河本 幹正

税務大学校
研究部主任教授


はじめに

 日本経済のグローバル化の進展に伴い、日本企業は世界的な規模での大競争時代に突入している。このような経済環境の中で、企業は国際的大競争に対応するため経営手法や会計基準等の国際標準化を推進するとともに、欧米諸国と同等の条件で国際競争をすべく、国内における商法、税法及びその他会計諸制度等、企業経営を巡る様々な法制度についての改正・整備を要請している。

 こうした経済社会の国際化の流れの中で、平成9年6月独占禁止法が改正され、純粋持株会社の設立が原則自由となり、また、同年6月に企業会計審議会が「連結財務諸表制度の見直しに関する意見書」を発表し、従来の個別情報重視から、連結情報を中心とするディスクロージャー制度への転換を図った。このように日本の会計諸制度も着実に環境整備が図られつつあり、そして次に税制に関しても、まだ日本の税制に導入されていない連結納税制度についての関心が非常に高まってきた。税制調査会による平成11年度の税制改正に関する答申では「連結納税制度の導入について本格的な分析・検討をすることが適当」とされ、また、同年の自民党の税制改正大綱でも「2001年を目途に連結納税制度の導入を目指す」としている。

 しかし、連結納税制度は、個々の法人毎に課税する現行の法人税制とは異なり、企業集団を一つの「課税単位」とする制度であり、また、全ての法人が連結対象法人となるわけではないので、法人税の課税体系は、現行の個々の法人を課税単位とする体系と企業集団を一つの課税単位とする体系とが併存することになる。従って、連結納税制度が導入された場合には、単体課税の体系と企業集団課税の体系との間の課税関係の整合性を確保する措置など制度面の整備をするとともに、執行体制についても納税者の管理システムや調査手法の開発など大幅な組織改革が必要になるものと考える。

 我が国に連結納税制度が導入された場合に想定される問題点等について、米国等諸外国の連結納税制度を参考に、制度面及び執行体制双方から検討したものである。

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