【答え】

3 鉄鉱

【解説】

明治時代の鉱物の採掘に係る税は、採掘物の価格に応じて課税される抗業税と鉱区の面積に応じて課税される借区税がありましたが、明治23(1890)年に鉱業条例が制定され、それまでの抗業税に代わり鉱業税が、借区税に代わり鉱区税がそれぞれ設けられました。鉱業税は採掘物の価格の1%が税額と決められ、また、鉱区税は鉱区1千坪(約33004)毎に対して年間30銭課税される税で、いずれも、採掘者が納めていました。
 鉱業税では金鉱、銀鉱、銅鉱及び石炭などの採掘に課税されましたが、鉄鉱の採掘に対しては、製鉄業の保護振興を図るため非課税とされました。その背景には当時進められていた殖産興業政策があったと考えられます。
 鉱山開発や製鉄は明治政府が進める殖産興業政策の重要事項でした。鉱業税が制定された明治23年当時は、近代的な製鉄所の導入が始まったばかりで、釜石市の釜石製鉄所が停止と再開を繰り返しながら稼働していました。そのような中、鉄の原料である鉄鉱石の採掘に係る鉱業税を免除し、原材料の供給と製鉄業の振興に努めました。
 明治38(1905)年に鉱業条例は廃止され、それに代わる鉱業法が制定されると鉱業税の非課税品目は拡大され、鉄鉱のほか、金鉱、銀鉱、鉛鉱の採掘も鉄鉱と同様にこれらの鉱物の産出を奨励するために非課税となりました。

(研究調査員 菅沼 明弘)