第1節 概要

 租税ほ脱などの犯則があった場合又は犯則があると認められる場合には、早期に徹底した調査を行わなければ犯則事実の把握が困難となることから、国税通則法第7章の2(国税の調査)に定める通常の税務調査とは全く異なる証拠の収集確保などを行う犯則事件としての調査が必要である。
 従来から、国税(関税、とん税、特別とん税を除く。以下同じ。)に関する犯則事件の調査及び処分に関する手続(以下「国税犯則調査手続」という。)については、国税犯則取締法(明治33年法律第67号)に規定されていた。主な犯則調査手続として、直接国税については、検察官への告発を前提とする調査及び処分に関する手続があるほか、間接国税については、通告処分の制度が設けられている。
 この国税犯則取締法については、昭和23年を最後に大幅な改正がなされておらず、条文が片仮名・文語体であるなど表現形式が現代離れしているばかりではなく、内容的にも同じ性格の関税法に基づく犯則調査手続の諸規定と比較して不備な点が少なからず認められるとの指摘がなされていた。
 これに加えて、近年、電子メールの活用や電子データの外部サーバへの保管など経済活動のICT化が進展する中にあって、犯則嫌疑者の故意や脱税金額の立証等に必要な客観的証拠の収集が一層困難になっているとの指摘もなされていた。
 そうした中、平成28年10月の政府税制調査会において、国税犯則調査手続について経済社会の構造変化に対応した見直しを行うべきとの問題提起がなされ、外部有識者も交えた検討が行われた。その検討の報告では、刑事訴訟法を参考として電磁的記録の証拠収集手続の整備を行うことや、関税法とバランスをとる観点から規定の現代語化を含めた所要の見直しが必要とされ、政府税制調査会においてもこの見直し方針が了承された。
 そして、これらの国税犯則調査手続の見直しが盛り込まれた「平成29年度税制改正の大綱」が平成28年12月に閣議決定された後、税制改正法案「所得税法等の一部を改正する等の法律案」が平成29年2月に国会(第193回)に提出され、同年3月に可決・成立した。当該改正法は平成30年4月1日に施行され、国税犯則調査手続が国税通則法に編入されるとともに、国税犯則取締法が廃止された。

第2節 直接国税

1 査察制度

 我が国では、納税者が自ら正しい申告を行って税金を納付する申告納税制度を採っており、この制度を円滑に運営していくため税務調査を行っている。一般の税務調査において、納税者の申告に誤りがあれば、申告額を更正することとしているが、その調査は原則として納税者の同意を得て行う、いわゆる任意調査によっている。
 しかし、不正の手段を使って故意に税を免れた者には、正当な税を課すほかに、反社会的な行為に対する責任を追及するため、懲役や罰金を科すことが税法に定められている。このような場合、任意調査だけではその実態が把握できないため、強制的権限をもって犯罪捜査に準ずる方法で調査(犯則調査)し、その結果に基づいて検察官に告発し公訴提起を求める査察制度がある。
 査察制度の執行のため、具体的な手続が国税通則法第11章(犯則事件の調査及び処分)に定められており、その執行には各国税局・沖縄国税事務所に配置された国税査察官が当たっている。

2 国税査察官の職務

 国税査察官は、各国税局・沖縄国税事務所に約1,500人が配置されており、所得税、法人税等の悪質な脱税の摘発という重要な犯則取締事務に従事している。
 国税査察官は、税務職員ではあるが、一般の税務職員が質問検査権に基づくいわゆる課税調査を行うのに対し、査察調査を行うための特別の調査権限が与えられている。すなわち、国税査察官は、脱税の疑いがある納税者(犯則嫌疑者)について、本人、取引先等の参考人に質問し、それらの者が所持する帳簿・書類、物件等を検査し、任意に提出された物件を領置することができる。また、裁判官が発付する許可状により住居、工場、事務所等を臨検、捜索し、帳簿・書類や各種の物件を差し押さえる、いわゆる強制調査を行う権限(犯則調査権限)が与えられている。
 査察調査の手順としては、脱税の疑いのある者を発見すると、まず、脱税の規模や手口などをより具体的に確認するための内偵調査を行う。内偵調査の後、多額の脱税が見込まれ、手口も悪質と認められるなど、社会的非難に値する犯則嫌疑者について、その脱税の嫌疑事実を裁判官に説明し、許可状の交付を受ける。その許可状に基づいて強制調査に着手するが、着手に当たって各国税局・沖縄国税事務所に配置されている国税査察官は統率の取れた行動をとる。さらに、各国税局・沖縄国税事務所間で臨機に応援する体制も確立されている。強制調査の着手によって差し押さえられた帳簿・書類などは、その後の綿密な調査も加わって真実の税額の計算とその存在を立証するための証拠となる。

