NETWORK租税史料
 今回は、勝正憲『税の話』【写真1】をご紹介します。これは、昭和時代の戦前から戦後にかけて出版された税の参考書です。誰にでも読みやすいように、本文中にふりがなを付けるなどの配慮がされています【写真2】。
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【写真1】
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 昭和4(1929)年、『税の話』の初版が刊行されました。その後、昭和13(1938)年に『新税の話』、昭和15(1940)年に『税』というタイトルになり、昭和26(1951)年まで出版されていました。この間、大きな税制改正が何度もあり、その度に内容を修正していました。
 作者は、勝正憲(1879-1957)です。明治40(1907)年から大正15(1926)年にかけて、松江・長崎・鹿児島・長野・仙台・東京の税務監督局長を務めた人物でした。東京税務監督局長を退職した後に、『税の話』を執筆しました。その後、『所得税の話』や『相続税の話』、『営業収益税の話』、『企業と租税』、『印紙税の話』といった参考書も出版しています。
 『税の話』の初版(1929年版)を中心に見ていきましょう。本書は「税金のゆくえ」と「日本の租税」の2部構成となっており、当時の税制や税務行政を解説しています。
 前半の「税金のゆくえ」は、(1)我等の費用は我等の負担、(2)租税はどんなものか、(3)租税の歴史、(4)租税の定め方選び方、(5)租税の組み立て方、(6)租税の見方・分け方、(7)租税の言葉、(8)税務の機関、(9)滞納処分と犯則処分、(10)税金のゆくえ、と続いています。具体的には、租税の存在理由から始まり、租税の本質と発展を論じ、租税の原則や体系、分類、術語などを説明しています。
 後半の「日本の租税」は、国税と地方税に関する解説です。国税としては、所得税や地租、営業収益税、資本利子税、相続税などを解説しており、地方税はその後に続きます。
 さて、勝正憲は「租税は会費である」と唱えていた人物でした。「(1)我等の費用は我等の負担」では、我々が一つの会を組織し、その会を維持するために費用が要るとすれば、その費用は結局、会員各自が持ち寄るほかない。国家も一つの大きな会で、国民もその会員とすれば、租税はその会費に当てはまると説明しています【写真2】。
 「(5)租税の組み立て方」では、当時の租税体系を解説しています。当時の租税は、収入(地租や営業収益税、資本利子税など)または所得(所得税)、流通(相続税や印紙税、登録税など)、消費(酒税や清涼飲料税、織物消費税など)の「三方面」があり、国や府県、市町村の「三段」があると図解しています【写真3】。
 「(8)税務の機関」では、具体的に「税金のゆくえ」を説明しています。「税務機関一覧」【写真4】は、大蔵省が税務監督局や税関を、税務監督局が税務署を監督する関係が図で示されています。それに加えて、税額の決定と税金の納付も示しています。
 内国税の場合、基本的に税務署が税額を決定し、徴収していました。ただし、第三種所得税(個人)や地租、営業収益税(個人)、資本利子税(乙種)などは、税務署が税額を決定し、市町村が徴収の「取次」をしたと説明しています。
 税金の納付については、税務署が現金収納を行うことは稀でした。その代わりに、日本銀行やその代理店、郵便局が扱っていました。さらに、郵便局に納めた税金も、最終的に日本銀行に納まることを図示しています。
 『税』(昭和15年版)の序文には、『税の話』の執筆理由が記されています。
 当時、税に関して、税務官吏の参考書は数多くあったが、納税者の参考書は全くなかった。そこで、役人を辞めた時には、一つ納税者の側に立った税の参考書を書き、税の知識を国民の間に普及させたかった。大正15(1926)年に税界を退き、昭和4(1929)年の春に『税の話』を書いて、長年の望みに達したとあります。
 『税の話』は、昭和時代における税の参考書として、税の学習に役立てられました。

(2026年7月 研究調査員 吉川紗里矢)