原 武彦
税務大学校
研究部教授


要約

1 研究の目的(問題の所在)

金融所得課税の一体化(本要約において、以下「一体化」という。)は、更に推進することとされていることから、今後、一体化を進めるに当たっての論点と在り方を検討するものである。
なお、この一体化は、基本的には、個人(主に居住者)の金融所得に対する所得税等の課税に関するものであると言える。
検討に当たっては、政府税制調査会金融小委員会における議論・報告、その後の税制調査会における答申、経済産業省及び金融庁の審議会・研究会での議論・報告、租税法学者の議論、各研究会や経済界からの提言、金融所得に対する課税の現状と最近の税制改正の状況、主要国における制度等を確認し、今後の一体化に向けての論点と在り方を示すとともに、税務執行上の問題点やその解決策についても検討する。

2 研究の概要

(1)金融所得課税の現状と最近の税制改正

  • イ 金融所得の課税関係(利子所得、配当所得、株式等の譲渡所得等及びその他の金融所得の課税の仕組み)を確認・整理した。
  • ロ 平成20年度の税制改正により、平成21年分から、丸1上場株式等の配当等に係る配当所得(大口株主等が受けるものを除く。)について、20%の税率(所得税15%、住民税5%、以下本要約において同様)による申告分離課税を選択できることとされ、丸2上場株式等に係る譲渡損失の金額がある場合には、上場株式等に係る配当所得の金額(申告分離課税を選択したものに限る。)との損益通算ができることとされた。
  • ハ 平成21年度の税制改正では、上場株式等の配当所得及び譲渡所得等に対する10%(所得税7%、住民税3%)の軽減税率の特例措置について、平成20年度改正時に設けられた金額制限を撤廃した上で平成23年まで適用することとされた。
     また、同改正法の附則において、税制の抜本的な改革について平成23年度までに必要な法律上の措置を講ずるものとするとされ、そのために検討を加える基本的方向性として、丸1一体化を更に推進すること、丸2納税者番号制度の導入の準備を含め、納税者利便の向上及び課税の適正化を図ることなどが記載されたことは注目される。

(2)主要国の金融所得課税の動向等

  • イ 主要国の金融所得課税の動向
    利子所得は、米国及び英国はともに総合課税、フランスは、源泉分離課税と総合課税の選択制となっている。配当所得は、米国は、連邦税が二段階の税率での課税で州・地方政府税は総合課税、英国は二段階の税率での課税、フランスは、源泉分離課税と総合課税の選択制となっている。株式の譲渡所得は、米国は、連邦税が二段階の税率での課税で州・地方政府税は総合課税、英国及びフランスは、申告分離課税となっている。
    ドイツでは、平成20年までは、利子所得、配当所得及び株式の譲渡所得(1年以下保有の売却)について総合課税であったが、税制改正により、平成21年から申告不要(分離課税)制度が導入され、総合課税との選択制となった。また、ドイツで納税者番号制度が実施となったことも注目され、これらの税制改革について紹介する。
  • ロ 二元的所得税と我が国への応用
    二元的所得税は、主に北欧諸国で採用されている制度で、すべての所得を資本所得と勤労所得に分類し、資本所得の損失の通算は資本所得内で行い、資本所得は比例税率(勤労所得の最低税率と法人税率と等しく設定、おおむね30%程度)で、勤労所得は累進税率で課税するというものである。
    我が国への応用に当たっては、個人事業主が高い税率が適用となる総合課税の事業所得を回避するため、法人を設立して資本所得(配当所得)として申告することに対する措置についての教訓が参考となる。例えば、ノルウェーでは一定の非公開法人のオーナーの一定の所得を個人事業所得として総合課税の対象とする措置が導入されたが、これを回避する手法が採られ、実質的には機能しなかったとされている。このような意味からもオーナー株主等が受ける配当等の一体化の対象への拡大は、慎重に検討すべきであると考える。
    二元的所得税の考え方を金融所得課税に取り入れることは有益であるが、北欧諸国等と我が国の税制の相違を踏まえながら我が国へ応用することが必要である。
    なお、OECDの報告書(平成18年)では、我が国の制度は、二元的所得税に準ずる制度(Semi-Dual Income Tax)に分類されている。

