5 行政サービスのデジタル化の推進

〜 デジタル・ガバメント 1 の実現に向けて 〜

 令和5(2023)年6月に閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた重点計画」に基づき、納税者の自発的な納税義務の履行を円滑かつ適正に実現するため、UI・UXの改善による利便性向上や業務・システムの効率化・合理化など、国税関係手続のデジタル化推進に取り組んでいます。
 具体的には、マイナンバーカードでe-Taxを利用する個人の方を対象に、本人情報等を確認できる「マイページ」の運用や、申告時のマイナンバーカードの読取回数を削減するなどの改善を実施しています。
 そのほか、マイナポータル連携による申告書の自動入力対象拡大など、今後も手続全体のデジタル 化とUI・UXの改善を推進していきます。

システムの安定性・信頼性と情報セキュリティの確保

 国税関係業務は、国民の権利義務と密接に関わっており、大量の納税者情報を管理しているため、システムに障害が発生した場合には、国民に多大な影響を与え、税務行政に対する信頼を損なうことにもなりかねません。このため、システム機器の定期的な更新を実施するなど、システムの安定的な運用を図っています。
 また、職員が職務上必要な情報しか利用できない仕組みにするとともに、定期的なセキュリティ監査を実施するなど、不正利用や漏えいの防止に細心の注意を払っています。
 なお、データを保有するe-Tax及びKSKシステムの基幹システムは、平成19(2007)年に国際的標準規格に準拠した、ISMS2 適合性評価制度に基づく認証(ISO/IEC27001・JISQ270013 に基づく認証)を取得し、以降は定期的に更新しています。
 さらに、令和2(2020)年には、法人番号の指定などを行うシステムについても、同認証を取得しました。

国税総合管理(KSK)システム

 KSKシステムは、全国の国税局と税務署をネットワークで結び、地域や税目を越えた情報の一元的な管理により、各種事務処理の高度化・効率化を図るために導入したコンピュータシステムです。

システムの高度化(新たなシステムの構築)

 国税庁においては、ICTの活用による「納税者の利便性の向上」と「課税・徴収の効率化・高度化」を目指していくこととしており、これを実現するためのインフラとして、令和8(2026)年度の本格導入に向けて、次世代システムの開発を進めています。
 次世代システムについては、

  • 1 データ中心の事務処理を実現するシステム(紙からデータ)
  • 2 現在、税目別となっているデータベース・アプリケーションの統合(縦割りシステムの解消)
  • 3 独自OSを使用する大型コンピュータを中心としたいわゆる「メインフレーム」から、市販の汎用的なOSを使 用するいわゆる「オープンシステム」への刷新(メインフレームからの脱却)

といったことを開発コンセプトとしています。

  • 1 「デジタル・ガバメント」とは、国民・事業者の利便性向上に重点を置き、行政の在り方そのものをデジタル前提で見直す政府全体の取組です。
  • 2 「ISMS」とは、情報セキュリティマネジメントシステムの略称であり、保護すべき情報資産が機密性、完全性及び可用性において適切に管理された状態であることを維持するために必要な計画、運用、見直し及び改善を実施するための組織的取組のことです。
  • 3 「ISO/IEC27001」とは、国際標準化機構(International Organization for Standardization)の策定する標準化規格の1つです。情報セキュリティマネジメントシステムのグローバルスタンダードであり、平成17(2005)年10 月に国際規格として標準化されました。また、「JISQ27001」とは、ISO/IEC 27001 に対応して、平成18(2006)年5月に発行された国内規格です。

情報の厳正な管理

 国税庁は、個人の所得情報など、様々な情報を保有しています。これらの情報は厳格に管理する必要があり、情報が漏れるようなことがあれば、納税者の協力は期待できなくなり、円滑な調査・徴収等に支障が生じかねません。
 このため、税務職員が税務調査などで知った秘密を漏らした場合には、国家公務員法上の刑事罰(1 年以下の懲役又は50万円以下の罰金)よりも重い税法上の刑事罰(2年以下の懲役又は100万円以下の罰金)が科されることとなっています。
 職員に対して、定期的に情報セキュリティに関する研修を行っているほか、調査などに際し、質問する場所についても、プライバシーに配慮し、店舗先や玄関先はなるべく避けるようにしています。
 また、国税庁は特定個人情報(マイナンバーをその内容に含む個人情報)などを取り扱うことから、マイナンバー法などの関係法令の趣旨を踏まえ、行政文書の管理状況を定期的に点検するなどにより、国税庁の保有する納税者情報を厳正に管理するよう努めています。

《コラム2》内部事務のセンター化

 「内部事務のセンター化」は、複数の税務署の内部事務について、専担化した組織(業務センター)で集約処理することにより、事務の効率化と事務の正確性の確保を目指す取組です。
 順次、対象となる税務署を拡大しながら、令和8(2026)年には、全ての税務署を対象に内部事務のセンター化 を実施することを予定しています。

《コラム3》新たな試験区分(国税専門B(理工・デジタル系))の創設

 国税庁では、税務行政のデジタル・トランスフォーメーションの取組をより一層推進するため、令和5(2023)年度の国税専門官採用試験から、従来からの法文系の方向けの国税専門A(法文系)とは別に、新たに理工・デジタル系の方向けの国税専門B(理工・デジタル系)を創設しました。
 詳しくは、国税庁ホームページをご覧ください。