井上 一郎

租税資料室
研究調査員


はじめに

 昭和20年(1945)年の税法改正については、本誌18・19号の2号にわたって掲載しておいた。昭和20年は再度述べるようであるが、同年8月4日までは、太平洋戦争という国家目的を支える戦時税制の構築にあった。特に6月の段階における戦時緊急措置立法は、租税制度の究極的な様相を呈したものとみてよい。そして同年8月15日以降同年の暮までは、敗戦による旧体制の解体が、占領軍の占領政策によって着手された時期であった。税制のうえにも若干の変化がみられたことは前号で指摘しておいた。なかでも注目しておいてよいものに、占領政策における戦時利得の没収政策の展開であった。これについてもまた、第18号で若干の資料を呈示しておいた。
ともかく、敗戦後同年暮までの間においては大きな税制改革はなく、戦時立法の廃止にともなう若干の法令の廃止があげれられ、また戦前・戦時中わが国民の精神生活の拠り処であった神社、寺院、教会等に対し、占領政策の展開があり、昭和20年中においては、神社を除き、寺院、教会が宗教法人へと衣替えし、非収益事業非課税の原則が適用されることとなり、また、新たに労働組合においても非収益事業非課税の原則が適用されることとなった。
昭和20年の後半は、大きな改正はなかったものの、視点を変えれば重要な改正を、将来においてありうることを示唆した年であったともいえる。
以下、昭和21年の税制改正について、月をおいながら、みていきたい。

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