NETWORK租税史料 税務情報センター(租税史料室) オール税金いろはかるた

いろはかるたの箱
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いろはかるたの札
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 「印紙税 受け取り出すたび 顔を出す」
 これは、昭和60年(1985)11月、群馬県の前橋税務署が作成した『オール税金いろはかるた』の冒頭「い」の読み札である。この『オール税金いろはかるた』は、当時の前橋税務署長(神津典男氏)の発案によって作成されたもので、群馬県税務課・群馬県地方課・前橋市税務関係3課が協賛して、国税のみならず、県税・市町村税も盛り込んで作られている。
 群馬県は、太平洋戦争後、都道府県単位で作成された最初の郷土かるた「上毛かるた」で知られており、その「上毛かるた」は独自の競技大会を行うほど親しまれている。
 このような背景があるので、群馬県人にとっては、カルタが身近な存在であり、当地において税をPRする格好の素材とされたのであろう。
   『オール税金いろはかるた』の付録である「かるたのしおり」に収録された編集後記には、次のような作成方針が書かれている。

  • 1 「正しい申告、早めの納税」式の精神論はやめて、各税目の解説に徹しよう。
  • 2そのためには地方税当局の御協力を得て、国税、地方税を通じた全税目を折り込むことにしよう。
  • 3かるたであるから、読み札は正確さを多少犠牲にしても語呂の良さを大切にし、不足分は解説で補うことにしよう。
  • 4「税を知る週間」に発表できるように努力しよう。

 以上のことを申し合わせて、「いろは四十八文字」に当時の税目55(国税26・県税13・市町村税16)を当てはめ、読み札を作成した経緯が書かれているが、苦労の連続であったという。特に「さ」の札である「三十万円を超えた車は 中古でもかかる 自動車取得税」や「ろ」の札である「六十万円 超える贈与に 贈与税」といった金額で文言が始まるものは、「多少の無理もあ」ったと記されている。
 読み札書きや取り札のイラスト描きは、税務署、県庁、市役所の職員が分担して行い、読み札の裏には、掲げた税目の解説が200字程度で書かれている。
 そのような苦労を重ね、昭和60年11月の「税を知る週間」に、作成方針にかなうカルタが解説を横に付けた冊子の形で発表された。翌年には、社団法人前橋法人会が読み札、取り札の一般的なカルタの形にして発行した。
 この後、平成元年の税制改正によって消費税が導入され、多くの税金が廃止されたことから、平成5年に前橋税務署が新しい『税金いろはかるた』を作成した。このカルタは税金の種類の紹介は少なく、税の使い道や納税道義の高揚を図るものが多いこと、小学生でもわかりやすい内容としたことが「しおり」に記されている。
   『オール税金いろはかるた』の評価は、昭和60年11月25日発行の『税のしるべ』(1752号)に掲載された神津署長の紹介記事が参考になる。そこには「評判は「大ウケ」とのこと」とあり、署長は「カルタ大会を開きたい」とコメントしている。
 意外と思われるかも知れないが、租税史料室が収集している租税に関する史料の中で、この『オール税金いろはかるた』がカルタ式のものとしては初めての史料である。体験型の租税教室史料としては、他に双六式のものがあり、「納税イロハ双六」(昭和16年)などを所蔵している。

(研究調査員 宮永廣美)