
今回は、「税に就ての講演會」という史料を紹介します。
【写真1】は、昭和2(1927)年2月3日に、大阪の南税務署長を講師として「営業収益税」の講演会を開催するという内容の史料です。
講演会の開催は、営業収益税の新設が背景にあります。各種の商工業に対して、従来は明治30(1897)年に制定された営業税が課されていました。営業税は、外形標準課税を採用していました。外形標準課税とは、売上金額や資本金額、建物賃貸価格や従業員数など外形から客観的に判断できる数値を税額算定の基準とする方式を言います。
しかし、売上げが多いから利益が多いとは限らないように、外形標準は納税者の担税力を正確に示すわけではないという不満を持つ人もいました。そのため、外形標準課税を採用する営業税は、納税者からしばしば批判されてきました。
特に、営業税への激しい批判が起きたのは大正3(1914)年のことです。この年、国会では野党が営業税廃止法案を出す一方で、政府は営業税の修正法案を提出するなど、営業税が大きな争点になっていました。このような状況下で、営業税廃止を求める全国各地の商工業者は上京して運動を展開しました。
【写真2】は、大正3年2月16日の国会周辺の様子を写した絵葉書です。国会の警備のために動員された多数の警察官と、営業税廃止を求めて押し寄せた人々の姿を写しており、営業税を巡る当時の社会情勢が伺えます。
大正3年の国会では野党の営業税廃止法案は否決されましたが、外形標準課税への批判は続き、大正15(1926)年に営業税は廃止されました。そして、新たに営業収益税が制定されたのです。営業収益税では、営業純益が課税標準として採用されることになり、翌年の昭和2(1927)年から施行されることが定められます。それ以外にも、営業税では個人に対してのみ課税されていたのに対して、営業収益税では個人・法人両方に課税されるなどの変更もなされ、従来の営業税から大きく変化しました。
【写真1】の史料で案内されている講演会も、営業収益税への変更などが定められた新しい税法への理解を深めることを目的に開催されました。史料には、「申告期は三月十五日限り」という文言が記されています。個人の納税者は、毎年3月15日までに営業の種類や所在地、純益金額などを税務署に申告することが求められていました。2月3日に開催された講演会は、申告期限を間近に控え、その理解を促進するために開催されたと考えられます。
今回の史料は、営業収益税法という新しい税法の施行に当たって、その内容を広く社会に伝えるための試みを示しています。
【写真1】は、昭和2(1927)年2月3日に、大阪の南税務署長を講師として「営業収益税」の講演会を開催するという内容の史料です。
講演会の開催は、営業収益税の新設が背景にあります。各種の商工業に対して、従来は明治30(1897)年に制定された営業税が課されていました。営業税は、外形標準課税を採用していました。外形標準課税とは、売上金額や資本金額、建物賃貸価格や従業員数など外形から客観的に判断できる数値を税額算定の基準とする方式を言います。
しかし、売上げが多いから利益が多いとは限らないように、外形標準は納税者の担税力を正確に示すわけではないという不満を持つ人もいました。そのため、外形標準課税を採用する営業税は、納税者からしばしば批判されてきました。
特に、営業税への激しい批判が起きたのは大正3(1914)年のことです。この年、国会では野党が営業税廃止法案を出す一方で、政府は営業税の修正法案を提出するなど、営業税が大きな争点になっていました。このような状況下で、営業税廃止を求める全国各地の商工業者は上京して運動を展開しました。
【写真2】は、大正3年2月16日の国会周辺の様子を写した絵葉書です。国会の警備のために動員された多数の警察官と、営業税廃止を求めて押し寄せた人々の姿を写しており、営業税を巡る当時の社会情勢が伺えます。
大正3年の国会では野党の営業税廃止法案は否決されましたが、外形標準課税への批判は続き、大正15(1926)年に営業税は廃止されました。そして、新たに営業収益税が制定されたのです。営業収益税では、営業純益が課税標準として採用されることになり、翌年の昭和2(1927)年から施行されることが定められます。それ以外にも、営業税では個人に対してのみ課税されていたのに対して、営業収益税では個人・法人両方に課税されるなどの変更もなされ、従来の営業税から大きく変化しました。
【写真1】の史料で案内されている講演会も、営業収益税への変更などが定められた新しい税法への理解を深めることを目的に開催されました。史料には、「申告期は三月十五日限り」という文言が記されています。個人の納税者は、毎年3月15日までに営業の種類や所在地、純益金額などを税務署に申告することが求められていました。2月3日に開催された講演会は、申告期限を間近に控え、その理解を促進するために開催されたと考えられます。
今回の史料は、営業収益税法という新しい税法の施行に当たって、その内容を広く社会に伝えるための試みを示しています。
(2025年3月 研究調査員 太田 仙一)