(3)税制調査会、審議会等での議論

経済財政諮問会議で取りまとめられ、平成13年6月26日に閣議決定された「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」(いわゆる「骨太の方針」)には、「従来の預貯金中心の貯蓄優遇から株式投資などの投資優遇へという金融のあり方の切り替えや起業・創業の重要性を踏まえ、税制を含めた諸制度のあり方を検討する」と記載され、「貯蓄から投資」への方針が打ち出された。
そして、平成15年6月の政府税制調査会の中期答申「少子・高齢社会における税制のあり方」においては、「今後、金融所得課税をできる限り一本化すべきである」との方向性が示された。これを受けて税制調査会金融小委員会において平成15年10月から検討が進められ、平成16年6月には同委員会から一体化についての基本的考え方が報告さている。また、同時期に、経済産業省産業構造審議会産業金融部会小委員会、金融庁の金融税制に関する研究会でも同様の議論がなされ、報告書が公表されており、内容を整理し、紹介する。それぞれ、考え方について相違が見られるが、一体化を推進するとの方向では、おおむね一致している。

(4)一体化へ向けての論点と考え方

  • イ 一体化の必要性(一体化が必要とされる理由・背景)
    • (イ)税制調査会金融小委員会での報告では、丸1貯蓄から投資への政策要請の下での投資環境の整備、丸2金融商品間の中立性の要請(課税の中立性)、丸3簡素で分かりやすい税制(課税の簡素性)、丸4投資リスクの軽減が掲げられている。
    • (ロ)一方、所得税は総合累進課税が望ましいとする見地から、一体化は高額所得者優遇、所得再配分機能低下を招くなどとする批判がある。
    • (ハ)他方、丸1個人の投資は高額所得者に限られておらず、高額所得者優遇ではない、丸2金融所得は足の速い所得(保有者、資産等の国内外の移動が容易)であり、国外への逃避を防止し、源泉徴収を中心として一定税率での課税確保が重要であるとの見解がある。
  • ロ 金融所得の課税方法(一体化の意義と金融所得課税の推移)
    • (イ)一体化は、金融所得について一定税率(20%)での分離課税とし、金融所得間で広く損益通算を認めるというものである。
      分離課税の税率が20%とされているのは、利子に対する分離課税の税率が長い間20%(注1)とされてきたこと、また、申告不要となる場合の配当所得の原則的な課税、株式等の譲渡所得の原則的な課税、金融類似商品の収益に対する課税、長期保有(譲渡した年の1月1日現在の保有期間が5年超)土地建物の譲渡所得等に対する課税については、いずれも20%の税率の分離課税となっていることなどが考慮されているものと考えられる。

      (注1) なぜ、税率を20%とするのかについては、利子所得を一律20%の税率による分離課税とする改正法案の国会の委員会での審議において、最低税率は国税10.5%、地方税5%である中、利子所得としては、平均的なケースを考えると、勤労性所得、給与所得の上積みとしてあるので、所得税の税率構造等を考えると、国税、地方税合わせて20%が適当である旨説明されている。

    • (ロ)金融所得課税のこれまでの推移を確認し、整理した。
      配当所得は、基本的に総合課税とされてきた。配当控除が昭和23年に控除率15%で導入され、昭和25年のシャウプ税制では25%に改正された後、控除率については変遷があったが、昭和48年分からは10%となり、現在に至っている。
      利子所得課税についても総合累進課税の対象とするのが望ましいとされながら、貯蓄奨励や資本蓄積等の政策要請に応じ、源泉分離課税制度、源泉分離選択課税制度、非課税制度等が導入され、また、グリーン・カード制を導入し総合課税とすることも試みられたが実現に至らずに、昭和63年の改正後、20%の税率の源泉分離課税制度が続いている。
      株式等の譲渡所得等の課税は、非課税制度、継続取引等から生じる所得の課税、昭和63年からの原則として申告分離課税、上場株式等の源泉分離選択課税を経て、平成15年から申告分離課税に一本化され、以後、「貯蓄から投資へ」の改革に資する軽減・簡素化が順次図られてきた。
  • ハ 金融所得課税の一体化の対象範囲と金融所得の定義
    • (イ)現在の10種類の所得区分の見直しの議論(注2)があるほか、抜本的に見直すべきとの見解もあるが、一体化への拡大に当たり、当面は現在の所得区分は維持し(金融所得に係る雑所得等の分離課税等の創設等は必要)、特別措置で対応することが現実的と考える。その後、金融・経済情勢の行方や納税者番号制度導入の議論等も踏まえて、金融所得区分の創設を含めた抜本的な改革について議論していくことが必要であると考える。

