(注1)


相原 安夫

税務大学校
租税理論研究室教授


はじめに

 所得税は、各種の人的控除と累進税率の組合せによって、個人の担税力に即応した負担を求めることができる、近代的、合理的な租税であり(注1)、所得の再分配に効果的に寄与しうるところから、税体系の中心的地位を占めるべきものとされている(注2)。それだけに、税負担の公平に関する要請も強い。
ところで、昭和48年7月から所得税の青色申告者を対象に、5年6カ月間の租税特別措置として、みなし法人課税選択制度が発足したが、これは企業が個人形態によった場合と法人形態によった場合の税負担の差を縮少させる目的を含むと考えられる。しかしながら、所得税法体系から見ると、種々の問題を孕んでおり、特に、負担の質的公平(所得の性格による公平)の面において、新たな波紋を投げかけたものではなかろうか。
本稿は、このみなし法人課税選択制度をめぐる諸問題を考察しつつ、併せて、所得税の存立基盤である負担の公平についても、若干の検討を試みようとするものである。


(注1)税制調査会「長期税制のあり方についての答申」(昭和46.8.3)3頁本文に戻る

(注2)同上、6頁。本文に戻る

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