上田 正勝
税務大学校
研究部教育官

要約

1 研究の目的(問題の所在)

所得税法上、一時所得に該当するためには、@その他の8種類の所得に該当しない、A営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得である、B労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しない、といった3つの要件を満たす必要がある。
 逆に、「役務の対価」としての性質を有する所得は、雑所得に該当することとなるため、「対価」に該当するか否かによって、一時所得と雑所得のどちらの所得区分となるかが定まる場合がある。
 この「対価」に関して、消費税法においては、「対価」とは、資産の譲渡等(資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供)に対する反対給付とされており、その給付が具体的な役務行為等に対応するものとして限定的に解釈されている。
 それに対して所得税法においては、「供与が具体的な役務行為に対応する場合だけでなく、一般的に人の地位及び職務に関連してなされる場合」について、対価性を充たすとした裁判例(東京地判平成8年3月29日)がある。
 このように、所得税法上の「対価」の意義は、消費税法上の「対価」とは異なり、具体的な役務行為に対応しない場合も含みうるところ、その範囲は必ずしも明白であるとは言い切れない。
 また、所得税法における「対価としての性質を有しない」場合とは、民法における「贈与」であることが多いと考えられ、個人間での贈与であれば贈与税の対象となると考えられるものの、完全に一致する概念であるかどうかは必ずしも明白であるとは言い切れない。さらに、贈与であれば当然に贈与税の対象とするとした場合、担税力に応じた課税という観点からは疑問のある課税となるおそれもある。  そこで、所得税法における「対価」の意義について検討を行うこととする。

2 研究の概要

(1)所得税法における「対価」

所得税法34条においては、判例より「役務の対価とは、狭く給付が具体的・特定的な役務行為に対応・等価の関係にある場合に限られるものではなくて、広く給付が抽象的、一般的な役務行為に密接・関連してなされる場合をも含むと解するのが相当であ」り、「給付が一般的に人の地位、職務行為に対応、関連してなされる場合をも含むと解するのが相当である」と解釈されている。
 この違いは、「所得税法73条が「対価」であることを求めているのに対して、同法34条が「対価としての性質」を求めるに留まっているという点に違いが生じているのではないか」ということが理由として考えられる。
 具体的な役務行為との直接的な関係が無いか希薄であるような場合に「対価」そのものと言えないとしても、支払う側の支払う理由、収入する側の価格設定方法や収入する理由、収入した資金の使途といった業務の全体像からすれば、業務による所得として取り込むことが当事者の意思や業務の実態に適合するような収入を、「対価としての性質」として「対価」よりも拡張して取り込むことは、担税力に即した公平な課税の実現によりよく適合するといえ、逆に言えば、「としての性質」は、担税力に即した公平な課税を実現するために「対価」の対象を拡張可能とする明文規定であると解することが合理的であると考える。
 そして、それが役務の対価である場合に拡張される範囲を画する基準の一つが、「役務の対価とは、狭く給付が具体的・特定的な役務行為に対応・等価の関係にある場合に限られるものではなくて、広く給付が抽象的、一般的な役務行為に密接・関連してなされる場合をも含むと解するのが相当であ」り、「給付が一般的に人の地位、職務行為に対応、関連してなされる場合をも含むと解するのが相当である」という判示によって表現されているということができる。
 ところで、「対価」に関して、所得税法以外の税法においても、類似の概念が存在する。1つは消費税法28条における「課税資産の譲渡等の対価の額」であり、もう1つは相続税法2条の2における「贈与」である。
 そこで、所得税法における「対価」の意義について、消費税法上の「対価」及び相続税法上の「贈与」との関係に注目してさらなる検討を行うこととする。

