租税史料室には、岩手県及び宮城県が作成した検地帳目録、地図目録及び明治前期の土地台帳の目録があります。これらは、かつて仙台税務監督局(仙台国税局の前身)が所蔵していたものです。
 検地帳とは、江戸時代に作成された土地台帳であり、土地の種類、面積及び土地の耕作者が記載されており、当時の藩主等は、これを基に年貢を課し、あるいは諸役を課していました。また、検地帳は、村内においては村の百姓が自身の耕作地を主張する根拠ともなっていました。
 仙台税務監督局が所蔵していたこれら検地帳等のうち、明治24年(1891年)に岩手県徴税費課文書係が作成した「検地帳目録」(写真1)は、郡単位でまとめられており、郡内に所在する村名までは確認できませんが、宮城県が作成した検地帳目録には村名まで記載されています。
 このほか、明治24年には岩手県徴税費課文書係によって「地図目録」(旧南部藩領内・写真2)が作成されており(これもかつては仙台税務監督局が所蔵)、その冒頭には元禄地図(いわゆる元禄の国絵図と言われるもので、江戸幕府が諸大名に命じて作成させた国ごとの地図)の目録があります。この元禄地図のうち「切絵図」と言われるもの14枚を除くほとんどを租税史料室で所蔵しています。そして、租税史料室では南部藩の天保の国絵図を14枚所蔵していますが、上記「切絵図」とはこの絵図を指すものと考えられます。「地図目録」では、この元禄地図の後に旧村絵図、旧地割絵図、雑絵図、山野絵図の目録が続いています。
 このような目録に記載されていた検地帳や地図などの古文書は、全国の各道府県が明治初期の地租改正時に収集したもので、その後地租改正関係の文書などとともに府県の収税部などを経て税務管理局・税務監督局・財務局・国税局へ受け継がれたものとされており、上記仙台税務監督局のほか、名古屋税務監督局、広島税務監督局でもこのような古文書を所蔵していたことが確認されています。
 明治時代において、国税の組織や地方自治体では、これらの古文書を利用して歴史を編纂する動きが見られます。例えば大蔵省が明治15年(1882年)〜明治18年(1885年)にかけて刊行した「大日本租税志」は、大蔵省が旧来の租税制度の沿革を知る目的で作成し、上古から治承(1177〜1181年)まで、養和(1181〜1182年)から慶応(1865〜1868年)まで、明治元年(1868年)から同13年(1880年)までの3期に分かれており、その編纂には様々な古文書が活用されました。また、宮城県では、明治20年(1887年)に宮城県知事松平正直の命を受けて宮城県収税長山田揆一の手によって「仙台藩租税要略」(写真3)が編纂されました。これには、編纂に当たって参照した仙台藩に関する江戸時代の古文書のリストが付されています。
 このように、江戸時代の古文書の情報は、税務の参考として明治時代以降も活用されていました。

(研究調査員 堀亮一)