上村 和紀
税務大学校
研究部教授
DeFiとは明確な定義はないが、一般的には分散台帳技術(ブロックチェーン技術)に基づき、暗号資産取引所等の仲介を必要としないで、金融サービスや商品を提供するものとされ、具体的にはDEX(暗号資産同士の取引する取引所の機能をスマートコントラクトにより自律的に提供される金融サービス分散型取引所)やレンディングプラットフォーム(スマートコントラクトにより自律的に提供される金融サービスで、貸し手と借り手を結び付け、仲介する仕組み)を通して暗号資産の取引を行うものなどがある。
そこで、DeFiの個々のコンピュータープログラムがどのような取引を行っているかを確認し、DeFiによるサービスのうち、代表的なものの取引の詳細を検討し、各取引を税務上いかに評価すべきかについて研究を進めることとする。
(1)DeFiの定義について
DeFiとは、例えば、国内においては、「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会(座長、神田秀樹 学習院大学大学院法務研究科教授)」の中で、「いわゆるDecentralized Finance、DeFiにつきましては、明確な定義はございませんが、一般的には、分散台帳技術に基づき、仲介者を必要としないことを目的とした金融サービスや商品を提供するものという形で説明」されている。
(2)DeFiの特徴について
ユーザー自身がウォレットでトークン等を管理するため、例えば、取引所機能そのものを第三者にハッキングされることはないといわれ、基本的にはパーミッションレス型という特徴から、誰でも取引に参加することが可能である。なお、パーミッションレス型とは、管理者の許可を必要としない、または管理者が存在しないため、誰でも自由にネットワークにアクセスして取引ができるブロックチェーン環境のことである。また、海外においては、FSB(金融安定理事会の略称で、2009年に設立され、主要25の国・地域の中央銀行の代表が参加し、金融システムの脆弱性への対応等について、協調の促進活動等を行う組織。)の報告等によって、DeFiに関して仲介者が不在のシステムであることやスマートコントラクトが使用されること等について言及がなされている。
DeFiにおいては、従来の金融機関や暗号資産取引所など中央集権的な組織による仲介を必要としないが、DEXやレンディングプラットフォームで行われる暗号資産の取引が税務上どのように取り扱われるのかは必ずしも明らかではない。
DeFiはパブリックブロックチェーン上に構築された新しい金融システムをいう。DeFiでは、スマートコントラクトによって自律的にト−クン移転が自動執行されるといった特徴を持ち、スマートコントラクトにより実現される新たな金融サービスである。
なお、日本における暗号資産市場は大幅に成長し、2022年6月までの年間取引額は567億ドルに上り、この取引額は韓国の約2倍、さらに中国の676億ドルに迫るものといわれている。金融庁ではデジタル・分散金融へのあり方等に関する研究会を設置し、イノベーションと規則の観点からDeFiに注目し、研究が進められている。
(3)既存の金融機関とDeFiの差異
既存の金融機関との比較において、例えば、銀行等の送金や借入銀行等の、金融商品の購入といったサービスにおいては証券会社等の中央集権的な仕組みを有する金融機関等を介してこれを行うこととなるが、例えば銀行が利用者に対して融資を行う際、銀行は利用者の返済能力や信用性等を調査し、与信の可否を検討する。そのため、融資を受ける際の審査では、金融機関の残高証明書等の発行や個人所得税額や住民税額の証明書を取り寄せ、また、担保とされる資産が例えば土地建物であれば抵当権の状況等を書面で求めるのが通常であると考えられ、融資稟議書類が審査を通るかどうかについて、この銀行内における審査内容が利用者に対して公開されることはないため、銀行内における審査の検討状況については不明である。
(4)FSB報告書(2022)に指摘される既存の金融機関とDeFiの差異
既存の金融機関におけるサービスには、当該サービスの提供者・受領者双方に信頼があることが前提として提供されているが、他方でこのような伝統的な金融機関とDeFiを区分する特徴として、FSB報告書(2022)においては、以下のような点が指摘されている。
@ 公開性 ブロックチェーン技術による記録の共有
A トラストレス DeFiでは自動化された取引を行うことが可能で、DeFiプラットフォーム上のスマートコントラクトを通じた余剰担保や必要証拠金の自動的な執行は、ユーザーの身元確認や借り手の信用リスク評価の代替となる。
B パーミッションレス DeFiの利用にあたり、要件を充足することができれば、誰でもDeFiを利用することができる。
