問い

 江戸時代の関東地方にあったある農村では次の野菜を栽培していましたが、税の負担の仕方が異なる作物がひとつだけあります。それは次のうちのどれで、どのような違いがあるのでしょうか?

  1. ダイコン
  2. レンコン
  3. ニンジン
  4. ナス
  5. キュウリ

答え

 2のレンコンです。
 一般に、江戸時代の税は、大きく年貢(本年貢、本途物成(ほんとものなり))と小物成(こものなり(年貢以外の雑多な諸税全般))に分けることができます。
 年貢は、検地と呼ばれる土地調査により作られた検地帳に石高(土地の価値を米の収穫高で換算したもの)が付けられた田・畑・屋敷地など(「高請地(たかうけち)」という)に課せられます。年貢は米による納税が原則でしたが、畑に課せられるもの(畑方年貢(はたかたねんぐ))は地方によって違いがあり、金銭や収穫物などでも納税されていました。
 一方の小物成は、多種多様な雑税です。内容で大別すると、山野河海などの石高が付けられていない土地等(「高外地(たかがいち)」という)の用益や産物に課せれるもの(野銭・山年貢・池役・萱野銭(かやのせん)など)、営業認可として課せられるもの(市場・湯屋・髪結・問屋・水車・質屋・鍛治など)、夫役徴発(ぶやくちょうはつ(人足として労働力を提供))などがあり、「役(やく)」「永(えい)」「分一(ぶんいち)」「運上(うんじょう)」「冥加(みょうが)」などと呼称されていました。
 このように江戸時代の租税制度は、田畑には年貢が賦課されており、田畑以外には小物成の網の目が張り巡らされていたのです。
 問題の例を見ると、レンコン以外の4つの野菜は普通の畑作物なので、年貢(畑方年貢)を負担しました。関東地方の畑方年貢は、「関東畑永法(かんとうはたえいほう)」という独自のものであり、定額の金銭納付方式でした。それに対して、レンコンは沼で採れる作物であり、沼は「高外地」なので年貢は賦課されず、小物成を負担しました。レンコンの小物成は「蓮根運上(れんこんうんじょう)」などと呼ばれ、金銭を支払い、数年間(3年〜7年程度の年季のものが多いようです)その沼からレンコンを採集する権利を得るものでした。