(2)消費税法における「対価」

消費税法上の「対価」の意義の解釈については「当該具体的な役務提供があることを条件として、当該経済的利益が収受されると言いうることを必要とするものの、それ以上の要件は法には要求されていないと考えられる」との判示がなされている。
 そして、これを契機になされた多くの検討において、役務の提供と給付の関連性についての議論となっている。
 その中に、国税通則法15条が規定する納税義務の成立時期についての違いに着目して、「所得税や法人税のように一定期間の終了を待って納税義務が成立する期間税ではな」く、「消費税法は消費に着目する税、つまり行為税として構成され、個々の取引時に「納税義務が成立」するという基本的性格を有している税である」として、「個々の取引で見ると、売り手と買い手が取引を行うが、少なくとも売り手側は取引時点で納税義務が成立するので、その抽象的な額が観念できる仕組みでなければならない」とする説があり、そのように解する理論が最も有効かつ妥当な結論を導くと考える。またそれは判例とも一致するものである。
 また、これは所得税法における「対価」の判定に際して、同条の規定からは、「給付が具体的な役務行為等に対応する必要性がある」という要件を導くことができないことも同時に示すことになる。

(3)「対価」を生ずる行為の範囲の違い

まずは、既述のとおり、所得税法においては、「対価としての性質」という規定によって「対価」とだけ規定されている場合よりも拡張的に解釈することが可能であることから、所得税法における「対価(としての性質)」と消費税法における「対価」は異なる意味内容を有して当然であると考える。
 さらに、消費税法2条にも「対価」が使用されていることに注目すると、同条は「事業として対価を得て行われる」資産の譲渡や役務の提供を「資産の譲渡等」と定義しており、この「事業として対価を得て行われる」という条件は、消費税法基本通達において確認されているように、所得税法34条の継続性要件を満たす状態であると考えられる。
 そして、この定義を踏まえると、消費税法28条における「対価」には、所得税法における継続性要件を満たさない取引に係る対価は含まれないこととなる。
 これに対して、所得税法34条の対価性要件は、継続性要件を満たさない所得に関する所得区分判定にも用いられることとなる。
 つまり、同じ「対価」という用語を用いていても、消費税法2条という明文規定の存在によって、同法28条では、「対価」を適用する対象が限定されることとなるため、そのような限定のない所得税法34条と異なる意味を有することとなって当然であるといえる。
 これまでの検討をまとめると、国税通則法15条における規定の違い、「としての性質」という規定の存在、消費税法2条における定義の存在といった要因によって、同じ「対価」という文言を用いているにも関わらず、所得税法と消費税法において異なる意味内容を有することとなっていることを明らかにすることができたと考える。

(4)租税法規における「贈与」

所得税法における「対価としての性質を有しない」場合とは、民法における「贈与」であることが多いと考えられ、個人間での贈与であれば贈与税の対象となると考えられるものの、完全に一致する概念であるかどうかは必ずしも明白であるとは言い切れない。
 まず、文理としては、相続税法2条の2及び所得税法9条16号によって、「贈与」の場合は、所得税ではなく贈与税を課すという構造になっている。
 そして、「贈与」という用語は、税法において定義規定がないことから、これは民法からの借用概念だとされている。

(5)借用概念

借用概念の解釈については、「私法上におけると同じ概念を用いている場合には、別意に解すべきことが租税法規の明文またはその趣旨から明らかな場合は別として、それを私法上におけると同じ意義に解するのが、法的安定性の見地からは好ましい」として、「統一説」が「租税法律主義=法的安定性の要請に合致している」とされている。
 しかし、「統一説」であっても、「別意に解すべきことが租税法規の明文またはその趣旨から明らかな場合は別として」と、例外を認める余地があるとされており、「贈与」についても別意に解すべき部分があるかを検討する必要がある。
 まず、民法においては負担付贈与契約も贈与契約であるが、税法においては贈与者に経済的利益が生じることを理由に負担付贈与を贈与と別意に解すべき場合がある(最判昭和63年7月19日)とされている。
 また、負担付贈与でない贈与であっても、「相続税が課税されない部分を補完するという(中略)贈与税の性格に照らすと、およそ相続関係が生ずるとは考えられない多数の者から継続的に供与される現金に係る収入を贈与税の課税対象とすることは、極めて不自然」であること、さらに、「民法上の贈与の法的性格を有する収入であっても、類型的にこれに対応する必要経費的な支出が想定されるものを贈与税の課税対象とすることは、納税者にとって非常に酷な課税となり得るのであって、不合理な解釈というべきである」として、「租税法令が贈与という民法上の用語を使用しているからといって、そのことから直ちに、その贈与を民法上の贈与と全く同義に解釈しなければならないということにはならない」との判示もある。
 このように、「贈与」に関して、租税法令において民法上の贈与と別意に解する余地があると考えられるところ、どのような場合に別意に解する必要があるのかについては、さらなる検討が必要である。