また、現在の金融規制は、このような、既存の金融機関がその提供するサービスのすべてのレイヤーにおいて責任を有し、運営及び管理をするという前提で、当該金融機関を規制の名宛人とすることによって構築されている。ところが、DeFiにおいては、特定の運営者が不在で、金融サービスが分散化された主体に担われており、匿名性も高いことから、規制の対象や責任主体の特定が困難であるという状況にあること、インターネット上でアプリケーションによって運用されグローバルな性質を持つため、規制が不十分な国があればそこが抜け穴となること、加えて、規制で禁止しようとしても自律的に稼働し停止不能であるうえ、改ざん耐性が高く不正があっても後から修正するという方法をとることが困難であること等のから、既存の規制手法では十分な実効性が発揮されにくいとの指摘もなされている。
今後、日本におけるDeFiに対する規制は、金融規制を所管する金融庁における議論の後、立法化あるいは既存の規制をもって解釈適用を図っていくことが見込まれる。
(5)資金決済に関する法律上の「暗号資産」の定義
法人税法61条における「暗号資産」の定義については、資金決済に関する法律の「暗号資産」同法2条14項(定義)の規定によることとされ、同法では次のように規定されている。
@物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨、通貨建資産並びに電子決済手段(通貨建資産を除く。)を除く。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
A不特定の者を相手方として、@に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの。
(6)法人所得の意義及び別段の定め
我が国の法人税法においては、内国法人に対しては各事業年度の「所得」について、各事業年度に対しては、法人税を課すと規定している(法人税法5条)が、その「所得」に係る定義は置かれておらず、内国法人に対して課する各事業年度の所得に対する法人税の課税標準は、各事業年度の所得の金額であるとされている(法人税法21条)。
法人の所得というのは、基本的には法人の利益と同義であって、法人の事業活動の成果である利益を意味する。我が国の企業会計では、法人の利益は、差額概念、すなわち一定期間の間における収益からそれを得るのに必要な費用を控除する方法で計算されることを示唆しており、法人税法22条1項は、それを前提として、法人の各事業年度の所得の金額は、益金の額からの損金の額を控除した金額としている。
益金の額について、法人税法22条2項は、「内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする」と規定されている。このことから、法人税法における所得は、別段の定めがあるものは除き、およそ包括的であることが明白である。
法人税法も、所得税法と同様に原則として実現した利益のみが所得であるという考え方を採用し未実現の利得を課税の対象から除外していることを意味する。しかし、実現した利益は原則としてすべて益金に含まれるというのがこの規定の趣旨でありその意味で法人税法においても所得概念は包括的に構成されていると解するべきである。すなわち、別段の定めがあるものは除くが、資本等取引以外の取引にかかるその収益の額は、一切益金の額に算入されるということである。
次に、損金の額について法人税法22条3項は、「内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる額とする」と規定し、@当該事業年度の収益にかかる売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額、A@に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く)の額、および、B当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引にかかるものの3つを掲げている。基本的には、収益費用対応の原則に基づいて計上すべきものとされている。税法上損金というのは、原則としてすべての費用と損失を含む広い観念として理解すべきである。費用として損金に計上を認められるためには、所得税法の場合と同様に、必要性の要件を満たせば十分であって、通常性の要件をみたす必要はないと解される。したがって、不法ないし違法な支出も、それが利益を得るために直接に必要なものである限り費用として認められる。ただし、架空の経費を計上して所得を秘匿するために要した支出は、所得を生み出すための支出ではないから、費用にはあたらないと解すべきである。
なお、未実現の損失、すなわち所有資産の価値の減少は原則として損金には含まれない。