      (注2) 例えば、平成17年6月の税制調査会基礎問題小委員会「個人所得課税に関する論点整理」では、給与所得(給与所得控除の見直し、特定支出控除の拡大)、退職所得(2分の1課税の見直し)、事業所得(適切な課税確保)、譲渡所得(2分の1課税の見直し)、一時所得と雑所得との統合、不動産所得(廃止)、年金所得の雑所得からの独立などが挙げられており、一体化の議論とは別に今後引き続き検討されるべきであると考える。

    • (ロ)利子所得への拡大も検討する必要がある。しかし、預貯金の利子については、口座保有者(注3)全員への支払通知書の交付、口座保有者全員の確定申告の可能性を踏まえるとともに、納税者番号制度、適正な税務執行、課税の簡便性、財源の確保上の課題及び納税者利便等との関係を考慮する必要があり、これらを勘案すると、当面は、現在の20%の税率による源泉分離課税の維持が適当であり、その後、納税者番号制度の行方や環境整備を見極めながら再検討することが望ましいと考える。

      (注3) 銀行預金口座7億7,474口(平成20年9月末)、信用金庫預金口座1億4,644口(平成20年9月末)、郵便貯金4億1,477口座、枚(平成18年度)。
      一方、公社債の利子や公社債投資信託の収益の分配等に係る利子は、源泉徴収は維持して、20%の税率による申告分離課税の選択制度を創設し、申告による一体化の対象に含めることが適当であると考える。これにより、平成21年から導入されている上場株式等の配当の申告分離課税制度ともバランスが取れるものと考える。

    • (ハ)大口株主等に係る上場株式等の配当は、申告分離課税の選択及び上場株式の譲渡損失との損益通算の対象から除かれており、配当の申告不要制度についても非上場株式の配当と同様となっている。事業参加的側面が強い株主等が受ける配当等の一体化の対象への拡大は慎重に検討すべきであるが(上記(2)ロ)、オーナー経営の多い非上場会社とは異なる上場会社の配当については拡大してよいと考える。
  • ニ 金融商品間の課税の中立性の確保等
    課税の中立性等の観点等から、類似の金融商品間では同様の課税とすることが望ましいため、次のような課税が適当であると考える。
    • (イ)所得税の源泉徴収の対象外である国際金融機関により発行された債券の利子や国外の銀行等の預貯金の利子は総合課税となっているが、これらを20%の税率による申告分離課税とし、預貯金の利子を除いて一体化の対象とする。
    • (ロ)公社債の譲渡による所得や公社債投資信託、公社債等運用投資信託等の受益証券の譲渡による所得は非課税とされ、その損失はなかったものとされているが、株式等や証券投資信託の受益権の譲渡による所得と同様に20%の税率による分離課税とし、損失が生じた場合は譲渡損失として一体化の対象とする(有価証券の譲渡という点で同じ性質との観点)。
    • (ハ)割引の方法により国外で発行される一定の公社債及び一定の短期割引国債等の譲渡による所得は総合課税の対象となっているが、これらの割引債の譲渡による所得についても20%の税率による分離課税として一体化の対象とし、上記(ロ)の公社債の譲渡による所得と同様の課税とする(下記(チ)の割引債の譲渡による所得は、一体化の対象としない。)。
    • (ニ)金融類似商品の収益(定期積金の給付補てん金、一定の抵当証券の利息、金投資口座の利益等、外貨投資口座の為替差金等)は、20%の税率による源泉分離課税となっている。このうち、定期積金の給付補てん金については預貯金の利子との類似性が強いため引き続き源泉分離課税を維持し、その他のものについては、金融所得に係る雑所得等として20%の税率による申告分離課税の選択制度を創設し、申告による一体化の対象に含める。
    • (ホ)外貨建ての金融商品に関連する為替差損益は、内容に応じて総合課税又は分離課税となっているが、金融商品間の中立性又は他の金融所得との中立性を確保する観点から、金融所得に係る雑所得等として20%の税率による分離課税とし、一体化の対象に含める。
    • (ヘ)保険のうち、満期保険や解約返戻金等の収益で保険料の運用に相当する部分は、20%の税率による申告分離課税とし、一体化の対象とする(現状は一時所得等として総合課税)。
    • (ト)先物取引に係る所得については、総合課税の雑所得等となるものと先物取引に係る分離課税の雑所得等となるものがあるが、他の金融所得とは異なる顕著な特徴も有していることから、一体化の対象として広く損益通算の対象とするかどうかは、引き続き検討することとする。
    • (チ)割引債の償還差益(18%又は16%の税率で源泉分離課税)は、課税時期(発行時課税)及び税率の相違から、一体化には含めず、現状の制度を維持する。
       また、償還差益について発行時に所得税が源泉徴収され、源泉分離課税となる割引債の譲渡による所得も一体化の対象とせず、現行どおりとする。
  • ホ 経費の範囲と損失
    利子所得は、必要経費は一切認められておらず、その理由についての説明や見解は様々であるが、ワラント債の利子の必要経費を認めるべきとして争われた事件では、必要経費の控除は「国の租税立法政策に由来」し、認めなくとも憲法には違反しないとされた。
    また、配当所得は、株式取得のための借入金利子のみ経費として認められており、その損失の他の所得との損益通算は認められていない(注4)。

