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よし牟田 勲

税務大学校
研究部教授


まえがき

 ECの共通法人税制指令案までのECにおける検討の経緯、すなわちノイマルク報告の二重税率方式の勧告から、ヴァン・デン・テムペル報告の分離方式による調和の提案を経て、EC委員会指令案の半額インピュテーション方式に至る経過と問題点については、別稿(注1)で検討したところである。
そこで、本稿では、このEC委員会指令案の各条項について、その趣旨、期待されている効果、前提と影響、EC諸国の指令案各条に関する現行制度等を研究することとした。
本来は、別稿と一体をなすものであるので、別稿とともに読まれることを期待したい。

(注1) よし牟田勲「ECの共通法人税制の進展と問題点」(中川一郎先生古稀祝賀税法学論文集P461〜508)。以下の指令案のテキストはEuropian Taxation Vol. 16, No. 2, 3, 4(1978年2, 3, 4月号)p.52〜93 に掲げられているものによった。この指令案は1975年8月1日委員会よりEC理事会へ提出された OJ No. C253 of November 1975 である。その仮訳は、大蔵省主税局調査部月報 Vol. 22 No. 2 の翻訳を原文と対照精読し、補正して同論稿に掲げたものを用いている。
なお、最近におけるECの共通法人税制問題の進展についての2、3の報道を紹介すると、次のとおり。(12について詳しくは、「経理情報」 (中央経済社)218号23頁以下参照)本文に戻る

1 ロンドン・エコノミスト(1979年1月23日号)……ブリュッセル発として「ECの(共通)法人税−さほど厳しくはならない模様−」と題し、ECの財政コミッショナーであるリチャード・バーク氏がこの問題についての議会の反対は今や克服可能であると考えていると報じている。すなわち、共通法人税により会社及び株主の負担が軽減されるが共同体内の投資が刺激され増大し各国の歳入の減少は償われるというもので、強かったフランス社会党の消費者へ負担が転嫁等するという理由のための反対等も説得できようという報道である。

2 ファイナンシァル・タイムズ(1979・6 P11)……この記事は「欧州議会議員、委員会の統合計画を攻撃」と題され、ECの法人税制統合についての委員会提案が、直接選挙のための解散直前の最後の欧州議会全体会議において、攻撃されたことを報じている。これによると欧州議会の経済金融委員会(オランダのニイボルグ議員)がレポートを出し"状況はまだそのような行動のために、十分熟していない"と結んでいるという。ECの財政コミッショナーであるリチャード・パーク氏は閣僚理事会の日程をきめるフラス政府を説得する努力をはじめているが、議会筋の反対はなお強いというものである。

3 タックス・マネージメント・インターナショナル・ジャーナル(1979年12月号47頁)……1のオランダのニイボルグ議員の報告を議会が承認する決議を採択したことを報じたもので、このニイボルグ報告は、「法人税及び配当に対する源泉徴収制度の段階的調和に関する提案についての予備的報告」であり、この報告では、若干の国において行われている居住者株主と非居住者株主との間の課税上の差別はできるだけ早く終了させる必要があり、また法人税及び配当に対する源泉徴収の調和の準備をする必要があると強調していると報じている。委員会は、議会から"法人税の将来の調和のためのガイド・ラインを定める第一の提案"及び"加盟国の法人税の課税所得の調査と賦課の制度の整合を図る第二の提案"を作成することを求められたとも述べられている。2と同じ報告のことを報じたもののようであるが、かなりニュアンスが異っている。

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