【答え】

1.俳優として営業することに課される税

【解説】

俳優税は、府県雑種税と呼ばれる地方税の一種として課税されていた税金で、地方ごとに制度が異なっていました。多くの府県では、俳優の格を基準に税額の等級を決定しており、納税は俳優が所属した俳優組合や事務所などがまとめて行っていたようです。
 俳優税を納めると、俳優としてその府県で営業をするための免許に相当するもの(鑑札)が発行されました。租税史料室が所蔵している俳優税の鑑札を見てみると、本名や芸名の他に納税管理人として所属事務所の名前が記載されています。
 明治時代の俳優を集めた番付表からは、俳優の番付を客観的に表す指標の一つとして、屋号や報酬と一緒に俳優税の等級と思われる表記を見ることができます。
 芝居などの娯楽は江戸時代から盛んに行われ、江戸や大阪などには多くの芝居小屋がありましたが、近代になり演劇や映画などが登場すると、各都市には複数の劇場が建ち並ぶようになりました。俳優税が課税された背景には、人々が都市に集まってきたことや、雇用形態の変化から定収と定休が得られる人が増えたことなど、社会全体にゆとりができて娯楽が発展したことが挙げられます。
 ちなみに、劇場に関する地方税としては他にも興行主が納める興行税や、入場した観客が納める観覧税などが多くの府県で課税されていました。
 このうち、観覧税は昭和13年に入場税という名称で国税にもなり、一時期地方税に移譲されていた期間を挟みながら、平成元年の消費税導入まで存在していました。

(研究調査員 菅沼 明弘)