【答え】

アパート業

【解説】

当初の営業税は、法人も個人も業種を指定して外形に課税する方式でした。具体的には、旅人宿は、建物賃貸価格に定率をかけたものに、従業者数1人当たりに定額をかけたものを加える形で課税されており、利益の多少にかかわらずに課税されることに批判がありました。そこで、大正15年から営業収益税として、法人は業種を問わず、個人は業種を指定し、純益を基準に税額を計算することになりました。

個人が営業(収益)税を課される業種のひとつに「旅人宿業」というものがあり、問題の下宿はこれに該当するとして営業(収益)税を課税されましたが、アパート業はどの指定業種にも該当せず、営業(収益)税の課税対象外でした。

このような格差について、ある下宿屋が「アパートに営業収益税を課せないことは下宿屋との権衡がとれぬ」という投書を寄せています(税15巻3号、国民租税協会、昭和12年)。下宿に代わってアパートが流行しているのに、営業収益税が課税されないのは不公平だと不満を述べているのです。編集者は、下宿同様のアパートには課税をしているはずだと前置きした上で、「大部分のアパートは人を宿泊せしめると言ふ観念でなしに、単に室を貸与してゐるものが多いのではないでせうか。こんなのはどうも旅人宿とは言へないと思ひますから、仮(たと)へ貴殿の様な下宿屋と権衡が保てないとしても止むを得ないかと存じます」と答えています。

現在の事業税も、法人は業種を問わず、個人には業種を指定して課税しています。下宿は営業(収益)税から引き続いて旅館業として指定業種となっており、アパートなどの不動産貸付業が事業税の課税対象になるのは、昭和56年(1981)の改正からです。

(研究調査員 舟橋明宏)