佐藤 正勝

国税庁国際業務室
国際業務第一係長


はじめに

 最近、タックス・ヘイブンに対する投資が節税等の魅力ある手段としてこれまでにない喧伝がなされている。実際、我が国企業のタックス・ヘイブンへの進出法人数は昭和63年度現在2,911社、我が国企業の対外直接投資総額の約2割がタックス・ヘイブン向けとなっており、その増加傾向は、統計の上でも見てとることができる。
こうした背景もあってか、我が国のタックス・ヘイブン税制について、これを米国、加、西独等が採用するものに改めるべしとの比較法的観点に立った研究も行われている。
米国は、タックス・ヘイブン税制を最も早く導入した国であり、米国企業の多国籍的展開を背景に、その制度も精緻なものとなっている。
そこで、本稿では、日米両制度の比較・分析を行い、我が国のタックス・ヘイブン税制に対する批判の妥当性を検討するとともに、本制度の今後の在り方についても考察することとした。
本稿の具体的問題意識は、日米のタックス・ヘイブン税制が同じくタックス・ヘイブンに関する租税回避の規制策として導入されながら、全く異なるアプローチを採用したものとなっている。そこで、その違いは実際上どの程度で、それは我が国の制度を考えていく上で問題とすべきものであるのか否かについて分析することにある。
2つめの問題意識は、タックス・ヘイブン税制の執行を確保するための国外情報の収集、罰則についての日米の制度の相違点を把握し、その相違点から、我が国が学ぶべき点を明らかにすることにある。
3つめの問題意識は、トリーティ・ショッピング条項の我が国租税条約における採用可能性の検討に資する見地から、米国租税条約上のトリーティ・ショッピング条項を分析することによって、米国の経験を学ぶことにある。

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