問い

 律令国家の基本法である令のうち、調・庸・歳役(さいえき)などの基本税目についての規定を扱うものは賦役令(ぶやくりょう)でした。その条文に「斐陀国」(飛騨国)は調と庸を免除するという規定があります。なぜ免除されていたのでしょうか?

答え

 日本の賦役令は39条で構成されており、39条目が斐陀国の規定です(斐陀国はのちに飛騨国と書くことになります)。条文の内容は「斐陀国は、調と庸を免除する。ただし、里(50戸で1里を構成、行政の最末端の機関)ごとに匠丁(たくみよぼろ)を10人選びなさい。任期は1年。里の他の丁からは米を集めて、匠丁の食料としなさい。」というものでした。
 「丁」は租税を負担する男子を指します。飛騨国は現在の岐阜県北部にあたり、都に比較的近い山国であったため、木工の供給地とされたのでしょう。彼らの技術等を用いる代わりに調・庸が免除されました。飛騨国の匠丁の徴発がいつから行なわれていたのかは明らかではありません。ただし、飛騨国の木工をさす「飛騨工(ひだのたくみ)」は、平安時代に成立した『今昔物語集』に伝説上の工匠として登場する話があるなど、後世に残る言葉となっています。
 ちなみに、8世紀初頭に成立した日本の律令は、全体的に唐のものを参考にしていますが、日本の実情を勘案して、改変を加えた部分がありました。特に徴税に関する賦役令は、実際の機能を重視して改変を加えており、日本独自の内容を窺うことができます。