3 査察事務運営

 平成21年度から平成30年度までの10年間は、スマートフォンの普及をはじめとしてICT化が急速に進み、金融の分野においては、暗号資産の流通による取引形態の変化が生じるなど、査察を取り巻く環境が大きく変動した時期であった。
 このため、査察事件の脱税手段もより複雑・巧妙になり、悪質な脱税の摘発が困難な状況になったが、これらの変化に適応するため、法整備や体制強化を図りながら、時代に即した社会的に意義のある事案に取り組んできた。
(1) 脱税犯に係る法定刑の引上げ
 依然として大口・悪質な脱税が後を絶たない状況等を踏まえ、課税の適正化を図り、税制に対する信頼を確保する観点から、平成22年度税制改正において、国税に関する従来からの犯罪類型における法定刑の水準等について、他の経済犯罪の法定刑などを勘案して懲役刑の引上げ(5年から10年)等の見直しが行われた。
(2) 単純無申告ほ脱犯の創設
 電子商取引の普及等により、外国証拠金取引(FX取引)等で巨額の所得を得ながら、税を免れる故意をもって申告せず、結果的に多額の税額を免れるケースが指摘されていた。このような場合、所得秘匿のための積極的な工作を伴わないことから、いわゆる脱税犯として処罰することができず、秩序犯である単純無申告犯(故意の申告書不提出犯)として、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金として処罰されるに過ぎなかった。
 平成23年度税制改正において、悪質性の高い無申告事案に厳正に対応する観点から、脱税犯と単純無申告犯との間に位置する犯罪類型として、税を免れる故意を持って申告書を提出せず、税を免れた者について新たに脱税犯の一種として処罰する規定(単純無申告ほ脱犯(故意の申告書不提出犯))が創設された(所得税法283条3項等)。
(3) 消費税の不正受還付犯の未遂罪の創設
 消費税の不正還付事案が増加傾向にある中、消費税の不正受還付罪について、未遂罪処罰規定がないことから、還付金の受領がない限り、消費税の不正受還付罪の対象とならない状況となっていた。このような状況において、悪質性の高い消費税の不正受還付事案に厳正に対処する観点から、平成23年度税制改正において、消費税の不正受還付犯(消費税法64条1項二号)の未遂罪を処罰する規定(同法64条2項)が創設された。
(4) 犯則調査手続の見直し
 平成29年度税制改正においては、査察制度創設以来、約70年ぶりに犯則事件の調査手続の大幅な見直しが行われ、平成30年4月に改正法が施行された。
(5) 体制整備
 体制面では、経済・社会の国際化・ICT化の進展を背景として、有効な資料・情報の収集体制及び調査体制の整備・充実が急務であったことから、査察広域課を平成24年度に東京国税局査察部に、平成25年度に大阪国税局査察部にそれぞれ設置した。
(6) 事務運営
 これらの法律・体制両面の整備を図りながら、事務運営の観点からは、現下の経済社会情勢を踏まえて、特に、消費税の輸出免税制度などを利用した消費税受還付事案、自己の所得を秘匿して申告を行わない無申告ほ脱事案、更に、国際事案や市場が拡大する分野における事案など社会的波及効果の高いと見込まれる事案を重点事案と位置づけ、積極的に取り組んだ。
 事案の立件・処理に当たっては、租税条約等に基づく外国税務当局との情報交換制度やデジタルフォレンジックツール(データの証拠保全・解析)を活用するなどして、経済取引等の国際化及びICT化に的確に対応し、効果的・効率的な調査を実施した。
 また、平成29年度から、租税犯罪の一般予防及び一般の納税者の納税道義の向上を図るとともに、査察の取組について納税者の理解を得ることにより税務行政への信頼を確保することを目的として、査察調査により告発した事件について公表を開始した。

