2 国税庁の取組

〜 酒類業の振興 〜

 国税庁では、酒類業界の現状や課題等を踏まえ、国内外の酒類市場の拡大を図り、酒類業の更なる振興、健全な発達につながるよう取り組んでいます。

(1)海外市場の開拓(輸出促進)

 「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略」(令和7(2025)年5月改訂)において、酒類のうち、清酒(日本酒)、ウイスキー、本格焼酎・泡盛の3品目が輸出重点品目と位置づけられており、品目ごとのターゲット国、輸出目標等が定められています。この目標の達成に向け、これら重点3品目をはじめとした日本産酒類の販路開拓支援や認知度向上などに取り組んでいます。

イ 販路開拓支援

 日本産酒類の更なる輸出促進を図るため、海外で開催される大規模展示会に出展し、ジャパンパビリオンにおいて国内酒類事業者による商品プロモーションや商談の場を提供しました。また、海外に配置している酒類輸出コーディネーターを活用し、現地での商談会や日本産酒類のプロモーションセミナーを実施しました(酒類輸出コーディネーターについては、国税庁ホームページの「酒類輸出コーディネーターの設置について」を併せてご覧ください。)。

ロ 認知度向上

 ジャパン・ハウスにおける日本産酒類のプロモーションや、海外の酒類専門家の酒蔵への招へいを実施しました。

ハ 酒類事業者向け補助金

 日本産酒類の輸出拡大及び酒類業の経営改革・構造転換を図るとともに、酒類業の健全な発達を促進することを目的として、酒類事業者による日本産酒類のブランディング、インバウンドによる海外需要の開拓などの海外展開に向けた取組及び国内外の新市場開拓などの意欲的な取組を、酒類事業者向け補助金により支援しています。

ニ ブランド価値向上のための地理的表示(GI)1 普及拡大

 国内外における酒類のブランド価値向上等の観点から、GIの指定を行うとともに、その普及拡大に取り組んでいます(最新の指定状況は、国税庁ホームページの「酒類の地理的表示一覧」をご覧ください。)。パンフレット作成のほか、セミナー等のイベントを開催しています。

ホ 輸出促進法に基づく品目団体2の認定

 輸出促進法に基づき、清酒(日本酒)、本格焼酎・泡盛の「品目団体」として、令和4(2022)年12月に日本酒造組合中央会を認定しました。

へ 関税や輸入規制の撤廃等の国際交渉

 日本の酒類事業者の更なる輸出環境整備のため、国際交渉において、関税や輸入規制等の撤廃、GIの相互保護、有機酒類の同等性承認に向けた協議を行っています。
 なお、東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所の事故を起因とした各国の輸入規制については、引き続き撤廃を求めていきます。
 さらに、海外の国・地域が導入を検討している規制案については、日本産酒類の輸出に際しての新たな障害とならないように対応しています。

(2)ユネスコ無形文化遺産「伝統的酒造り」の周知広報に関する取組

 令和6(2024)年12月、日本の「伝統的酒造り」が、ユネスコ無形文化遺産に登録されました。
 国税庁では、日本の「伝統的酒造り」に関わる歴史や文化の豊かさを、国内外の多くの方に知っていただけるよう、文化庁や「日本の伝統的なこうじ菌を使った酒造り技術の保存会」等と連携し、国内外におけるシンポジウムの開催やPR素材(ポスター、動画等)の作成など、様々な周知広報に取り組んでいます。

※ 周知広報に関する取組やPR素材(ポスター、動画等)については、国税庁ホームページの「ユネスコ無形文化遺産『伝統的酒造り』について」をご覧ください。

《コラム5》ユネスコ無形文化遺産「伝統的酒造り」(令和6年(2024)12月登録)

 令和6(2024)年12月、日本の「伝統的酒造り」がユネスコ無形文化遺産に登録されました。
 「伝統的酒造り」とは、伝統的なこうじ菌を用いて、近代科学が成立・普及する以前の時代から、杜氏・蔵人等が経験に基づき築き上げてきた酒造り技術であり、日本各地の自然の特徴や気候風土を反映する形で発展を遂げ、日本酒、焼酎、泡盛、みりんなど様々な種類の酒が生み出されました。「伝統的酒造り」のわざで造られる酒は、今日の日本の社会的習慣、儀式、祭礼行事にも深く根差したものであり、幅広い日本の文化の中で不可欠な役割を果たしています。

