問い

 現在、税務署の名前は同じ名前が重ならないように、工夫がされていますが、税務署が発足した明治29年(1896)、同じ名称をもつ税務署はいくつも存在しました。その中で、同名の税務署の数が最も多かったのは、「富岡税務署」で全国に4署ありました。では、この4つあった「富岡税務署」はそれぞれどの県にあったのでしょうか。

答え

群馬県、福島県、愛知県、徳島県

解説

 現在、富岡税務署は群馬県のみです。現在の名称は富岡税務署となっていますが、大正13年に高崎税務署に吸収されてしまいました。昭和22年に群馬富岡税務署として独立し、昭和42年に富岡税務署に改称し、現在に至っています。
 では、ほかの「富岡税務署」はどうなったのでしょうか。
 福島県にあった富岡税務署は明治42年に双葉税務署、さらに大正13年には相馬税務署と合併して現在に至ります。愛知県の富岡税務署も明治42年に新城税務署と合併し、いくつかの紆余曲折を経て、現在の新城税務署となります。徳島県の富岡税務署は、明治42年に那賀税務署と改称しますが、昭和16年に再び富岡税務署という名称に戻りました。それから昭和33年に現在の阿南税務署へと改称しています。つまり、昭和16年から昭和33年までは、富岡税務署といえば、徳島県の現阿南税務署をさしていたのです。
 このほかにも、中村税務署(兵庫、徳島、高知)、松山税務署(埼玉、奈良、愛媛)、飯田税務署(石川、長野)など同一名称となっていた税務署はかつて、いくつも存在していました。
 それでは、なぜこのように同一名の税務署ができてしまったのでしょうか。この理由は、税務署の成立過程が関係します。税務署ができる前は、各府県ごとに設けられた収税署が国税徴収業務を担っていました。収税署は郡単位に置かれ、その名称が冠せられました。その府県内で名称が重複しない限りは、混乱が生じなかったのです。しかし、明治29年に税務管理局官制ができ、全国統一の機関として税務署が発足すると同一名称が混乱の元となったため、徐々に名称を変更していったのです。