菅野 保文

税務大学校
租税理論研究室助教授


はじめに

 課税庁がいわゆる白色申告者について推計によってその所得を計算し更正(決定)処分を行った場合において、その処分に対して取消訴訟が提起され、推計によって所得を計算すべき場合でなかったと原告が主張し、その主張に理由がある場合には、当該更正(決定)処分はそのことのみを理由として取り消されるべきか、これは推計課税をめぐるひとつの問題である。
千葉地方裁判所が昭和46年1月27日に行なった、いわゆる千葉民商事件判決(昭和42(行ウ)第9号、所得税更正決定取消請求事件 判例時報618号11頁、税務訴訟資料62号87頁)は、この問題について明らかに積極説に立った判決として注目すべきものであり、これを契機として今後多くの議論がなされるであろう。
本稿は、「推進課税の前提要件」として従来説かれているものをとり上げ、その法的性格について試論的な検討を行なうとともに、前述の千葉地裁判決の推計課税に関する論理について若干の考察を加えたものである。
(この問題については、従来あまり研究されておらず、本稿も副題に記載したとおり、筆者の個人的な試論であることをあらかじめお断りしておきたい。)

Adobe Readerのダウンロードページへ

PDF形式のファイルをご覧いただく場合には、Adobe Readerが必要です。Adobe Readerをお持ちでない方は、Adobeのダウンロードサイトからダウンロードしてください。

論叢本文(PDF)・・・・・・723KB