4 査察事績

(1) 査察着手と処理状況
 平成21年度から平成30年度までの10年間の査察事績をみると、平成11年度から20年度までの脱税総額は200億円台から300億円台で推移していたところ、平成25年度には140億円台となり、その後は同水準で推移している。着手・処理件数については、年間160件台から200件台で推移している。また、告発率(処理件数に占める告発件数の割合)は、60%台から70%台で推移している。

査察事件の処理実績の推移

査察事件の処理実績の推移

(2) 重点事案の告発状況
 前記(1)の査察着手と処理状況からは、査察事績の減少傾向がみられるが、査察事務運営に当たっては、社会的に非難されるべき悪質な脱税を摘発し、その一罰百戒の効果を最大化する観点から、社会的波及効果の高いと見込まれる事案を重点的に取り組むこととしている。
 近年では、現下の経済社会情勢を踏まえて、消費税受還付事案、無申告ほ脱事案、国際事案のほか、市場が拡大する分野における事案などの社会的波及効果の高いと見込まれる事案を重点事案として積極的に取り組んでいる。
 平成21年度から平成30年度までの10年間の告発事件の業種や脱税手段の態様をみると、その時々の経済社会情勢を反映していることがうかがえる。前半の平成21年度から平成22年度は、リーマンショック前の都市部における地価高騰の影響を受けた不動産取引に関連する事案が多く見受けられたほか、平成22年度には、技能習得を目的とした外国人研修生を日本企業に斡旋する事業者や過払金返還請求等の債務整理を行う認定司法書士の告発がみられた。この頃から、海外のタックスヘイブン国の法人を利用するなどの国際事案や自己の所得を隠して一切申告しない無申告ほ脱事案が目立つようになってくる。また、国際事案に関連して消費税の輸出免税制度を悪用した不正還付事案も多く見られた。
 このような状況の中、悪質性の高い無申告や消費税の不正受還付に厳正に対処するため、平成23年度の税制改正で創設された「単純無申告ほ脱犯」及び「消費税不正受還付の未遂犯」について、平成26年度にこれらの罰則を適用した事案を初めて告発している。
 平成23年頃からは、出会い系サイト等の情報提供サービス事業者の脱税が相次ぎ、平成24年度には複数の納税者に脱税を持ち掛け成功報酬を得ていた脱税請負人を摘発している。
 平成26年度から平成27年度には、開運グッズ販売や高額の祈祷サービスを提供する「開運商法」、会員が新規会員を勧誘して商品販売を行う「マルチ商法」や「投資詐欺」など、社会問題化した事業者の脱税を摘発したほか、特定危険指定暴力団に対する上納金に係る所得税を脱税したとして同暴力団トップを摘発した。
 平成28年度から平成29年度には、東日本大震災からの復興や太陽光等の再生可能エネルギーの導入拡大を図る制度導入を背景に、急速に市場が拡大した震災復興や太陽光発電等に関連する事案などに積極的に取り組み、多数の事案を告発した。
 また、平成28年度以降、消費税事案、特に輸出免税制度を悪用するなどの消費税受還付事案が増加し、平成30年度には過去10年間で最も多い16件を告発している。
 平成30年度は、近年の訪日外国人旅行者(インバウンド)や輸出物品販売場の許可を受けた免税店の増加を背景に、外国人旅行者への商品販売を装った消費税受還付事案を告発したほか、無申告ほ脱事案、国際事案など、特に悪質な脱税事案を多数告発した。
 このように、査察ではその時々の経済社会情勢に即して、社会的に非難されるべき事案を的確に摘発してきた。

消費税受還付事案、無申告ほ脱事案及び国際事案の告発件数の推移(最近10年間)

