浅井 光政

税務大学校
研究部教授


はじめに

 租税法上、いわゆる時価とは何かが問題になる。例えば、相続税法上の時価を巡る問題や法人税法上の親子会社間取引で恣意的な価格設定が行われたときの問題などである。
そこで、本稿では、法人税法上の時価を中心に所得税法上の時価及び相続税法上の時価について考察するものである。本研究では、租税法上の時価の解釈を考察するとともに、租税法律主義の下、納税者側から要請される法的安定性・予測可能性と課税庁側から要請される取扱いの公平性・画一性という観点から租税法上の時価評価(価値測定評価)のあり方についても考察する。
第1章では、法人税法上の時価と企業会計上の時価との比較検討を中心として、時価の一般的な概念について概観する。
第2章では、租税法上の時価について、所得課税における法人税の時価と所得税の時価について検討するとともに、所得課税における時価と贈与・相続課税における時価を比較することによりそれぞれの時価の違いを考察する。
第3章では、贈与・相続課税における租税回避事例を題材として、相続税法における具体的な時価評価の適用場面を検討することにより、贈与・相続課税における時価評価の取扱いのあり方について考察する。
第4章では、所得者の価格設定行為について検討し、特に、所得者の租税回避行為である恣意的な価格について考察する。
第5章では、所得者が交換取引(価格設定を行わない取引)を行った場合の交換資産の時価について考察する。
第6章では、法人税法・所得税法・相続税法における時価に対する本研究の結果についてその論点を整理する。

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