NETWORK租税史料
 日々仕事に明け暮れる大人にとって、運動不足や生活習慣の乱れなどによる体調不良は、いつの世も気になる問題です。今回ご紹介する史料は、そんな職場の運動不足を解消するため、昭和40(1965)年に始められた、国税体操に関する史料です。
 官公庁での体操というと、自衛隊が行っている自衛隊体操が有名ですが、かつては国税庁にも国税体操というものがありました。
 国税体操は税務職員の運動不足を解消する目的で考案され、昭和40(1965)年3月1日から国税庁と全国の国税局で先行導入され、税務署には翌4月から順次導入されました。当時、国税庁が発行していた「国税広報」によると、業務に差し障りのない限り、毎日15時から3分間この体操を実施することになっていました。導入の理由として、「職員がその職場で、各自の健康を維持増進して、より明るい職場をつくりあげようとするのがねらいである」としています。
 【写真1】は、国税庁職員が国税体操の一斉実施に向けて、振り付けの練習に励む様子です。国税庁では国税体操の一斉実施に向け、前年の昭和39(1964)年9月に指導担当者を対象とした一斉研修を行いました。研修終了後、受講者は各地で体操の指導や趣旨の周知に取り組みました。体操に用いる伴奏用のレコード制作なども同時に進められるなど、国税庁の組織を挙げた大掛かりなプロジェクトであったことがわかります。
 租税史料室には、この国税体操のために作られた音楽のレコードや、振り付けのチラシ、国税体操をする職員を写した写真などが所蔵されています。
 【写真2】は、国税体操の振り付けを図解したチラシです。体操の動きを図示したイラストとその方法を説明したコメントがついています。それぞれの動きが体のどの部分に影響するのかという解説も付けられております。裏面には「毎日体操を!」のスローガンの後に体操の効能についての説明書きがされています。
 【写真3】は、実際に税務署で国税体操が行われている様子です。アルバムの日付から、導入初日に撮影されたものと考えられます。
 昭和40年代といえば高度経済成長期であり、体調や家庭を顧みずに、ひたすらに労働に邁進する“企業戦士”や“モーレツ社員”といった言葉が流行語になった時代でした。この取組は、そのような情勢下で少しでも職場環境を改善しようとした試みだったのかもしれません。

(2026年9月 研究調査員 菅沼明弘)