    (注4) 配当所得の損失について、他の所得との損益通算が認められなくなったのは昭和36年の税制改正からであるが、当時の税制調査会の答申では、丸1無配の株式取得のために巨額の負債を負い、多額の配当の損失を生じさせ、損益通算を行う事例の発生、丸2株式を取得するために要した負債の利子か他の家事上の負債利子かの税務上の認定が困難である点等が指摘されている。

    申告分離課税を選択した公社債等の利子や配当所得について、制度論としては一定の必要経費を認める余地はあると考えられるが、上記のような経緯及び租税回避防止等の観点を踏まえると、いずれもその損失の他の所得との損益通算については制限することが適当であると考える。
    また、雑所得についても、その損失を他の所得から控除することを認めない現在の制度を維持することが相当であると考える。
    ただし、株式等の譲渡(公社債等の譲渡による所得を課税対象とする場合の公社債等の譲渡を含む。)に係る雑所得については、株式等の譲渡に係る譲渡所得に対する課税と同様とすることが適当であると考えられることから、その損失については、一体化の対象とする利子所得、配当所得及び他の雑所得等(いずれも申告分離課税を選択したものに限る。)からの控除を認容する。

  • ヘ 元本の損失の取扱い
    会社の倒産等に係る株式等の損失について、特定口座内保有上場株式等が価値を失ったことによる損失は、譲渡損失とみなされることになった。それ以外の場合の株式等の無価値化による損失への拡大は、適正執行のための担保措置が講じられることが必要であるが、現状では適当な担保措置は見当たらないことから、相当でないと考える。
    公社債のデフォルトにより元本が回収できないことによる損失は、保有者や取得価額の真正性を確認できるよう、特定口座内保有上場株式等の場合と同様の担保措置を設けることを条件として認容してよいと考える。この場合、一体化の中で認容する見地から、資産損失又は雑損控除に類似する方法による認容ではなく、譲渡損失とみなす方法が適当であると考える。
    また、預金のペイオフ損失については、丸1預金のペイオフは、元本1千万円までの預金とその利子が預金保険により全額保護されており、損失回避のための一定の措置が採られていること、丸2税制の中での損失の認容は、「貯蓄から投資へ」の政策要請とは異なる観点であること、丸3預貯金の利子に対する課税は、現行の源泉分離課税を維持し、当面は一体化の対象としないことが適当と考えることから、現状では税制の中で認めるのは適当でないと考える。預金のペイオフ損失についても一体化の中で認容すべきであるとの見解もあり、一体化の対象を預貯金の利子へ拡大する際には、再度、検討すべき課題であると考える。
  • ト 損益通算の在り方等
    • (イ)利子所得、配当所得及び金融類似商品の収益等で、申告分離課税を選択したものについては一体化の対象とし、有価証券の譲渡による損失との損益通算を認めることが適当であると考える。
    • (ロ)平成22年からは、源泉徴収選択口座において上場株式等の配当等と上場株式等の譲渡損失の損益通算が可能となる。源泉徴収口座が複数あった場合にもそれらの源泉徴収口座内での損益通算だけで申告不要とすることができれば簡便性等の観点から望ましいが、異なる金融機関の間での納税者情報の伝達や源泉徴収に係る所得税の調整をどのように行うかなどについて課題があることから、複数の源泉徴収口座の所得の損益通算は確定申告によらざるを得ないと考える。
  • チ 租税回避等への対応(課税上有利な所得区分への変更、損失の創出等への対応)
