今回ご紹介するのは昭和30年代に製造された地雷探知機(金属探知機)です。この探知機は地中に埋められた金属を探知すると、信号音で知らせてくれる機械で、一般的に地雷除去や地中の水道管、貴金属などを探す時に使用されていました。あまり税務署と縁が無いように見える地雷探知機ですが、かつては酒税行政の現場で使用されていました。
 租税史料室には現在2セットが所蔵されており、一つの箱には英語で「Mine Detector Type No.3」、もう一つの箱には日本語で「凶器探知器」と書いてありました。箱は違いますが、中身は同型のものが入っています。
 Mine Detector(地雷探知機)と書いてあるため、元々は自衛隊や米軍などで地雷探知機として用いるために作られたと考えられます。表記は全て英語ですが「Made in Japan」と刻印されており、日本製のようです。
 (写真1)は探知機一式の写真です。この長い棒の先についているサーチコイルという円形の部品に電気が流れ、金属を探すための磁場を発生させます。この磁場の変化によって金属を探知する仕組みになっています。
 (写真2)、(写真3)が箱に格納された状態の写真です。重いオリーブドラブ色の木箱に、部品ごとに分解されて収められています。箱の中には探知機本体、コントローラー、電池や回路が入った発振器、信号を聞くためのヘッドホンなどが収められていました。使用する際には発振器を背負い、本体を両手で持って作業しました。
 地雷探知機は地中の金属を探すことができるため、地中に埋められた密造酒を探すのに用いられました。密造酒が入れられたドラム缶やビンの留め金などの金属に反応すると期待されたのです。
 探知機の使用実績としては、昭和30年代に四国と東北でそれぞれ密造酒の摘発の際に使用された記事が残っています。記事によると地中に埋められたドラム缶や製造器具などを発見し、期待通りの活躍をみせたようです。この探知機を使用した捜索は画期的だったようで、記事には「威力をみせた電波探知機」と見出しがつけられていました。探知機が登場する前は何十人もの人が棒で地面を突き、手応えで探していました。
 密造酒を巡る酒税行政の問題は明治時代から続いていましたが、第二次世界大戦後に大きく変化していました。それまで自家用飲酒を主な目的として作られていた密造酒は戦後、闇市などでの販売を目的として集団で大規模に製造されるようになり、大きな社会問題となっていました。
 この問題は酒税法に違反するだけでなく、工業用アルコールを使用した酒などによって発生する健康被害も深刻でした。また食糧難だった当時において、酒密造は主食である米穀を大量に消費するため、食糧事情の悪化にも繋がりました。
 そのような社会背景の中で、税務署や様々な団体による酒密造の防止運動と密造酒の取締が行われました。元々は軍用として作られたこの地雷探知機も、そうした需要によって税務署にやってきたようです。
 地雷探知機は現在租税史料室の一階に展示されており、実物をご覧いただくことができます。

(研究調査員 菅沼明弘)