また、各事業年度の所得を算出するに当たって、益金の意義については法人税法22条2項に規定のとおり、原則として実現した利益のみが所得であるという考え方を採用し、未実現の利得を課税の対象から除外している。
そして、損金の意義については法人税法22条3項に規定されているとおり、売上原価、販売費、一般管理費等として原則、すべての費用と損失を含む広い観念として理解すべきであることや未実現の損失、すなわち所有資産の価値の減少は原則として損金には含まれないこととしているが、いずれの条文においても「別段の定め」があるものを除くこととして、例外規定を設けているのである。
法人税法は、一般に実現主義や権利確定基準を採用していると考えられるが、「別段の定めがあるもの」として、重要な例外規定がいくつかあり、その一つに、短期売買商品等の時価評価金額(短期的な価格の変動を利用して利益を得る目的で取得した資産(暗号資産を含む))についても、時価評価益または評価損が、益金または損金に算入されることが規定された(同法61条2項、同法施行令118条の7)。
一方で、国税不服審判所(昭和56年12月22日裁決)において、次のような判断がなされているのである。法人が財産の評価替えをしたことによって生じた評価益は、未実現利益であるから当該財産が現実に売却されるまでは、益金の額に算入すべきでないと請求人は主張したが、別段の定めに規定された時価評価損益について、このような評価がどの程度を課税の対象外とするのかは立法政策上の問題であるため、現行法の適用(別段の定め)において、当該評価替えによる益金については、当該事業年度の益金の額に算入することは適法とされているので、請求人の主張は採用することができないとして、請求人の主張を排斥している。
このような国税不服審判所の判断は、未実現の利益が発生しているとしても、別段の定めが規定されている以上、原則論に固執することなく別段の定めが優先されることを示しているといえる。
(7)DeFiの代表的な取引と「貸付」「寄託」「交換」の意義と判断
DeFiの利用方法は多種多様であることから、代表的な取引事例(本稿ではユニスワップ及びコンパウンド)を示したうえで、その取引が「貸付」「寄託」「交換」のいずれに該当するのかを検討する。
イ ユニスワップの基本的な仕組み
ユニスワップはスマートコントラクトを中心とした分散型の暗号資産取引所であり、管理運営者や仲介者が不在であっても、トークンの交換を実現できる点に特徴がある。ユニスワップにおいては、主として流動性供給者とトレーダーがトークンの交換取引に関与する。まず、2種類のトークンを保有する者によって流動性の供給が行われる。流動性の供給とは、2種類のトークンを保有する者らがユニスワップのスマートコントラクトに対してその2つのトークンについて同じ価値分の数量を流動性として供給し、不特定のトレーダーが交換可能な状態にすることを意味する。
このように、流動性の供給を行う者は流動性供給者と呼ばれている。その主な仕組みは次の通りであり、いずれのトークンの移動もあらかじめ設計されたスマートコントラクトに基づいて行われる。
(イ) 流動性供給者の提供方法
ユニスワップの特徴は誰でも流動性供給者となることができ、流動性供給者は暗号資産のプールに、自らのトークンのペアを提供する(例えば、EthereumとDAIのペアで構成されるプールであれば、流動性供給者は、自らが保有するEthereumとDAIを供給する)。流動性供給者は、自らのトークンのペアの提供と引き換えに、提供したトークンのペアの量がプール全体に占める割合に応じてプールトークン(LPトークン)と呼ばれるトークンを得る。
(ロ) 利用者(ユーザー)の利用方法
こうしてプールされたトークンのペアに対してユーザー、すなわち自らのトークンの交換を望む者はいつでも、自身のトークンをプールに提供し、プールにリザーブされたもう一方のトークンと交換することができる。
(ハ) 流動性供給者の報酬受領
流動性提供者は自らのプールトークンを消滅させることにより、いつでもプールから消滅させたプールトークンが表していたプール全体に占める割合分のトークンのペアを取り出すことができる。このとき、プール全体のトークンの数量は流動性提供時より増えているから、流動性提供者は自らが提供した分より多くのトークンを取り出すことができ、これが流動性提供に対する報酬としての位置づけとなる。全体としてみると、ユーザーが支払った取引手数料が流動性提供者に分配されていることになる。
ロ コンパウンドの基本的な仕組み(DeFiの代表的な例A)
コンパウンドとはレンディングプラットフォーム(貸し手と借り手を結びつけ仲介する仕組み)に分類されるDeFiである。レンディングは利用者から暗号資産を預かり、これを貸し出す機能をスマートコントラクトにより自律的に提供するサービスである。
