白石 満彦

税務大学校
租税理論研究室助教授


はじめに

 借地権をめぐる課税関係は、複雑で、且つ、問題の多い分野である。本稿は、かかる複雑な借地権課税の理解と問題点の解決への一助になることを期待して、借地権が課税上如何なる取扱いを受けて来たかを、借地権の法的な保護ないし、経済的な実態にも触れつつ、その変遷を辿ろうとするものである。
本稿の内容は、所得税法、法人税法及び相続税法上の借地権に関する規定及びその取扱いを中心とし、財産税法及び富裕税法についても触れる。
全体の構成として、明治以降現在に至るまでを3期に区分した。第1期は、借地権確立期とし、民法制定以後、大正10年借地法制定までの時期で、借地権が、財産権として民事法上保護、強化された時期である。第2期は、借地権価格生成期で借地権課税の歴史は、実質的には、この時期に始まる。前記借地法制定前後から、第二次世界大戦を経て、昭和25年に、地代家賃統制令がかなり解除されるまでの時期で、東京地方を中心として借地権価格が発生し、権利金授受の慣行が全国的に拡大して行く時期である。第3期は、借地権課税展開期で、昭和25年頃全国的に価格を有するようになった借地権が、昭和30年代に入り、各税法上種々問題を展開していく時期で、本稿の中心をなす部分である。
なお、本稿で借地権課税とは、建物等の所有を目的とした他人の土地の利用関係に対する課税関係をいい、従って、借地法上の借地権に限らず、また、使用借権に対する課税関係をも含むものである。

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