(3)技術支援

イ 醸造技術等の普及の推進

 各国税局には、技術部門として鑑定官室(沖縄国税事務所主任鑑定官を含みます。)を設置しており、酒類製造者からの技術的相談への対応、鑑評会や研究会等の開催、酒造組合の講習会等への職員派遣などを通じ、酒類総合研究所3の研究成果や、先端技術などの普及を推進しています。

ロ 酒類の品質及び安全性に関する支援

 酒類の生産から消費までの全ての段階における酒類の安全性の確保と品質水準の向上を図ることを目的として、酒類の製造工程の改善などに関する技術指導を行っているほか、酒類の放射性物質に関する調査・情報提供などにより安全性を確認しています。

ハ 酒類総合研究所の取組

 酒類総合研究所は、令和3(2021)年度から令和7(2025)年度までの「第5期中期目標期間」において、@酒類業の振興のための取組、A酒税法等の適切な運用のための取組、B酒類に関するナショナルセンターとしての取組として、日本産酒類のブランド価値向上や酒類製造の技術基盤の強化等のための研究、酒類醸造講習等の酒類業界の人材育成及びアウトリーチ活動等の各種業務を積極的に実施しています。

(4)中小企業対策

 中小企業が大半を占める酒類業界が社会経済情勢の変化に適切に対応できるよう、日本酒造組合中央会の近代化事業をはじめ、業界団体の各種の取組を支援しています。また、関係省庁・機関や地方自治体等と連携しつつ、政府の中小企業向け施策(相談窓口、補助金、税制、融資等)について、事業者や業界団体に情報を提供し、活用の促進に取り組んでいます。

(5)酒類の公正な取引環境の整備

 国税庁では、酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律に基づき、平成29(2017)年6月に「酒類の公正な取引に関する基準4」(以下「基準」といいます。)を制定(令和4(2022)年3月改正)し、基準の周知・啓発に取り組んできました。
 また、令和5(2023)年7月からは、基準の一層の周知・啓発や、自社の価格設定等が基準等に従って行われているか自主的に見直すこと等を目的とした照会文書を発送する取組を開始したほか、引き続き、酒類の取引状況等実態調査を実施し、基準に即していない取引が認められた場合には指示を行うなど、公正取引委員会とも連携しながら公正取引の確保に取り組んでいます。

(6)社会的要請への対応

イ アルコール健康障害対策

 アルコール健康障害対策基本法(平成26(2014)年6月施行)に基づき策定された第2期の「アルコール健康障害対策推進基本計画」(令和3(2021)年4月〜令和8(2026)年3月)や、令和6(2024)年2月に厚生労働省が発表した「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」などを踏まえ、関係省庁、業界団体とも連携・協力しながら、アルコール健康障害の発生防止等に向けた取組を推進しています。

ロ 20歳未満の者の飲酒防止対策

 20歳未満の者の飲酒防止に向け、啓発ポスターやパンフレットを作成するほか、毎年4月を「20歳未満飲酒防止強調月間」と定め、関係省庁・業界団体と連携した啓発活動を行っています。

ハ 資源リサイクル等の推進

 ビール業界では「地球温暖化対策計画」(令和3(2021)年10月閣議決定)に基づき策定した「低炭素社会実行計画(カーボンニュートラル行動計画)」に取り組んでおり、国税審議会酒類分科会において、これらの取組を評価・検証しています。

  • 1 地理的表示(GI:Geographical Indication)制度は、酒類や農産品等について、ある特定の産地ならではの特性(品質、社会的評価等)が確立されている場合に、当該産地内で生産され、一定の生産基準を満たした商品だけが、その産地名(地域ブランド名)を独占的に名乗ることができる制度です。
  • 2 農林水産物・食品の輸出促進に関する法律に基づき、輸出重点品目ごとに、生産から販売に至る関係者が連携し、輸出の促進を図る法人を、法人からの申請により、国が「認定農林水産物・食品輸出促進団体」として認定します。「品目団体」は農林水産物・食品輸出促進団体の通称です。
  • 3 酒類総合研究所は、日本で唯一の酒類に関する国の研究機関であり、国税庁の任務遂行のための技術的基盤として、酒類に関する高度な分析及び鑑定を行うとともに、酒類及び酒類業に関する研究、調査及び情報提供等を実施しています。
  • 4 酒類に関する公正な取引につき、全ての酒類業者(製造・卸・小売)が遵守しなければならない必要な基準であり、@酒類を正当な理由なく継続して総販売原価を下回る価格で販売し、かつ、A自己又は他の酒類業者の酒類事業に相当程度の影響を及ぼすおそれがある取引を行ってはならないこととされています。
    なお、公正な取引の基準については、おおむね5年ごとに再検討を加え、必要があると認められるときは、これを改正するものとされています。