(6)民法上における「贈与」(実質的経済的見返りと無償性)

民法における贈与の要件のうち、本稿に関係が深いものは「無償性」であり、この「無償性」と所得税法における「対価としての性質を有しない」という規定との関係が重要となる。
 また、民法理論においても「無償性」が重要な論点となっている。
 民法においては、「実質的経済的にみて見返りがあるものでも、法律的にみて「反対給付」がないと評価されるものは、民法上「贈与」になると解して」いる。「実質的経済的に無償である贈与も存在するであろうが(いわば利他的動機に基づく贈与、純粋な意味の贈与)、判例も学説も、実質的経済的にみて見返りがあるものでも、民法上の「贈与」と認めている」。
 しかし、無償性が広範に認められていることから贈与とされたとしても、「無償性」の内容に応じた結論(贈与契約の撤回や贈与財産の返還など)を導いている判例が存在しており、「忘恩行為に関する撤回等は、実務において実質的には受け入れられているとされ」るなど、「法運用の実態において変容が生じている」と考えられている。
 つまり、民法においても、見返りのない好意による贈与と義務的、非好意契約的な贈与では、実態として法的な効果に違いが生じると考えられているのである。

(7)租税法規の明文及び趣旨

まず、租税法の趣旨として、「担税力に応じた公平な税負担を旨とする租税法令における贈与は、その収入の経済的実質を重視し、担税力に応じた課税の実現を期して構成されるべきである」との判示がある。
 次に、贈与税は相続税法に相続税と共に規定されているのであるが、これは、「相続税の回避を封ずることを目的として贈与税が採用された」という歴史の反映であり、「贈与税の負担が相続税のそれよりも高いこと、個人からの贈与のみが贈与税の対象とされていること等は、かかる事情に由来する」ものであり、これらの明文規定によっても贈与税は相続税の補完税としての性質を持っているという趣旨を読み取ることができる。
 また、個人間で民法上の贈与があった場合、所得税と贈与税に関係するが、所得税と贈与税はその課税物件が異なっていることも、租税法規の明文及び趣旨の解釈において重要な要素となる。
 まず、「所得税の課税物件は個人の所得」であり、その所得金額を計算する際の収入金額については所得税法36条において、「金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもつて収入する場合には、その(中略)価額」も含むと規定され、「用役の提供を無償又は低い対価で受けた場合」についても経済的利益に含むことが、所得税基本通達において確認されている。
 このように包括的に構成される所得であるが、「未実現の利得(中略)および帰属所得(中略)―自己の財産の利用および自家労働から得られる経済的利益―は、どこの国でも、原則として課税の対象から除外されて」おり、「わが国でも(中略)それらは原則として課税の対象から除かれていると解さ」れている。
 他方、贈与税においては、相続税法2条の2から、「贈与税の課税物件は、贈与によって取得した財産であり、これを贈与財産」といい、「財産権の対象となる一切の物および権利が含まれる」とされるが、相続税法基本通達において、「「利益を受けた」とは、(中略)労務の提供等を受けたような場合は、これに含まないものとする」と確認されている。その理由としては、「所得税においても、自己又は家族のためにする役務提供(自家労働)によって生ずる利益(中略)については、所得(収入)と考えて課税することとはしていないことと平仄を一致させている」と解説されている。
 こうして、所得税と贈与税の課税物件を比較すると、無償や低額で用役や役務の提供等を受けることによる経済的利益については、所得税においては課税物件である所得に含まれる(自家労働を除く)のに対して、贈与税においては課税物件である贈与財産には含まれないという差があることが分かる。

