(注)


横田 種雄

税務大学校
研究部教授


はじめに

 遺産が未分割で各相続人又は包括受遺者の取得財産が具体的に定まらない状態においても、未分割遺産につき相続分又は包括遺贈の割合によって相続税を課税することについては、一般的にはあまり疑問視されていないようであり、裁判例(注)でも、被相続人の遺産であっても相続人が現実に受領していないものは相続税の課税価格の対象から除外すべきであるとの主張に対して、被相続人の遺産に含まれるものはすべて相続開始の時から共同相続により承継取得され、遺産分割が行なわれるまでは相続人の共有に属するものであるから、遺産未分割の状態において相続税を課することは適法であると判示したものがある。
しかし、現行相続税制度がいわゆる遺産取得税体系をとり、取得者ごとにその取得者の実情に応じた相続税負担を実現しようとしていること、遺産未分割の状態はいわば暫定的・過渡的なものであって、遺産分割によって始めて各相続人又は包括受遺者の相続又は遺贈による取得財産が定まるものであることからみて、遺産未分割の状態において相続分又は包括遺贈の割合による権利を課税価格計算の基礎に含めて相統税を課税することに全く問題がないわけではない。
また、遺産未分割の状態において、相続分又は包括遺贈の割合による権利の価額を評価して相続税の課税価格計算の基礎に算入するとした場合に、相続分又は包括遺贈の割合による権利の価額をどのように評価するかについても、未分割遺産の状態における各共同相続人又は包括受遺者の権利の理解のしかたに関連していろいろな問題がある。
本稿は、遺産未分割の状態における相続税の課税関係について若干の検討を行なったものである。

(注) 東京地裁昭和47年9月26日判決税務訴訟資料(以下「税資」という)66号257頁以下 本文に戻る

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