【答え】

1 申告書に懸賞問題を付けた

【解説】

当時の所得税の申告方式は、いわゆる「予算申告納税方式」と呼ばれ、毎年4月(この時期は特例により6月)に予定申告をしてから、翌年1月に確定申告を行うという方式でした(税金の納期は、6月、10月、翌年1月)。
 しかしながら、所得税に申告納税制度が導入されて最初の予定申告である昭和22年度の納税額は、インフレが高進する中、納税者側も初めての税の計算に不慣れということもあり、12月段階で政府の当初予算に対して11.4%という低調さでした。戦後の社会の混乱期であるとはいえ、このままの低調が続けば、国の財政が危機的な状況に陥るだけでなく、正直に納税している納税者との公平性の点でも問題でした。
 そこで、税務当局は、悪質な無申告や過少申告には、更正、決定を行い、追徴税(不足税額の25%)※1や加算税(日歩10銭)※2を課すなど、強い態度で臨んでいきました。その一方で、少しでも税額の計算に慣れてもらい申告水準を向上させるため、昭和24年6月の所得税予定申告書に所得税額の計算問題(1等賞金3万円)を付けたのです。
 さて、この奇策が行われた昭和24年6月の予定申告ですが、申告納税人員数が約346万人、そのうち解答者数が70万件を超え、正解者23万人の中から、抽選で1等から5等までの当選者278人が選ばれました。
 懸賞問題付きの申告書は、この1回限りとなっており、まさに戦後の混乱期を表す奇策といえるでしょう。

※1 現在の加算税に相当
※2 現在の延滞税に相当

(2024年4月 研究調査員 今村 千文)