(8)租税法において「贈与」について別意に解すべき部分

民法における贈与は、実質的経済的にみて見返りがない場合の贈与と実質的経済的にみて見返りがある場合の贈与に分類することができる。
 また、租税法規の側からみれば、自家労働によって生ずる利益については原則として課税の対象から除外されることから、実質的・経済的にみて見返りがある場合でも、それが自家労働を目的とするものか第三者による役務の提供等を目的とするかによって、「租税法規の明文またはその趣旨」という点で異なる扱いとすべき可能性があると考えられる。
 その上、贈与税が相続税の補完税であることから、相続が生じ得る親族間での資産や役務の交換は、相続が生じる可能性の低い第三者間における交換とは、租税法規の適用において異なる意義を持つ可能性がある。
 そのため、実質的・経済的にみて見返りがある場合の贈与は、さらに、その資産の譲渡とそれに対する経済的な見返りが、親族間で行われる場合と、第三者間で行われる場合とに分類する必要が生じることとなる。
 この分類を踏まえて、「別意に解すべきことが租税法規の明文またはその趣旨から明らかな場合」について検討する。
 まず、担税力に即した公平な税負担という租税法令の趣旨を踏まえるならば、実質的経済的にみて見返りがない場合の贈与に関しては、租税法の適用において別意に解すべき場合に当たらないのは当然であるが、実質的経済的にみて見返りがある場合の贈与については、贈与者に経済的利益が生じることから、見返りがない場合の贈与とは異なる担税力があると考える必要がある。つまり、その実質的・経済的な見返りの内容によっては、民法上は贈与であっても、租税法規の適用においては、別意に解する必要があり得るということになる。
 ここで、判例において別意に解すべきと認められた際の理由につき検討する。
 東京地判平成8年3月29日においては、@「贈与税の性格に照らすと、およそ相続関係が生ずるとは考えられない多数の者から継続的に供与される現金に係る収入を贈与税の課税対象とすることは、極めて不自然」であること、そして、A「民法上の贈与の法的性格を有する収入であっても、類型的にこれに対応する必要経費的な支出が想定されるものを贈与税の課税対象とすることは、納税者にとって非常に酷な課税となり得るのであって、不合理な解釈」となるという理由が示されている。
 まず、@であるが、そもそも、そのような収入が理由もなく得られるということは現実的にはまずあり得ないであろう。しかし、「役務の対価」には「給付が一般的に人の地位、職務行為に対応、関連してなされる場合をも含むと解するのが相当である」と判示されたような態様であれば、反対給付請求権を持つことが無いにも関わらず、実質的経済的な見返りを期待する給付の相手方、すなわち、およそ相続関係が生ずるとは考えられない多数の者から収入を得られる可能性があると考えられる。
 つまり、所得税法における「対価としての性質を有する所得」に含まれるとされる「一般的に人の地位、職務行為に対応、関連してなされる」給付が、同時に民法上の「贈与」であっても、租税法の趣旨を踏まえると「贈与税の課税対象とすることは、極めて不自然」であると考えられることから、租税法令において「別意に解すべきことが租税法規の明文またはその趣旨から明らかな場合」にあたるということになる。
 次にAであるが、これは、贈与した財産の使途に関して贈与者からの条件(期待)が存在することが類型的に考えられるような贈与であると捉えることもできる。この判決において問題となった政治献金であれば、献金を行う者はその献金のすべてが政治活動に利用されることを期待しているであろうし、受領者たる政治家においても、政治献金とはそのように利用すべきものであるという前提で受領していると言っていいであろう。つまり、政治献金は法的に履行を強制するような契約ではないが故に民法上は贈与となるものの、当事者の意思としては、受贈者が自由に処分することができる財産の供与という意味での「贈与」とは異なり、(法的に強制することはできないとはいえ)受贈者が自由に処分することができる財産は本来存在していないと捉えることができる。このような収入について、民法上の贈与ということでその全額を贈与税の対象とすることは「納税者にとって非常に酷な課税となり得るのであって、不合理な解釈」になることから、租税法令において別意に解すべき場合にあたるということになる。
 つまり、法的には反対給付請求権が無いとしても、実質的経済的にみて見返りがある場合のうち、「一般的に人の地位、職務行為に対応、関連してなされる」給付と、贈与した財産の使途に関して贈与者からの条件(期待)があることが類型的に考えられるような贈与については、「別意に解すべきことが租税法規の明文またはその趣旨から明らかな場合」として、贈与税ではなく、所得税の対象とすることが適当であると考える。
 他方、実質的経済的にみて見返りがある場合であっても、相続税の補完税としての贈与税という趣旨を踏まえると、その見返りの内容が家族間で供与されるものであるなら、贈与税の課税対象とすることが租税法規の明文またはその趣旨に合致することから、民法上の贈与と別意に解する必要はないといえる。
 ここまでの検討をまとめると、民法上の「贈与」に、租税法規の趣旨及び明文の規定を踏まえて相続税法及び所得税法を適用する場合、贈与を@純粋な意味の贈与(好意による贈与)、A実質的経済的にみて見返りがある贈与のうち、その見返りの内容が家族間で供与されるものではない贈与、B実質的経済的にみて見返りがある贈与のうち、その見返りの内容が家族間で供与される贈与、に分類し、@及びBが贈与税の対象となり、Aが所得税の対象となると解することが適切であるといえる。

