【答え】

3.大阪市

【解説】

大阪市の振替納税は、明治39(1906)年に創設された郵便振替制度を利用して、明治42(1909)年5月に導入されました。
 当時、国税である地租や所得税などの徴収は市町村が行っていました。大阪市の納税取り扱い窓口は、出張所を合わせても11か所に過ぎず、一か所当たりの納税者数は10万人を優に超過していました。
 そのため、税務署も、市町村とともに納税窓口の増設や納税組合の設置など、納税の利便性を高める方策を検討しており、最終的に国税当局と大阪市で議論された結果、郵便振替制度を利用した振替納税の導入が決定されたのです。
 国税当局が、この制度に注目していたのは、納税者の急増に伴い督促状の発送数が増加していたからです。税務署の手数も大変でした。その一方で、納税者からは納税窓口の混雑で半日も時間を取られるので改善してほしいとの声も出ていたのです。
 郵便振替制度の利用により、郵便局に口座を持つ納税者には、市役所から郵便局に納税通知が送付され、郵便局から税金が納付されるようになります。そのため、郵便振替制度は納税者と市役所の双方の手間を省く便利なものでした。
 大阪市では、振替納税の導入により、市内の取扱郵便局99か所が新たな納税窓口となり、納税の利便性は飛躍的に高まりました。なんと、導入一年後には、郵便振替の利用者は6割に達したのです。
 納税利便の向上で期限内収納が高まることになり、結果として、大阪市の滞納件数が大きく減少することになりました。このことは、税務署の督促状の発送件数の削減等につながり、滞納整理事務も大幅に改善されたのです。
 こうした大阪市での成功事例により、京都市(明治43(1910)年4月)、新潟市(同年6月)、和歌山市(同年7月)、岡山市(同44(1911)年2月)、横浜市(同年7月)など、多くの都市で導入されていきました。東京市でも、明治45(1912)年4月に導入されました。

(研究調査員 牛米 努)