2 確実な税金の納付

(1)自主納付態勢の確立

〜 年度内に納付された税金は約66.5兆円 (年度内収納割合は98.9%) 〜

 申告された国税は、国庫に納付されて初めて歳入となります。平成30(2018)年度においては、税務署に申告された国税などの課税額(徴収決定済額)が約67 兆2,000 億円であったのに対し、このうち年度内に国庫に納付された税金(収納済額)が約66 兆5,000 億円となっており、その収納割合は98.9%でした。

〜 滞納を未然に防止 〜

 滞納を未然に防止するために、納付の期限や納税資金の積立てに関する広報・周知を、関係民間団体や税理士会等の協力を得ながら、積極的に実施しています。
 納期限の失念を防ぐとともに、計画的な納付を行っていただくため、振替納税やダイレクト納付を利用した予納などの多様な納付手段を導入し、積極的にご利用いただけるよう努めています。
 また、前回の納付の際に期限を過ぎて納付した納税者には、あらかじめ文書で期限をお知らせし、期限までに納付のない納税者には、督促状を発送する前に電話で連絡して納付を促すなどの取組を行っています。

※ 滞納とは、国税が納期限までに納付されず、督促状が発送されたものをいいます。

(2)滞納の整理促進への取組

〜 滞納整理中のものの額はピーク時の28.8%に 〜

 平成30(2018)年度末の滞納整理中のものの額は8,118億円となっています。

全税目の滞納整理中のものの額の推移

全税目の滞納整理中のものの額の推移

 滞納となった国税については、期限内に国税の納付を行っている大多数の納税者との間の公平性を確保する観点から、早期徴収に努めるとともに、以下の基本方針の下で整理促進に取り組んでいます。

〜 滞納整理は滞納者個々の実情に即しつつ適切に対応 〜

 滞納整理に当たっては、まずは、自主的な納付を促して納付の意思を確認するとともに、事業や財産・収支の状況など、滞納者個々の実情を十分に把握した上で、処理方針を決定します。
 具体的には、滞納者から一括納付が困難との相談がある場合には、滞納者の事情を十分にお聴きした上で、納税の猶予や換価の猶予などの納税緩和措置の適用を検討し、法令の要件に該当する場合は分割納付を認めるなど適切に対応しています。一方、納付約束の不履行を繰り返すなど、納税に対する誠実な意思が認められない場合には、財産の差押えや公売等の滞納処分を適時・適切に実施することとしています。

〜 大口・悪質滞納事案に対する厳正かつ毅然とした対応 〜

 大口・悪質滞納事案の滞納整理に当たっては、捜索や差押え、公売等の滞納処分を適時・適切に実施するなど、厳正かつ毅然とした対応を行っています。
 また、財産の隠ぺい等により滞納処分の執行を免れようとする特に悪質な事案については、滞納処分免脱罪1の告発を行うなど、特に厳正に対処しています。

  • 1 差押えなどの滞納処分を免れる目的で、財産の隠ぺいなどを行った場合は、3年以下の懲役又は250万円以下の罰金が科されます。

◎ 令和元(2019)年度告発事例
売掛金の振込先を変更することにより滞納処分を免れた事案を告発

滞納処分を免れる目的で、妻を名目上の代表取締役とする実体のない会社を設立して、滞納者の売掛金をこの会社の預金口座に振り込ませることにより財産を隠ぺいしました。

〜 処理困難事案に対する組織的な対応等 〜

 複雑な取引や財産の移転を仮装しているような、処理が困難な事案の滞納整理については、1広域運営による支援や適時のプロジェクトチームの編成による滞納処分の実施など、事案の解明に必要十分な人員を確保して組織的な対応を行うとともに、2国が原告となって詐害行為取消訴訟2等の原告訴訟を提起するなど、法的手段を積極的に活用した滞納整理に取り組んでいます。

  • 2 詐害行為取消訴訟とは、滞納者と第三者との間における債権者(国)を害する財産に関する行為(詐害行為)の効力を否定して、滞納者から離脱した財産をその第三者から取り戻して滞納者に復帰させるための訴訟をいいます(国税通則法第42条、民法第424条参照)。

〜 消費税滞納事案の確実な処理 〜

 消費税を含む滞納については、新規発生時の早期着手を徹底するなど、確実な処理を行い、滞納残高の圧縮に取り組んでいます。

消費税の滞納整理中のものの額の推移

消費税の滞納整理中のものの額の推移
  • ※1 実数値は、滞納整理中のものの額を示します。
  • ※2 地方消費税を除いています。

(3)集中電話催告センター室

〜 効果的・効率的な電話催告の実施 〜

 新規に発生した滞納事案は、集中電話催告センター室(納税コールセンター)で幅広く所掌して、システムを活用した早期かつ集中的な電話催告等を実施することにより、効果的・効率的な滞納整理を行っています。
 こうした取組により、平成30(2018)年7月から令和元(2019)年6月末までの1 年間で、催告対象約82 万者のうち、約59万者(71.5%)が完結し、約11万者(13.6%)が納付誓約に至っています。

集中電話催告センター室の滞納整理状況

平成30(2018)年7月から令和元(2019)年6月末までに電話催告の対象となった823,743者のうち、完結に至ったのは589,322者となっています。

集中電話催告センター室の滞納整理状況

(4)インターネット公売

〜 インターネット公売で約2,200物件を売却 〜

 国税庁では、滞納処分により差し押さえた財産について、公売を実施しています。
 公売には、入札又は競り売り(オークション)による方法がありますが、このうち、民間のオークションサイトを利用した方法として、インターネット公売を実施しています。インターネット公売は、参加者が公売会場に出向く必要がなく、公売の期間中は、24時間インターネット上で買受申込みをすることができるなど利便性が高く、より多くの参加者を募ることができるため、差し押さえた財産の高価・有利な売却に役立っています。
 令和元(2019)年度は、6回のインターネット公売を実施しました。その結果、延べ約1万人の方の参加があり、自動車、宝飾品、不動産など約2,200 物件が売却され、その売却総額は約4.6億円となっています。

令和元(2019)年度にインターネット公売で売却した財産の例

令和元(2019)年度にインターネット公売で売却した財産の例

(5)的確かつ効率的な債権債務の管理

〜 システムの高度活用で的確かつ迅速な処理を実施 〜

 納税申告や還付申告によって大量に発生する国税の債権債務の管理業務をシステムを有効活用して的確かつ効率的に処理を行っています。
 また、年間約4,304 万件の税金の納付を効率的に処理するため、日本銀行における納付書のOCR処理(光学式文字認識処理)3や、所得税と個人事業者の消費税における振替納税4に加え、電子納税やダイレクト納付を導入して事務作業の合理化を図っています。還付金の支払についても、振込処理をオンライン化して効率的かつ迅速な処理に努めています。

  • 3 「OCR処理(光学式文字認識処理)」とは、納付書に記載された文字を電子データに変換することをいい、この電子データにより日本銀行と国税庁の間の連絡を行うことで、情報伝達の合理化・ペーパーレス化を図ることができます。
  • 4 振替納税は、納税者があらかじめ指定した金融機関に、税務署から納付書を送付して預貯金口座から引き落として納付するという方法によって行われます。納付書を大量に金融機関に送付する必要がある場合には、この事務を効率的に行うため、金融機関に口座振替のためのデータを送付し、金融機関において口座振替の処理を行うとともに、その結果もデータで返却してもらうという処理を行います。