【答え】

2 畜産業

【解説】

農業や畜産業、漁業や林業といったいわゆる第一次産業は明治29(1896)年に制定された営業税法では課税の対象外となりました。営業税は各種の商工業を対象とした税だったからです。
 江戸時代、商工業は、運上・冥加という形式で様々に課税されていました。明治時代になると運上・冥加は廃止や整理が進められます。明治11(1878)年に地方税規則が制定されると、そのような商工業者に課せられる税の一部が営業税・雑種税として再編成されて地方税になりました。地方税規則の下で、府県会の議決によってそれぞれの府県で営業税・雑種税規則が制定・賦課され、主要な財源の一つとして地方財政を支えました。明治29(1896)年の営業税法は、それまでの営業税・雑種税を国税に委譲させ商工業者への課税を全国で統一するものでした。
 この法律では、物品販売業、運送業、銀行業、印刷業、倉庫業、料理店業など24の業種が課税対象として指定されました。第一次産業は対象外とされ、収穫した作物や魚を販売することも物品販売業には該当しないとされていました。
 ただし、金魚や鯉などを自ら養殖して販売したり、盆栽のような観葉植物を育て販売したりする場合は、物品販売業であるとみなされて課税対象になりました。
 営業税は外形標準課税を採用しており、物品販売業は売上金額、製造業は資本金額などが税額算定の基準になりました。実際の営業純益を課税標準としないこの方式では、納税者の担税力を正確に測れないという批判を浴びました。このため大正15(1926)年に税制改正が行われ、営業税は営業収益税と改められて営業純益に課税する方式に変更されました。

(2024年10月 研究調査員 太田 仙一)