西野 敞雄

前研究部長


はじめに

 わが国は所得税を、先進国の中でも早期に導入したが、その理由の一つとして、北海道物産税の減税が広くあげられている。しかし、全国的視野から眺めると、北海道物産税の比重はそれほど高くない。
一方、北海道物産税は、北海道の物産に対し賦課され、他藩の正租に等しく、松前藩時代の運上金に源を発し、かつ古い色彩を数多く残している税である。北海道物産税が所得税創設を含む一連の税制改正の中で北海道水産税となったわけであるが、それでも昔の色彩を多く残している。この北海道水産税も、日清・日露戦争という税制変動期に地方税へとかわる。むしろ、その収入は北海道の開拓に使われていたのであり、本来の姿に戻ったともいいうる。こうした流れを通してみると、日本で租税国家がどのようにして建設され、また、租税法律主義が浸透していったかを研究することもできよう。
おりもよく、税務大学校租税資料室には、「北海道水産税」と題する綴り(以下、「税則資料」という。)など、明治期の関係資料が多数収集されてきた。そこで、松前藩時代から北海道水産税が地方税に移管されるまで、税が、いかに変化し、どのように運営されていったか、租税法律主義がどのように浸透されてきたか等を、北海道水産税を通して眺めることにした。
この論稿は、札幌国税局藤枝茂氏、北海道立文書館佐藤京子課長、鈴江英一係長および遠藤龍彦主任、税務大学校札幌研修所の方々、研究部高橋・毛利両教育官及び井上一郎研究調査員の大きな協力を得た。ここに記し、感謝の意を表したい。あわせて、「税則資料」を提供された堀彦久氏に感謝の意を表する。

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