(単位:件)
年度
項目
平成
21

22

23

24

25

26

27

28

29

30
消費税受還付事案           内1 内4 内2 内0 内8
10 8 6 5 8 5 6 11 12 16
無申告ほ脱事案           内2 内1 内6 内8 内10
22 34 21 19 14 11 13 17 21 18
国際事案 25 30 20 17 16 21 28 21 15 20
  • (注)1 消費税受還付事案の内書きは「未遂犯」、無申告ほ脱事案の内書きは「単純無申告ほ脱犯」の適用事案を示す。
  • 2 同一事案であっても複数の項目に該当する事案は重複してカウントしている。

5 査察事件の判決状況

 国税査察官は、査察調査によって嫌疑事実を解明し、その結果悪質な脱税で刑事罰に値するものについて、検察官に告発し刑事訴追を求める。その後、検察官において、改めて刑事訴訟法の手続により捜査を行い、起訴の可否を決定する。なお、告発事件のほぼ100%が起訴されている。
 平成21年度から平成30年度までの10年間に出された一審判決1,275件の内、1,271件に有罪判決が出された。
 脱税に対する刑罰には、犯則行為者に対する行為罰(懲役、罰金又はその併科)と、いわゆる両罰規定による法人(法人税事案)又は事業主(所得税事案で事業主以外の者が犯則行為者の場合)等に対する責任罰(罰金)があるが、平成21年度から平成30年度までの10年間に出された有罪判決の平均をみると、行為罰では1人当たり、懲役刑が14.4か月、罰金刑が1,900万円であり、また、責任罰では1社(人)当たり1,400万円の罰金刑となっている。懲役刑には大部分が執行猶予が付されているが、この10年間に脱税犯のみの事件について、48人に実刑判決が言い渡されている。実刑判決は、戦後の経済混乱がまだ収まり切っていない昭和24、25年当時を別とすれば、昭和55年までほとんど言い渡されていなかったが、こうした最近の実刑判決の出現は、税に対する国民の強い関心を反映するものであり、脱税が反社会的な犯罪であるという認識が、裁判所の判断にも表われてきていることを示すものといえよう。

査察事件の一審判決の状況

項目
年度
判件決数
有罪件数
有罪率
(②/①)
実刑判決人数
1件当たり犯則税額
1人当たり懲役月数
1人(社)当たり罰金額
平成 百万円 百万円 百万円
21 141 141 100.0 7 86 14.6 17
22              
152 152 100.0 6 80 13.8 20
23 内12 内12   内6      
150 150 100.0 15 120 15.3 23
24 内2 内2        
120 119 99.2 3 76 13.0 16
25 内17 内17   内9      
116 115 99.1 9 52 12.9 12
26 内8 内8   内3      
98 96 98.0 11 69 15.9 16
27 内12 内12   内1      
133 133 100.0 2 64 15.2 15
28 内12 内12   内9      
100 100 100.0 14 59 13.9 14
29 内5 内5   内4      
143 143 100.0 8 62 14.7 15
30 内5 内5   内2      
122 122 100.0 7 61 14.3 14
  • (注)1 内書は他の犯罪との併合事件を示している。
  • 2 平成22年度以前及び③~⑤は他の犯罪との併合事件を除いてカウントしている。

実刑判決の件数・人数

(単位:件、人)

 
区分
昭和
24~25

26~54
小計
55~63
平成元~10
11~20
最近10年間 合計
21 22 23 24 25 26 27 28 29 30
実刑判決人数 6 2 8 93 174 105 7 6 9 3 0 8 1 5 4 5 428
実刑判決件数 6 2 8 77 162 92 7 6 9 3 0 6 1 4 3 7 385

第3節 間接国税

1 犯則取締制度

 間接国税とは、消費税(賦課課税方式が適用される輸入取引に係るものに限る。)、酒税、たばこ税、たばこ特別税、揮発油税、地方揮発油税、石油ガス税及び石油石炭税をいう。
 間接国税においても、そのほとんどについて申告納税制度を採用しているが、必ずしも申告の内容が適正なものとは限らないことから、個別指導や団体指導、周知広報のほか、一般の税務調査を行い、申告の内容に誤りがあれば、申告額を是正することとしている。
 しかし、不正の手段を使って故意に税を免れた者には、正当な税を課すほかに、懲役や罰金を科すことが税法に定められており、このような場合、直接国税と同様に犯則調査を行い、その結果に基づいて検察官に告発し公訴提起等を求める犯則取締制度がある。

