井上 喜好

税務大学校
研究部主任教授


はじめに

 昭和61年8月9日の全国新聞紙朝刊の社会面は、従業員による香港旅行で会社が負担した2万円を給与に加算した税務署の処理が京都地裁の判決で「不相当」とされたことを派手に報じた。その後、税の月刊専門誌上でいくつかの判例評釈が行われた。
昭和62年2月、租税判例研究会の発表者に指名された機会に判決文を改めて読み返してみて、従業員に対する経済的利益の供与は何を条件に課税され又は非課税となるのか、福利厚生費とは何かと改めて問い直されたことの他に、従来あまり議論されていなかった棚卸資産の評価方法について、本判決は決定的な影響を及ぼすものであること、むしろ後者の方が、我々税務の執行に携わっている者にとっては、影響が大きいのではないかと感じた。
そこで、双方が控訴中の事案であるが、判例研究会において発表した要旨及び月刊「税理」に掲載したが紙面の都合上極く要旨のみに留まった判例研究を基に部内用に多少論旨を明確にしたところで評釈を行うこととする。
なお、本稿は税大論叢第18号のために執筆したものであるが編集の都合により次号送りとなったため、評釈としては時期が遅くなり、この間控訴審判決も出たので、補足として控訴審判決にも論及したものである。

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