【答え】

2 桶や樽などの酒造用器具

【解説】

明治4(1871)年に成立した「清酒濁酒醤油鑑札収与並ニ収税方法規則」が江戸時代以来の酒株を廃止したことにより(酒株解放)、長く酒造業を営んできた業者でなくても免許料を納めれば(清酒は金十両、濁酒は金五両)、酒造りを営むことができるようになりました。このことは酒造業者の乱立と酒の乱売による品質の低下を招くとともに、既存の酒造経営者への打撃にもつながりました。
 その後、明治13(1880)年に酒造税則が作られると、その後長きにわたって酒造業者に課税される造石税(醸造量に応じて賦課される従量税)と、醸造場一個所につき課せられる酒造免許税が導入されることとなりました。しかし酒株解放により新たに参画してきた酒造業者はしばしば経営面でも不安定さを抱えており、また酒株解放以後に経営不振に陥っていく既存の業者も少なからずあり、安定的な納税が行われるとは限りませんでした。
 それゆえ酒造税則は、明治23(1890)年に改定が加えられ、造石税の滞納処分を受けてから満三年以内に「相当ト認ムル保証物」を提供できない者には酒造免許を付与しないことを定めました。そして同年に定められた同税則の施行細則は、大蔵省証券や日本銀行株券、国立銀行株券などを、その具体的な「保証物」として列挙しています。これらの規定は、担税力が不十分な業者を整理するとともに、そのような業者が新規に参入しないようにする防波堤としての役割を担ったものと考えられます。
 明治29(1896)年になると、それまでの酒造税則に代わって酒造税法が制定され、その第13条では「酒類ヲ製造スル者ハ納税保証トシテ造石税半額ニ相当スル保証物ヲ供スヘシ」と規定されました。先の酒造税則では「保証物」を求められるのは、造石税の滞納処分を受けて満三年を経過した者などに限定されていましたが、酒造税法では原則として「酒類ヲ製造スル者」すべてに保証物の提供が求められるようになったのです(例外規定は第14条にあり)。そして同法施行規則第21条によれば、その具体的な「保証物」として、金銭、有価証券(国債、地方債をも含む)および土地、さらには、火災保険のついた「酒類製造場内ノ建物」が挙げられています。桶や樽などの酒造用器具が酒造税則の施行細則や酒造税法の施行規則が定める「保証物」に含まれることはありませんでした。