2 通告処分制度

 直接国税及び申告納税方式による間接国税に関する犯則事件にあっては、当該職員が調査によって犯則があると思料するときは、全て告発の手続を採ることとなっているのに対して、申告納税方式によるものを除く間接国税に関する犯則事件にあっては、国税局長又は税務署長が犯則の心証を得た場合は、情状が懲役の刑に処すべきものと認められるなど直ちに告発すべきものを除き、通告処分を行うこととされている。
 この通告処分とは、国税局長又は税務署長が罰金に相当する金額等を納付すべきことを犯則者に通告する処分をいう。
 これを履行するかどうかは犯則者の任意であり、通告を受けた犯則者がその内容である罰金相当額等財産上の負担を履行したときは、当該犯則事件について訴えを提起することができないが、犯則者が、通告の内容を履行しないときは、通告不履行による告発の手続を採ることとされている。
 なお、平成30年3月31日以前は、間接国税に関する犯則事件については、その税額の確定の方式にかかわらず、通告処分の対象とされていたが、平成29年度税制改正により国税犯則調査手続が国税通則法に編入されたことに併せて、申告納税方式によるものについては、通告処分の対象から除かれている。

3 犯則取締りの状況

(1) 犯則事件の処理状況(酒税関係を除く。)
 間接国税の犯則取締事務については、平成13年に発生した揮発油税に関する大規模な犯則事件を契機として、国税局の調査部門(間接諸税担当)に専担者を配置して体制の整備を図っており、平成24年には、たばこ税に関して初の犯則調査を行い、翌年、検察官に告発している。
 なお、平成29年度改正により、間接国税に関する犯則事件のうち申告納税方式によるものが通告処分の対象から除かれたことにより、今後は、犯則事件としての調査件数の減少が見込まれることから、平成30年に、当該専担者を国税局消費税課の実査官に配置換えし、税務署の不正見込事案や調査困難事案に従事させるほか、犯則事件が発生した場合には、その調査事務を指導できるよう体制を見直している。
(2) 酒税関係(無免許製造)犯則事件の処理状況
イ 明治32年に、自家用酒類の製造は全面的に禁止され、明治・大正時代において厳重な取締りが継続されたにもかかわらず、酒類の密造はかなり広範囲にわたって行われたが、昭和に入って、取締りの徹底と密造に対する認識の向上とともに漸次改善された。
ロ しかし、第2次世界大戦後の食料事情の窮迫による酒類の供給不足、酒類価格の高騰、社会の混乱に伴う国民道義の低下などにより、販売を目的とした大規模な集団密造地域が出現し、大掛りな密造が激増する等、まれにみる酒類密造時代となった。
 このような情勢から、各国税局間税部に監視課が設置され、密造酒の取締りの強化を図るとともに密造防止の広報活動として秋の密造最盛期に「酒類密造防止宣伝週間」を設けて行う等、密造撲滅のための啓もう宣伝を全国的に実施した。
ハ 昭和30年代後半に入ると、経済の高度成長に伴う国民生活の向上に加え、数次にわたって酒税が減税されたこと、食糧事情の好転により酒類の生産量が著しく増加したこと、更に、消費者が自家用として梅酒、いちご酒などを造ることが認められたこともあって酒類の密造は逐年減少の傾向に向かい、酒類の密造はおおむね壊滅したと認められる状態に至っている。

4 今後の展望【酒税関係】

 酒類の密造については、おおむね壊滅したと認められる状態に至っているものの、他方で、ICTの進展及びインターネットの普及により、平成18年以降、インターネットオークション等を利用して、酒類販売業免許を受けずに酒類の販売業をする事例が増加している。
 このような状況を是正するために、各国税局酒税課等において情報収集を行うとともに、無免許酒類販売業の撲滅に向け、厳正な取締りを行っていくこととしている。