    課税上有利な所得区分への変更のインセンティブは、上記ニの対応により減少すると考えられる。
    損失の創出については、譲渡(発生)の時期を選択できるという点で、有価証券の譲渡損が問題となる。その対応策としては、丸1他の所得との損益通算の対象とする有価証券の譲渡は、現行の上場株式等の一定の譲渡及びそれに準じた公社債等の一定の譲渡に限定すること及び丸2控除対象とする所得は、申告分離課税による一体化の対象とした利子所得、配当所得及び雑所得等(金融類似商品等)に限定することがよいと考える。また、損益通算の範囲を金融所得全般に更に広げる場合には、金額の制限を設けるもの(例:米国、3,000米ドル)や一定割合を制限するもの(例:スウェーデン、株式譲渡等以外のグループの資本所得からの控除は70%のみ認容)等を参考とした制限措置の検討が必要であると考える。
    また、租税回避否認(防止)の一般規定の創設は、検討すべき課題として議論がある。
  • リ 納税環境の整備
    • (イ)資料情報制度
      法定調書等について、適宜、範囲の拡大等の改正がなされている。
      また、上場株式配当等の申告分離課税及び上場株式等に係る譲渡損失の上場株式等に係る配当所得の金額からの控除の創設に伴って、上場株式等の配当の支払通知書が創設され、また、確定申告の際にはその支払通知書又は特定口座年間取引報告書を、確定申告書に添付しなければならないこととされた。
      このように、一体化を推進する場合には、それらに対応する法定調書等が提出され、執行体制が整備されることが必要であると考える。また、提出が円滑かつ確実に実行されるためには提出する側の事務負担にも配慮した環境作りが望ましいと考えられることから、e-Taxで提出する場合のより提出しやすい環境整備や光ディスク、磁気ディスク等での提出手続の一層の簡素化等について提案する。
    • (ロ)納税者番号制度 一体化の拡大が、直ちに納税者番号制度の導入につながるものではないとされるが、納税者番号とは異なる選択制の金融番号を導入する考え方、納税者番号の将来の導入を視野に入れて対応すべきであるという意見等がある。納税者番号制度方式としては、税務番号方式、基礎年金番号(年金番号方式)、住民票コード(住民基本台帳方式)等があるが、それぞれにメリット・デメリットがある。これらのほか、現在、導入について検討されている社会保障番号があり、納税者番号として活用する新たな候補として注目される。
       平成21年度の税制調査会の答申及び自民党の税制改正大綱では、納税者番号の導入を目指すべきであるとされている。更に、与党内に納税者番号制度に関する検討会を立ち上げて精力的に議論することとされているほか、税制調査会でも新たにスタディグループによる検討が開始(5月12日)されるなど、納税者番号制度導入についての議論が行われている。適正・公平な課税の実現及び税務執行の観点から納税者番号制度の導入は必要であり、グリーン・カード制導入及び廃止の際の議論や社会保障カード・社会保障番号の導入の議論なども参考にしながら、番号制導入に向けて議論が更に進展することが望まれる。 なお、各国の納税者番号の最初に国番号を付して、国際納税者番号として発展させる提案があり、将来構想として興味深い。

Adobe Readerのダウンロードページへ

PDF形式のファイルをご覧いただく場合には、Adobe Readerが必要です。Adobe Readerをお持ちでない方は、Adobeのダウンロードサイトからダウンロードしてください。

論叢本文(PDF)・・・・・・5,189KB