(注1)


西野 敞雄

税務大学校
研究部教授


はじめに

 1978年6月6日の住民投票において、カリフォルニア州の住民は、約2対1の大差(419万票対226万票)で、「プロポジション13」(提案13号) を可決した。そして、1978年7月1日から州憲法の一部として成立し、発効した。この提案13号は、正式には、「税の制限−住民発案による憲法修正」(Tax-Limitation−Initiative Constitutional Amendment)とよばれる。そして、これは、住民発案(イニシアティブ) として、他の案件と並んで同日に住民投票にかけられたものであった。
この成立の余波は、あまりにすさまじく、「納税者の反乱」(taxpayer's revolt; tax revolt)、「減税地震」(tax quake)とも呼称された。全米に伝えられ、1978年の中間選挙の大きな争点の一つとなったほか、日本・ヨーロッパにまで伝えられた。そして、いったん形の上では納税者の反乱が静まったかのようにもみられうるが、一方では「歳出の反乱」(spending revolt)が進行している。これは新たな反乱なのであろうか。それとも同じものであろうか。
納税者の反乱については、日本の新聞紙上でも報道されたし、いくつかの解説もみられる(注1)。しかし、例えば、米国の納税道義は高いといわれてきたが、納税者意識・納税意識が変ったのかどうか、地方税の問題としてだけでなく税一般の問題としても考えるべきではないかといった問題については、必らずしも満足するものは、得られなかった。
私も納税者の反乱に関する資料を集めているうちに、「政府と税に関する民衆の態度動向」 (Changing Public Attitudes on Governments and Taxes)(以下「A・C・?T・R調査」とよぶ。)という興味深いA・C・?T・Rの調査を米国在勤中の友人の協力により入手できた。また、おりから、日本・アメリカの納税者意識に関するいくつかの世論調査も発表された。そこで、前述のA・C・?T・R調査の資料を紹介しつつ、世論調査にみる納税者意識という観点から、納税者の反乱・歳出の反乱についての資料を整理することをネライとして、本稿に着手した。あわせて、日本の納税者意識・納税意識と比較考察を試みることとする。

(注1) いろいろの報道解説のうち、まとまったものとしては、次のものがある。本文に戻る

イ 能勢邦之「より能率的な政府を要求」(日本経済新聞昭和54年1月14日)(以下、「能勢(1)」とよぶ。)

ロ 同『米国「納税者の反乱」の教訓』エコノミスト1979年3月6日(以下「能勢(2)」とよぶ。)

ハ 同「米国の"納税者の反乱"と行財政改革の方向」税務経理昭和54年3月30日号(以下「能勢(3)」とよぶ。)

ニ 岩田規久男「米国を襲う納税者の反乱」エコノミスト1979年4月5日号(以下「岩田」とよぶ。)

ホ 林省吾「プロポジション13の概要と論点」税務経理昭和53年6月30日号(以下「林(1)」とよぶ。)

へ 同「緊急措置の概要と影響度」税務経理昭和53年8月22日号(以下「林(2)」、とよぶ。)

ト 香山充弘「カリフォルニア州における減税を求める住民投票(プロポジション13)について」地方税78年10月号(以下「香山」とよぶ。)

チ 黒田東彦「米国にみる均衡財政主義の"復権"」週刊東洋経済昭和54年8月4日号。

〔補注〕 脱稿後、次の論稿を入手したので、附記する。『米国の「納税者の反乱」この一年』のシリーズをなす。

イ 林省吾「プロポジション13の影響」税務経理昭和54年8月17日号。

ロ 同「アラン・ポスト諮問委員会の答申の概要」税務経理昭和54年8月21日号。

ハ 同『「納税者の反乱」をめぐる一考察』税務経理昭和54年8月28日号。

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