中村 三とく

税務大学校
租税理論研究室助教授


まえがき

 課税処分の取消訴訟において、課税処分の基礎となった理由以外の理由によってその課税処分の適法性を維持することが許されるかという問題がある。たとえば、納税者の申告した所得金額について売上計上洩れがあることを理由に行った更正処分が争われ、売上計上洩れがあると認定したことの誤りが明らかになった場合に新たに他の経費の過大計上があるなどの理由によって更正処分にかかる所得金額の適法性を維持することが許されるかということである。不服審査における裁決、決定に当っても同様の問題がある。
ところで、訴において原処分の理由と異なる理由によって当該処分を維持することが許されるかどうか、すなわち処分理由の差しかえが認められるかどうかについては、いろいろの面から検討されなければならないであろう。
まず、訴における審理の対象、目的が何であるか、すなわち訴訟物は何かという面からの検討が必要であり、次いで処分の理由が青色申告の更正通知書、異議決定ないし審査裁決の決定書、裁決書に明示されることが要請されていることから、その理由付記との関係も、とりあげられよう。
本稿は、所得税、法人税の課税所得金額の更正処分の取消訴訟において、理由の差しかえが認められるべきか否かに関し、前記のような諸問題について主として裁判例を中心として若干の検討を試みたものである。

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