【答え】

1.綿織物

【解説】

日露戦争の戦費調達のため、明治37年の第1次非常特別税で毛織物の消費税が新設されました。更に、翌明治38年の第2次非常特別税において、毛織物以外にも課税されるようになり、すべての織物に消費税が課されることになったのです。そして、明治43(1910)年に織物消費税法が制定され、織物の消費税は日露戦争終結後も恒常的な税として存続となりました。
 当初から課税された毛織物は、洋服用の生地であった羊毛の織物であり、当時、普及しつつあった洋服需要を見込んだ税でした。しかし、翌年になると、貧困層から富裕層までが衣類に用いていた織物全般に広げられたのです。
 その後、大正15年の税制改正では、生活必需品の負担を軽減する社会政策の一環として綿織物が非課税とされました。綿織物は、戦国時代に綿作が日本に伝来して以来、庶民の衣類として愛用された生地でした。
 なお、税法上の綿織物の定義は、純然たる綿織物のほか、原料の95%以上を綿で組成し、他の原料糸を交えたものとなっています。つまり、綿糸の組成率が問われたのです。
 このほか、綿織物に類似の生地として、綿糸を原料とするメリヤス、フェルト等があり、これらも同様に非課税となります。なお、組紐などの組み物やセーターなどの編み物は、そもそも織物ではないので、織物消費税の対象外でした。

(研究調査員 舟橋明宏)