茂木 繁一

税務大学校
租税理論研究室教授


はじめに

 税法における「実質主義」ないしは「実質課税の原則」の問題は、古くて新しい問題である。税法の解釈適用や、所得の帰属をめぐる問題について、常にこの原則が持ち出され、しかもそれは、ある場合には税務官庁側から、そしてある場合には納税者の側から持ち出されるのである。
この原則そのものについては、実定法に明確な規定がある訳でなく(ただし、実質所得者課税の原則については、所得税法および法人税法に規定がおかれている。)その概念も比較的漠としたものであるといえよう。勿論、この原則については、過去の裁判所の判決等でもかなりふれられてきており、その意味で序々にその根拠なり範囲なりも固まりつつあるといえよう。
実質主義の問題は、間口、奥行ともに広く、かつ深い問題であり、その全体を体系的にとりまとめる必要を痛感するものであるが、本稿では、主として1税法における実質主義とは何か、何故要請されるか、2その理論的根拠はどこにあるか、3適用の限界をどう考えるべきか、4どういう批判がなされているか等の問題に重点をおいて考察を加え、私見をとりまとめてみたものである。

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