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- 論叢39号
佐藤 正男
要約
1 研究の目的
明治新政府は、税の中心を「年貢」から「地租」に変え、課税方法や負担者などが大きく変わり、地租は租税収入の大部分を占める重要な「税」であった。明治以降社会は大きく変化し、経済も驚異的な発展を遂げ、地価は大幅に上昇した。一方、土地にかかわる税は、地租が固定資産税として生まれ変わった。
明治から昭和前期までの土地にかかわる主な「税」について、制定の目的などを概観するとともに、課税標準となる土地評価の歴史について研究する。
2 研究の内容等
(1) 地租の導入
- イ 地租導入の経緯と地価
明治維新政府成立当時、財政は、逼迫していた。また、廃藩置県により、藩の壁がなくなった結果、地域によって年貢の負担割合が違うことが農民に知られたことなどから騒擾が各地で起きた。
このよう状態の中で、安定した財源を確保し、国力強化、国際的な地位の獲得、更に農民の不満を抑えるためなどの理由から租税制度改革を急ぎ、広く一般にも負担を求め、公平化、統一化を図れる財源として、土地ごとに地券を交付し受領者の土地の所有権を認めるとともに、土地の所有者には、地券に記載された地価に応じて、税として「地租」を課すこととした。
大蔵省は、地方官心得書を出し、土地評価の指針を示した。
耕地(田畑)は、「地価={収穫高−種肥料−公課−村入費}÷利分」で評価した。
一方、宅地は、原則として落札価格や払下価格を地券面に記載し、いわゆる沽券地の場合は、本人から申告させ、申告額が低過ぎる場合には、一般に入札させ土地を他に渡すと牽制した。
地券は、所有権を表すものとして利用されていたが明治19年に登記法が制定され、権利関係を登記することとしたので重要性が薄れた等の理由から、明治22年に土地台帳規則を制定し、地券制度を廃止した。
- ロ 宅地賃貸価格の導入
明治7年の太政官布告で地価の見直しは、5年ごとに行うこととしていたが、明治13年に「5年間延期」するとし、更に5年後の明治17年には地租改正条例を廃止し、地価修正は行わないこととした。
明治43年に宅地地価修正法を制定し、宅地の評価を賃貸価格に基づいて行うこととした。
- ハ 土地賃貸価格の導入
地租導入以後、耕地の地価は、特に問題がある一部の地域について修正したのみで、殆どの地域は手付かずであった。50年も経つと、経済の発展、交通機関の発達による都市への人口集中など、農業中心社会から、商工業中心の社会へと変化し、農地の宅地化、市街地化が進むなど土地の利用状況が大きく変化した結果、税負担の公平性、合理性を維持することは困難な状況となっていた。
そこで、大正15年に税制全般にわたる改革を行い、地価については、土地の賃貸が比較的多く行われ、調査が容易であるなどの理由から地租の課税標準をすべて賃貸価格に基づいて算定することにした。
- ニ 地租の地方自治体への委譲
昭和15年の税制改正で地租、家屋税及び営業税は国が徴収し、その全部を分与税として地方に還付した。昭和22年3月に地租は府県税として地方に委譲され、更に昭和25年の税制整理で家屋税などを統合し固定資産税となった。
(2) 相続税法創設と土地評価
日露戦争の戦費調達策として、明治38年に相続税が創設された。
原案では、土地の評価額を「賃貸価格ノ20倍」を乗じて算出することとなっていたが、時価と比べると高過ぎる等の意見が出され、「時価」に修正された。
明治42年の主税局通牒をみると、当時から詳細な土地の評価基準が作成されていたことがうかがえ、また、大正14年12月に出された相続税事務規定の様式編からは、その当時から路線価方式の考え方があったことが推測される。
昭和25年の相続税法改正により、土地評価は、「取得した時における時価により」評価し、課税時期における「客観的に想定される交換価値」としている。実際には、賃貸価格倍数方式あるいは固定資産税基準額を基礎とする倍率方式で評価していた。しかし、区画整理や戦後の復興で町並みが大きく変化しており、類似地区を比較しようとすると対象を細分化せざるを得ず、賃貸価格倍数方式は使えず、一方の固定資産税評価額は、地方の財政状況によって評価に差があり、土地の評価基準としては使えない。そこで、路線ごとに土地を評価する路線価方式が導入された。
3 まとめ
地租導入以来、幾多の歴史的出来事があったが、地租の課税標準となる地価評価方法は、明治43年の宅地賃貸価格導入及び昭和6年の土地賃貸価格導入まで修正はなかった。また、税率は日清、日露戦争の戦費調達のため一時期引き上げた以外はほとんど変わっていない。
一方、第二次世界大戦後は、財産税、富裕税の導入により地価評価の重要性が増すとともに、評価方法が複雑化したので昭和30年に路線価方式を導入し整備した。
税制面においては、地価高騰に伴い地価抑制を目的として譲渡所得の分離課税、土地譲渡益にかかる重課税制度及び地価税などが導入され、一方では、住宅取得促進を目的に住宅取得にかかる減税制度が導入されるなど、土地にかかる「税」に対する考え方に大きな変化が見られる。
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