3 結論

まず、所得税法と消費税法において用いられている「対価」の意義の差異については、それぞれの税法の文理及び趣旨から当然にその範囲に違いが生じるということを明らかにすることができた。
 次に、所得税法における「対価としての性質を有しないこと」と贈与税の対象となる民法における「贈与」との関係については、民法上の「贈与」であっても、同時に、実質的経済的にみれば見返りがある場合もあり、そのような場合には、民法上も見返りのない好意による贈与とは異なる取り扱いがなされる場合もあるということが分かった。
 その上で、「担税力に応じた課税の実現を期して構成されるべきである」との租税法の趣旨を踏まえ、実質的経済的にみて見返りがある場合の贈与について検討したところ、少なくとも「一般的に人の地位、職務行為に対応、関連してなされる」給付と、贈与した財産の使途に関して贈与者からの条件(期待)があることが類型的に考えられるような贈与については、「別意に解すべきことが租税法規の明文またはその趣旨から明らかな場合」にあたり、贈与税の対象となる贈与ではなく、所得税の対象とすることが適当であると考えた。
 そして、このような論理によって所得税の対象とされる実質的経済的な見返りとは、所得税法における「対価としての性質」を有する所得であると捉えることができる。
 ただし、実質的経済的にみて見返りがある場合であっても、その見返りの内容が家族間で供与されるものであるなら、贈与税の課税対象とすることが租税法規の明文またはその趣旨に合致することから、民法上の贈与と別意に解する必要はないといえる。
 今回、所得税法と消費税法及び相続税法の関係に焦点を当てて「対価」について民法理論における無償性を介しつつ分析した結果、現行の課税実務及び判例には十分な合理性があると示すことができたのではないかと思う。
 本研究が、対価についての各税法の関係を理論的に整理する一助となるならば幸いである。


目次

項目 ページ
はじめに 100
第1章 所得税法における「対価」 101
第1節 所得税法における「対価」 101
1 一時所得該当性判定における「対価」 101
2 所得税法における「対価」に関する判例 101
3 小括 107
第2節 所得税法における「対価」と近接領域 108
1 消費税法における「対価」 108
2 相続税法における「贈与」 109
3 小括 110
第2章 所得税法と消費税法における「対価」の異同 111
第1節 消費税法における「対価」に関する判例・学説 111
1 消費税法における「対価」に関する判例 111
2 消費税法における「対価」に関する学説 112
3 消費税法における「対価」についての私見 115
第2節 所得税法と消費税法における「対価」 120
1 税額計算の構造の違い 120
2 「対価」を生ずる行為の範囲の違い 120
3 小括 121
第3章 租税法規における「贈与」 123
第1節 相続税法及び所得税法における「贈与」 123
1 相続税法及び所得税法における「贈与」 123
2 借用概念 123
第2節 民法における「贈与」 125
1 民法における「贈与」に関する規定 125
2 民法における実質的経済的見返りと無償性 127
3 日本の民法における贈与観 130
4 小括 132
第3節 租税法において「贈与」について別意に解すべき部分 132
1 租税法規の明文及び趣旨 132
2 実質的経済的にみて見返りがある場合 136
おわりに 141