代表的サービスであるコンパウンドでは、貸し手は暗号資産を流動性プールに担保として差し入れ、これと引き換えに預かり証の役割を果たす「cToken」を受領する。貸し手はいつでも「cToken」を戻して、預け入れた暗号資産に利息を加えた額を回収できる。「cToken」の保有者は借り手になることができ、この場合「cToken」を担保として預け入れ暗号資産を流動性プールから借り入れる。借り手は任意のタイミングで借入額に利息を加えた金額を流動性プールに対して返済できる。
利息や手数料は、流動性プールでの暗号資産の需給を基にリアルタイムで自動計算される。未収利息の増加や流動性プールに差し入れた担保の価格の下落などにより、利用者の借入額が借入限度額を超過した場合、追加的な担保差し入れがないと差し入れ済みの担保は市場価格から一定割合を割り引いた価格で清算されることになる。
「cToken」は、暗号資産取引所において不特定多数の者との間で、他の暗号資産との交換が可能である。
(1)「貸付」の意義と判断について
「貸付」の意義については、「我妻・有泉コンメンタール民法―総則・物件・債権―」によると、@金品や権利を貸与すること、A期限や利子、料金などを定めて金品を貸すこと、B返してもらう約束で、あるものを他人に交付し、または、その物の使用や収益を許容することである。
ところで、自らのトークンのペアを提供した引き換えに「LPトークン」や「cToken」を得るのであれば、期限や利子などを定めることなく、いつでも返すことができる性格のものであり、あらかじめ手数料等が定められていたとしても、スマートコントラクト機能によって流動性プールから自律的に支払いを受けるものであって、流動性供給者は多人数に及ぶため貸付として相手方(利用者)から直接的に利子を得たとみることは困難であろう。
したがって、本件代表的な取引を貸付と判断することはできない。
(2)「寄託」の意義と判断について
「寄託」の意義について、寄託契約とは、当事者の一方が物の保管を相手方に委託し、相手方がこれを承諾する契約である(民法657条)。例えば、Aが所有する物品の保管を委託し、Bがこれを承諾する契約が寄託契約に当たるとされている。
なお、受寄者は原則として、預かった寄託物と同一のものを返還する必要があるが、例外的に「混合寄託」(民法665条の2)と「消費寄託」(民法666条)が認められている。寄託契約該当性について検討すると、例えば「混合寄託」では、暗号資産を預けた後も暗号資産の物権的権利が利用者(流動性供給者)に帰属する、いわば混合寄託類似の契約と解する余地があるが、利用者から預かった暗号資産そのものかどうかが区別されないのが通常と思われ、また、利用者もそのような区別を求めていないと思われる、このような通常のケースを想定すると混合寄託類似の契約と解する余地は乏しい。
また、裁判例においては、民法657条によると寄託契約の対象は物であるが、暗号資産は所有権の客体とはならないから、寄託物の所有権を前提とする寄託契約の成立も認められないと判示したものがある(東京地判平成27・8・5)。このことも考え合わせると、寄託契約とは解しがたいと考えられ消費寄託の該当性も否定されることとなる。
ところで本件取引は、自らのトークンペアを提供した引き換えに「LPトークン」や「cToken」を得たにすぎず、期限や利子などを定めることなくいつでも返すことができる性格のものであり、あらかじめ手数料等が定められていたとしても、スマートコントラクトを用いて運営され、流動性プールから自律的に支払いを受けるものであって、また、流動性提供者は保管を依頼しておらず、寄託契約として相手方と契約が成立したとみることは困難ではないか。
したがって、本件代表的な取引を寄託と判断することはできない。
(3)「交換」の意義と判断について
「交換」の意義について、交換は当事者が互いに金銭の所有権以外の財産権を移転することを約束する契約である(民法586条1項)。
本件代表的な取引においては、「LPトークン」が活発な市場において取引が行われている事実が認められるのであれば、提供した暗号資産の返還を待たずに活発な市場において交換することが可能になるため、財産権を移転しあうことを約束したとみるべきであろう。また、上記(2)のことから暗号資産が所有権の客体とはならないことは明らかであり、財産権の移転を約束する契約という交換の意義に合致するものと考えられる。
また、「cToken」と呼ばれる債権トークンについても、暗号資産取引所において不特定多数の者に対し、他の暗号資産との交換が可能であることから、活発な市場において交換することが可能になるため、財産権を移転しあうことを約したとみるべきであろう。
日本においてDeFiのサービスについて、会計上の取扱いは会計基準等において明らかされていない。DeFiのサービスは、相当多く存在し、サービスの性質も多岐に渡る。このため対象を明らかにすることなく「DeFiに関する会計上の取扱い」について網羅的に説明するのは困難であると言わざるを得ない。
