会長
 続いてお願いします。

調査査察部長
 よろしゅうございますでしょうか。調査査察部長の金井でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 私のほうからは経済・社会の国際化への対応という議題につきまして御説明させていただきたいと思います。
 私ども国税庁、経済・社会の国際化の進展に対応いたしまして、海外取引調査の充実を図りますとともに、国際的な執行協力、この推進を図ってきておるところでございます。
 委員の皆様方御承知のように、内外企業の国境を越えましての事業活動が活発化しておりまして、取引内容も複雑化、多様化してきておるというところでございます。先般の、特に金融分野におけます規制緩和───いわゆる金融ビックバンでございますが、これによりまして国際的な資本の移動の自由化等、これを背景といたしまして企業活動がますますグローバル化していく傾向にあるわけでございます。
 近年、このような環境の変化を背景といたしまして、国際的な経済活動につきまして、各国の課税権が衝突する、あるいは課税の空白が生ずる、そのような可能性が高くなってきておるわけでございます。特にいわゆるタックス・ヘイブンと呼ばれる国や地域に設立いたしました子会社に所得を留保いたしまして親会社に配当を行わない場合、その親会社の本国でも子会社の国でも所得に対する課税が行われないということになるわけでございます。このような租税回避が多くなりますれば、我が国の課税ベースが侵食され、課税の公平性・中立性が損なわれるおそれが高くなるわけでございます。
 これらの点につきまして各国の課税当局も重大な関心を寄せておりまして、タックス・ヘイブンや経済活動を国外から誘致するための優遇税制、いわゆる有害な税の競争への対応、これらにつきましての国際課税ルールの確立につきまして、OECD等の国際的な場において議論が行われているところでございます。お手元の資料の23ページをお開きいただきますと、このOECDの「有害な税の競争」報告書、この概要をつけさせていただいておるところでございます。
 このようなもとで、私ども海外取引調査の充実ということで、各種研究を初めといたします人材の育成、それから組織の整備、そして調査体制の工夫などに努めまして、国際的租税回避行為の解明等に積極的に取り組んでいるところでございます。
 ただいま申し上げましたように、近年、企業の中にはタックス・ヘイブン等を巧みに利用いたしましてグループ全体で租税負担を最小限に抑える、そして、そのため全世界規模でタックス・プランニングを行うというようなところがあるわけでございます。このようなタックス・プランニングにつきましては、国際課税の専担者を中心に取引の実態解明に努めるなど、海外取引調査の一層の充実を図るということにしておるわけでございます。
 また、このような国際課税にかかわります課税処分の適否につきまして、この国税審議会の場で御審議をいただくこともあろうかと存じますが、その節にはどうかよろしくお願い申し上げます。
 次に、国際的な執行協力の推進ということでございますが、昨今、多国籍企業等、納税者の各国におけます納税行動が多様化してきておると申し上げましたところでございますが、したがいまして、一国の税制・税務行政のあり方というものが他国の税制や税務行政に大きな影響を与えるようになってきておるわけでございます。したがいまして、各国の税務当局におきましては、お互いに課題を共有しまして執行協力を強化していくということが強く求められているところでございます。
 現在、我が国は55カ国との間で租税条約を締結しておりまして、国際取引を利用しました脱税、租税回避の防止、二重課税への対処に取り組んでおるところでございます。また、各種の国際会議等を通じまして、国際課税のあり方や共通の関心事項につきましてお互い意見交換を行いまして、可能な限り共同歩調をとるように努めておるところでございます。また、これらの租税条約のうち、スイスとの条約を除きまして情報交換に関します規定が設けられておるところでございまして、国際取引を利用しました脱税や租税回避の防止のための情報交換が行われておるところでございます。
 また、政府間の関係でございますが、国際的な二重課税が生じた場合等租税条約の規定に適合しないと考えられる課税が行われました場合等には、外国税務当局との相互協議、これを実施いたしまして、問題の解決を図っているところでございます。この相互協議の件数、年々増加しておるところでございまして、平成11年7月に国税庁に相互協議室を新設いたしまして、相互協議体制の一層の充実を図っているところでございます。
 最後に、国税庁が参加しております幾つかの国際会議等を申し上げたいと思います。まず一つは環太平洋税務長官会議───通称PATAと申しておりますが、日本、アメリカ、カナダ、オーストラリアの4カ国が参加しておるものでございます。それからアジア税務長官会議───SGATARと言っておりますが、これはアジア・太平洋の国・地域が参加しておるものでございます。そして、先ほど出てまいりましたけれども先進30カ国が参加しておりますOECDの租税委員会と挙げられるものでございます。以上の場を通じまして国際協力の推進を図っておるところでございます。
 以上でございます。どうかよろしくお願いいたします。

