ」等に代表されるような強硬な補完措置が講じられることとなっている。
我が国でも、最近、所得の国外移転や国際的租税回避行為等への対応策を強化するという動きがあり、例えば、移転価格税制との関係では、グループ内役務提供や無形資産取引等の重要性が今後更に高まることが確実視されるという問題意識の下、一定の立法上の措置(取引単位営業利益法を定める規定の手当てなど)や行政上の措置(例えば、比較利益分割法及び残余利益分割法等に係る通達の整備やグループ内役務提供や費用分担契約等に係る移転価格事務運営要領の整備など)が講じられているが、移転価格税制の機能を強化する余地があると考えられる点や移転価格税制の実際の適用に係る不透明性・不確実性が必ずしも十分に払拭されていない点なども見受けられるところとなっており、このような点が、外国子会社配当益金不算入制度創設後は、従来にも増して税務当局に不利に作用することも危惧される。
例えば、事務運営要領2-19及び事例25等によって、移転価格課税と寄付金課税の区分が、ある程度明確なものとなったが、東京地裁平成12年2月3日判決では、「寄付金であるかどうかは、・・・企業間の特殊な関係に基づく租税回避のための価格操作と認めるべきかどうかによって、これを判断すべきものと解される」と判示されていることから、移転価格課税と寄付金課税の区分には、依然として、不透明性があり、かかる不透明性が税務当局に不利に作用することも考えられないではない。また、我が国の場合、移転価格を巡る訴訟では、税務当局の立証責任が重いという問題があり、実際、基本三法に準ずる方法やその他政令で定める方法に依拠して税務当局が算定した独立企業間価格は、東京高裁平成20年10月30日判決では合理的なものではないと判示されたが、このような立証責任に係る問題が、所得相応性基準を有していない我が国の費用分担契約等への対応を更に困難なものとすることも想定される。
また、我が国の場合、租税特別措置法66の5が定める過少資本税制については、非居住者又は外国法人が内国法人の発行済株式又は出資の総数又は総額の100分の50以上の数又は金額の株又は出資を直接又は間接に保有する関係にある場合に適用されるにとどまるものであることから、英国の税務当局が国外所得免除方式への移行に伴って深刻化するであろうと懸念している国外子会社から国内の親会社が受ける貸付け("upstream loan"と称される。)に係る利払いの控除が不当に増加するという問題に適切に対処することができないことが危惧される。この問題に対処するためには、過少資本税制の適用範囲を拡大する(又は英国の「利子に対するワールドワイド・デット・キャップ」と同様な機能を持たせる)改正を行うことが必要となろう。
さらに、国際的な租税回避行為へのより柔軟かつ効果的な対応を図るという観点から、包括的否認規定(General Anti-avoidance Rule, GAAR)を措置するという選択肢も検討する余地があると考えられるが、かかる選択肢の導入の政治的なハードルが高いのであれば、外国子会社配当益金不算入制度が惹起し得る国際的な租税回避行為との関係では、英国の例のように、一定の類型の租税回避目的の金融取引を「容認できない目的ルール」のような基準に基づいて否認することを可能にする個別規定を措置するという選択肢も考えられる。まずは、このような個別否認規定を措置した上で、その後、必要に応じて、その適用対象となる取引範囲を除々に拡大する税制改正を積み重ねることができれば、準包括的否認規定とも位置づけられるミニGAARを整備することも可能となる。
もっとも、国際的租税回避行為の否認機能を強化する措置を講じれば十分というわけでもないであろう。国際的脱税・租税回避の実態把握レベルの低下を抑える措置が講じられなければ、否認機能を向上させる措置の有用性が十分に発揮されないことにもなりかねないため、オバマ大統領が示した改革案や英国の2009年財政法が採用しているタックス・ヘイブンを利用した取引情報の収集を充実するための措置等からも示唆を得ることが肝要であろう。強力な移転価格税制、高い包括的否認機能を有する法理及び広範な情報申告書制度等を有する米国や有用性の高い租税回避スキーム開示制度等を有する英国が、国外所得免除制度等への移行措置と一連の補完手段を一つのパッケージとして捉えていることに鑑みると、我が国の場合も、これらの措置や補完手段等を参考にしながら、国際投資等の促進策と租税回避行為の牽制策とのバランスの実現に資する措置を講じることを前向きに検討することが必要なのではないかと思料する。

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