DEX(分散型取引所)上のDeFi取引利用者は、保有する暗号資産と引換えに「LPトークン」を取得するが、取得した「LPトークン」を暗号資産とみるべきであるかどうかについては、現状の性質として、市場性があり第三者への売却が可能であること等を勘案すると「暗号資産」であると考えられる。本件において「LPトークン」の取得については、取引の性質が「貸付」や「寄託」とは考えにくく、「交換」に該当すると考えられるが、契約の成立がいつの時点であるのか等、従来の暗号資産等の交換取引とは異なるため、その会計処理については慎重な検討が必要となろう。
暗号資産を預けた者が、その預けた暗号資産に対する支配を完全に手放したわけではないとする議論もあり、「LPトークン」と預けた暗号資産は紐づいていて、「LPトークン」を返却することにより、預けた暗号資産の返却が可能であることから、流動性供給時に暗号資産を流動性プールに入れただけの段階では交換したとみるべきではないとの考え方も首肯できる。また、スマートコントラクトについては、契約の成立と実行が自動化され、いつの時点で契約したかということが捉えにくく、更にはそれ自体契約といえるのかということについても議論があるなど、今後、日本におけるDeFiに対する規制は、金融規制を所管する金融庁における議論の後、立法化、あるいは既存の規制をもって解釈適用を図っていくことが見込まれることから更なる研究が必要であろう。
項目 | ページ |
---|---|
はじめに | 19 |
第1章 DeFiの概要 | 21 |
第1節 DeFiの定義 | 21 |
1 DeFiとは何か | 21 |
2 DeFiの機能等 | 22 |
第2節 DeFiの特徴と種類 | 26 |
1 DeFiの特徴等 | 26 |
2 主要なDeFiの種類 | 27 |
第3節 既存の金融機関との比較 | 29 |
1 既存の金融機関との比較 | 29 |
2 既存の金融機関とDeFiの差異 | 29 |
3 小括 | 31 |
第2章 ブロックチェーンやスマートコントラクトと暗号資産との関係 | 32 |
第1節 ブロックチェーンとスマートコントラクト | 32 |
1 ブロックチェーンの特徴 | 33 |
2 スマートコントラクトとは | 34 |
第3節 暗号資産の定義 | 34 |
1 資金決済法上の「暗号資産」の定義 | 34 |
2 通貨建資産とは | 35 |
3 暗号資産の該当性 | 35 |
第4節 暗号資産の取扱実務 | 37 |
1 預託された暗号資産の実務上の管理 | 37 |
2 小括 | 39 |
第3章 法人税法上の取扱い | 40 |
第1節 法人所得の意義について | 40 |
1 法人所得の意義について | 40 |
2 別段の定めについて | 42 |
3 暗号資産の取扱いについて | 43 |
第2節 暗号資産の時価評価損益 | 44 |
1 暗号資産の時価評価に係る立法経緯 | 44 |
2 法人税法への適用 | 45 |
3 低価法の適用について | 45 |
第3節 法人税法上の問題点 | 47 |
1 法人税法上の取扱い | 47 |
2 法人税法上の問題点 | 48 |
第4節 DeFiの代表的な取引と「貸付」「寄託」「交換」の意義 | 48 |
1 ユニスワップの基本的な仕組み(DeFiの代表的な例@) | 49 |
2 コンパウンドの基本的な仕組み(DeFiの代表的な例A) | 50 |
3 「貸付」「寄託」「交換」の意義と判断 | 51 |
第5節 法人税法上の暗号資産の取扱い | 53 |
1 暗号資産の売却等を行った場合【個人・法人共通】 | 53 |
2 法人税の税務について【法人】 | 54 |
3 小括 | 60 |
第4章 諸外国における暗号資産や分散型金融に対する法人税 | 62 |
1 英国歳入関税庁(HMRC) | 62 |
2 米国 | 64 |
3 オランダ | 64 |
4 スペイン | 65 |
5 小括 | 65 |
第5章 DeFiの税務上の取扱いについての一考察 | 67 |
第1節 暗号資産該当性 | 67 |
1 流動性供給に係る検討 | 67 |
2 資金決済法の定義規定による「暗号資産」該当性 | 69 |
3 活発な市場が存在する暗号資産の該当性 | 71 |
第2節 流動性供給にかかる課税所得の認識時点 | 71 |
1 法人税法上の課税所得の認識時点 | 72 |
2 「流動性供給は課税イベントではない」という考え方 | 72 |
3 「流動性供給は課税イベントである」という考え方 | 73 |
4 本件LPトークン等の課税上の取扱いについての考察 | 73 |
結びにかえて | 74 |
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