第1節 概要

 申告納税制度の下では、全ての納税者が租税の意義を理解し、その義務を自覚するとともに、税法に関する正しい知識を会得して、自ら進んで適正な申告と納税を履行することが求められている。しかし、納税者の多くは税に関する知識が必ずしも十分ではないため、これらの納税者が、いつでも気軽に質問や相談ができるような納税者援助のための体制が必要である。
 現在、各国税局・沖縄国税事務所(以下この章において「国税局(所)」という。)に設置されている税務相談室は、このような納税者からの一般的な質問・相談に対応する部署として設けられており、税務相談事務は、税務行政を適正かつ円滑に運営するために重要な役割を果たしている。
 税務相談体制については、税に関する一般的な相談について、平成18年11月に仙台、東京、福岡の3国税局20税務署を皮切りに、国税局(所)ごとに設置する電話相談センターで集中的に受け付ける取組を進め、平成20年11月にこれを全国の税務署に拡大した。
 このような電話相談体制の整備のほか、タックスアンサーの充実、聴覚障害者等電子メール相談窓口の開設など、近年のICTの進展をはじめとする社会環境の変化に対応して税務相談体制の充実を図っている。
 また、具体的に書類や事業内容を確認する必要がある場合など、電話での回答が困難な相談内容については、所轄の税務署において面接による相談を受けている。面接相談については、納税者を待たせることのないよう、電話等で事前に相談日時等を予約する事前予約制を実施している。

第2節 税務相談

1 電話相談

 税務相談については、平成18年度以降、国税局(所)に設置された電話相談センターで制度や法令等の解釈についての情報提供及び手続案内などの技術的助言にとどまる一般相談を集中的に受け付ける「税務相談の集中化」に順次取り組み、平成20年度中に完了した。電話相談センターにおいては、集中的に配置された税務相談官1が、原則として税目別に対応するため、より質の高い迅速な回答が可能となり、納税者利便の向上につながっている。
 なお、税務相談室における相談受理件数は、「税務相談の集中化」完了年である平成20年度は488万件であったが、以降毎年500万件台で推移し、平成30年度は544万件であった。
 電話相談センターに寄せられる相談件数は11月から3月にかけて大きく増加することから、5年間の市場化テストを経て、平成28年度以降、東京国税局及び関東信越国税局の電話相談センターにおける電話相談業務のうち、外部オペレータによる対応が可能な業務について民間事業者に業務委託を実施している。この外部オペレータによる対応件数は、平成30年度で約20万件であり、税務相談について各税目を担当する税務相談官への転送や、税務署の開庁時間・場所等の税務相談に該当しない問合せへの回答をする窓口として機能し、税務相談官が税務相談に専念できる環境醸成に寄与している。
 また、平成24年度には、相談件数が多く電話がつながりにくい地域(国税局(所))の納税者利便の向上、税務相談官の事務負担の均等化を図ることを目的とし、局間転送を開始した。この局間転送も災害等の特殊事情も考慮の上、税務相談官1人当たりの電話受理本数に多寡が生じないよう配意して11月から3月に実施している。
 なお、1月から3月中旬までの間については、所得税及び復興特別所得税や個人事業者に係る消費税及び地方消費税の確定申告に関する相談件数が増加することから、確定申告に関する一般的な質問や相談に対応するための専門窓口として「確定申告電話相談センター」を開設し、納税者のニーズに適切に対応するとともに、税務署における電話相談業務の削減を図っている。

脚注

  • 1 税務相談官の定員は、令和元年6月現在で630名となっている。

2 タックスアンサー

 タックスアンサーは、簡易定型的な税の情報提供窓口として昭和62年に導入され、税に関する簡易で定型的な質問に対する回答を電話音声、ファクシミリ及びインターネットにより情報提供を行っていたところであるが、電話音声及びファクシミリについては、インターネットの普及に伴い、その利用件数が急激に減少してきたことから、平成21年11月をもって設置を終了し、令和元年6月現在はホームページのコンテンツとしてのみ情報提供をしている。
 毎年、税制改正に伴う改訂や、実際に税務相談官が対応した相談内容を随時追加するなど、関係各課との連携を図りつつ、その内容の整備・充実に取り組むとともに、電話相談センターへ電話相談をした納税者に対しても、以後自己解決できるようタックスアンサーへの誘導に努めている。
 なお、タックスアンサーのアクセス件数は、平成20年度では、3,209万件であったが、スマートフォン等の普及もあり、平成29年度には過去最高の8,666万件となった。
 また、増加する在留外国人のニーズに対応するため、平成29年度には、タックスアンサーの利用件数や英語による相談の多い項目について、タックスアンサー英語版の拡充を実施した。平成28年度には5項目であったタックスアンサー英語版は、平成29年12月に25項目となり、タックスアンサー英語版の利用件数も、平成28年度4万5,605件、平成29年度8万907件、平成30年度12万1,028件と増加した。

3 e-Tax・作成コーナーヘルプデスク

 平成16年2月からのe-Taxの導入を見据え、e-Taxの利用者からe-Taxを利用するための手続や、国税庁が提供するソフトウェアの利用に係るパソコン操作などに関する問合せに対応する専門窓口として、平成15年8月、「e-Taxヘルプデスク」を設置した。
 平成16年1月から外部委託のオペレータによる電話応答事務を開始し、その後、平成17年1月からは「確定申告書等作成コーナー」に関する問合せを対象業務に加え、「e-Tax・作成コーナーヘルプデスク」として対応している。
 ヘルプデスクへの問合せ件数については、平成21年度は約22万件であったが、e-Taxや作成コーナーの利用拡大に伴い、平成30年度は約30万件まで拡大している。

4 チャットボットの導入

 更なる納税者ニーズへの対応、電話相談事務の効率化等を図るため、令和2年1月に、土日、夜間等の日時にとらわれない相談チャネルとして国税庁ホームページへチャットボットを試験導入することが予定されている。
 試験導入では給与所得者及び年金受給者の確定申告に係る簡易な質問に対応し、相談事例の蓄積・学習を繰り返しながら順次対応範囲を拡大することとなっている。

第3節 苦情の処理

 納税者等の権利・利益の保護及び税務行政に対する信頼確保のためには、納税者等から寄せられた苦情について、納税者等の視点に立って適切に対応することが不可欠である。この認識の下に、苦情の処理に当たっては、納税者の視点に立って、迅速かつ的確な対応に努めている。
 また、平成13年7月に苦情の処理を専担とする納税者支援調整官を設置し、各国税局のほか、主要税務署に派遣配置している。納税者支援調整官は、税務一般に関する納税者からの苦情に関する事務のうち、納税者が適正かつ円滑に納税義務を履行するために必要な助言及び教示並びに調整に関する事務を行っている。
 なお、平成14事務年度より、「国税庁が達成すべき目標に対する実績の評価」において「苦情の3日以内の処理割合」の目標を設定し(平成16事務年度以降は90%)、苦情の迅速な処理に取り組んでおり、平成27年度以降は、90%以上の処理割合を達成している。