鈴木 芳正

税務大学校主任教授


序説

 わが国における税体系の近代化は、昭和25年のシャウプ勧告に基づく抜本的税制改正によって実現したものであるが、間接税について申告納税制度が採用されるにいたったのは昭和37年4月の税法改正によるものであるから、直接税に比較して近代化の日も浅くそれに納税者の対象も限定されており、さらにまた、国民の視聴が所得税、法人税の論議に集中していることと、わが国税制に占める間接税の地位が直接税に対する補完的立場に立たされているという関係もあって、間接税に関する基本的税制上の諸問題の検討は一般的にやや立ち遅れの感を免れえない。そこで現行間接税の問題点について、個々の技術的なことはつとめて除外し、重要な基本的問題について考察し、批判または提案の形式をもって私見を述べることとした。もし、私の批判なり提案が、今後における間接税制の改善のための論議の中において、問題意識の一端としていささかなりとも寄与するところがあれば幸いである。
なお、ここにいう間接税は、直接税と間接税の租税法学的本質論に基づく区分をいうのではなく、わが国現行税務の行政組織上における所掌区分に従うものである。
わが国における間接税制上の基本的問題を考察するにあたり、最も注目しなければならないのは、税制調査会が「長期税制のあり方」の答申の中において指摘している間接税の改正の方向に関する意見である。そこで、税制調査会が、その答申で述べている点に関してこれを明らかにすることから、本論を進めて行くこととする。

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