NETWORK租税史料

 平成元(1989)年4月、消費税の創設に伴っていくつかの税金が廃止されました。その中の一つが物品税です。物品税は日中戦争中の昭和12(1937)年に北支事件特別税の一部として創設され、自動車からコーヒーなどの飲料まで様々なものに課税されていました。
 今回ご紹介する史料は、そのような物品税の解説展の様子を記録したアルバムです(写真1)。
 この史料の解説展は、昭和25(1950)年に東京国税局と納税通信社が主催し、「一目でわかる 税と商品の解説展」として開催されました。また、この解説展は当時行われていた「物品税正しい納税運動」の一環として開催され、課税物品の紹介や納税川柳、懸賞付き税率当てクイズなどの催し物が行われました。展示品の一部は即売所で購入することもできたようです。
 アルバム内の写真を見てみますと、解説展では物品税が課税されていた各種の商品が種類ごとに陳列され、壁には税率も表示されていたことが確認できます。
 例えば、(写真2)ではカメラや蓄音機といった機器類が並べられていますが、(写真3)ではコーヒーの缶やジュースが陳列されています。このほか、(写真4)では化粧品類と楽器類が展示されています。これらの展示品を見ただけでも物品税が多種多様なものに課税されていたことが分かります。
 また、この解説展ではラジオやカメラなど当時としては高価な品々が展示され、人々の注目を集めていました。この頃の日本は、戦後の生活からようやく抜け出した時期であり、展示されていた品々にも徐々に人々の手が届くようになっていきました。
物品税の税収内訳は、その後の経済成長に伴って、少額の消費財に係る税収から家電や乗り物などの大型消費財に係る税収へと比重が変わっていきました。昭和50年代以降は、物品税の税収の半分以上を乗用車、カラーテレビ及びクーラーのいわゆる「3C」に係る税収が占め、特に乗用車に係る税収は第1位の座を不動のものとしていました。
 「一目でわかる 税と商品の解説展」では、物品税が課税されていた商品約2000点が展示され、5日間の期間中に延べ5万5千人が来場しました。
 同様の展示会は、他の国税局でも開催されていたようで、昭和27(1952)年に札幌国税局が行った「優良商品と物品税の展示会」という展示会のアルバムも当室で所蔵しています。
 この解説展の写真は現在展示中の特別展示「暮らしの変化と税」でも展示しておりますので、ご興味のある方は是非ご覧ください。(展示期間は令和2年9月29日まで)

研究調査員 菅沼 明弘