篠原 克岳
税務大学校
研究部教授
京都議定書に定められた二酸化炭素削減目標達成のための政策手段として環境税の導入が議論されていることから、エネルギー関係諸税との関係も念頭におきつつ、環境税を導入する場合に検討すべき論点を整理する。
「ピグー税」としての環境税
財源としての環境税
「環境税」の導入状況
評価
既存エネルギー関係諸税と環境税案
効果予測分析
制度設計上の論点
国境税調整(輸入製品への課税、輸出製品への還付)、
国際競争下にある産業部門への課税軽減措置、という政策的対応が考えられるが、
は執行費用面からみて困難と思われる。このため、諸外国でも様々な軽減措置が導入されているのが実情であるが、軽減措置には問題が多い。
執行面における検討
課税時点で減免、
事後的に還付、の二つの方式が考えられる。減免方式の場合、課税時点で消費者の軽減要件該当性を判断するため、課税段階と消費段階が近接している必要がある。(流通経路が減免の場合とそうでない場合とで明確に峻別出来るのであれば、離れていても可能であろう。)課税段階と消費段階が離れている場合は還付方式を採らざるを得ないが、過大申告(不正還付)を防ぐためには、消費者の消費量を確認するための実効的な手段が必要となる。
あらかじめ免税軽油使用者証の交付を受けた上で、
必要量の軽油につき免税証の交付を受け、販売店で免税証と引換えに免税軽油を購入する、という二段階の仕組みとなっており、慎重な手続きとなっている分、執行費用は高くなっていると考えられる。
以上の検討をまとめると、
理論上、環境税は化石燃料の二酸化炭素含有量に比例する税率とすることが望ましい、
特定産業部門への軽減措置は、理論上も執行費用面からも望ましくない、ということである。
但し、税率を高くするならば産業の国際競争力への影響も看過し得ない。この点も踏まえるならば、我が国では、「税率は国際競争力をなるべく阻害しない程度とし、軽減措置は極力限定する」という、薄く広いタイプの環境税が選択肢の一つと考えられよう。
税率を高く設定する場合には、環境税と排出量取引制度の「棲み分け」という案が検討できる。すなわち、排出量取引制度への参加企業には環境税を課税しないこととし、環境税の国際競争力への影響を緩和しつつ、排出量取引により二酸化炭素排出削減へのインセンティブは維持する、という制度設計である。
但し、この場合は排出量取引参加企業に対し環境税を還付することとなるが、過少申告・過大申告のリスクは依然として存在する。このため、排出量の監視体制の整備、及び企業における制度遵守体制の確立が必要となろう。
論叢本文(PDF)・・・・・・937KB
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