会長
 それでは、続いて……

徴収部長
 徴収部長の井野と申しますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 私のほうからは滞納圧縮の対応について御説明申し上げたいと思いますが、その前に、国税審査分科会に関連して申し上げますと、徴収関係の審査請求の発生件数でございますが、差し押さえなどの滞納処分とか督促の取り消しを求めるものを中心といたしまして、11年度におきまして268件となっております。ちなみにこれは課税関係と合わせた全体に占める割合というのが8.7%となっているところでございます。資料はございませんけれども、一応、口頭で御報告申し上げさせていただきたいと思います。
 それでは、本来の滞納圧縮の対応について御説明いたします。恐縮でございますが、資料の24ページをお開きいただきたいと思います。
 ここのグラフ、表を御覧いただきますと、全税目の租税滞納状況についてでございますが、上のほうのグラフでございますが、最近の10年余りの推移を示しているものでございます。棒グラフのうち色の濃いほうが新規発生滞納額、色の薄いほうが整理済額、折れ線グラフが滞納整理中のものの額───要するに滞納残高でございますが、の額を示しております。平成元年度以降新規発生滞納額が処理額を上回ってきたことから、滞納整理中のものの額は平成10年度まで、御覧いただきますと毎年増加してきております。このため、全庁的に滞納の圧縮に取り組んできたところでございます。その結果でございますが、下のグラフにも示しているように、滞納整理中のものの額でございますが、これが11年度は対前年比でマイナス1.7%となっております。実にこれは昭和39年度以来35年ぶりに前年を下回ったということでございます。
 次に、25ページの消費税の租税滞納状況のグラフ等を御覧いただきたいと思います。この上のほうのグラフを見ていただくとわかるわけでございますが、新規発生滞納額が特に9年度、10年度に、景気低迷とか税率引き上げ等もございまして25%を超える大幅な伸びとなりました。また、発生いたしました滞納に対しましては整理の促進に努めてまいりましたが、整理済額が新規発生滞納額に追いつかなかったことから、滞納整理中のものの額は毎年増加しておりました。下の滞納整理中のものの額の対前年比のグラフを見てみますと、特に9年度、10年度におきましては約20%の大幅な伸びとなっておりましたが、このような状況を踏まえまして全庁的に滞納の圧縮に取り組んでまいりました。その結果でございますが、11年度におきましては対前年比2.9%増と、消費税導入以来最も低い伸びにとどめることができました。
 そういうことになっているわけですが、次に消費税滞納に対する取り組みについて御説明申し上げたいと思います。26ページをお開きいただきたいと思います。
 これは、滞納の未然防止と、それから滞納となったものの整理促進の2つにつきまして、主な施策を掲げさせていただいております。
 まず、未然防止策について御説明申し上げたいと思います。項目を主なものでございますが5つほど掲げてございます。その中で特にコメントをいたしたいのは三点目の○のところでございますが、国及び地方公共団体に対しまして、入札参加資格審査に際し、消費税納税証明書の活用を依頼してきております。その結果でございますが、実施予定のものも含めましてすべての国の機関及び地方公共団体から協力をいただいております。
 それから4つ目のところでございますが、納税貯蓄組合等関係民間団体に対しまして納税資金の備蓄の推進について協力要請を行ってまいりました。その結果でございますが、本年1月末現在、全国354の金融機関におきまして消費税積立預金等が商品化され、納税資金の備蓄環境の整備の進展が見られるところであります。
 なお、消費税滞納が高水準にあることにつきましては、納付回数が年1回、2回又は4回であるということによりまして、当局による納付しょうよう等の機会も限られており、その間、納付すべき消費税分が運転資金に回されやすくなることもその背景にあるというふうに考えているところでございます。
 そこで消費税の滞納未然防止の観点から制度上の手当てといたしまして、中小事業者に一定の配慮をしつつ納付回数を毎月に増加するということにつきまして主税局に要望しているところでございます。残念ながらまだ実現していないわけでございますが、そういったこともやっております。
 それから、滞納となったものについての整理促進策でございますが、2つ掲げてございます。1つでございますが、消費税滞納に対しましては他の税目よりも優先的に処理するなどいたしまして、早期かつ確実な徴収に努めているところでございます。また、納付に誠意が認められない滞納者に対しましては法律に基づいた手順を踏んだ上で財産の差押えを行うなど、厳正な滞納整理を実施しているところでございます。
 今後ともこのような施策を一層充実してまいりまして、滞納の圧縮に向けて取り組んでまいりたいと考えているところでございます。
 次に、集中電話催告システムについて御説明申し上げます。 27ページを御覧いただきたいと思います。
 現在の徴収事務を見てみますと、大量に発生しております少額滞納事案を中心に職員一人当たりの滞納人員が増加している状況にあります。そのために、効率的な件数処理と深度ある滞納整理とを両立させまして、全体として効果的・効率的な滞納整理を遂行していくことが課題となっているところでございます。
 そこで、大量に発生する少額滞納事案の処理・促進を図る観点から滞納発生後初期段階に集中的処理を行う方策といたしまして、最新のコンピュータ技術による集中した電話催告システムを導入することを検討しており、昨年5月以降、一部の税務署で試行実施しているところでございます。
 具体的に申し上げますと、システムで保有する電話番号情報に基づきましてコンピュータが滞納者に自動的に電話をかけ、その電話に滞納者が応答した場合には空いている担当者に電話をつなぐとともに、滞納に関する情報を端末機画面に表示いたしまして、担当者がその画面を見ながら催告を行うものでございます。今後システム開発を行うとともに、法令面、運営面等の検討を行った上で、平成14年度に一部の国税局で実施する予定になっているところでございます。
 以上でございます。

会長
 続いて。

審議官
 お酒のほうも担当させていただいております審議官の塚原でございます。
 酒類の表示基準の制定などの法定審議事項も御審議いただきますので、酒類業界を取り巻く現状について御理解いただくということも重要だと考えますので、私のほうから独立行政法人酒類総合研究所の設立、それから、酒類小売業免許の規制緩和といった酒類行政を巡る最近の動きについて御説明を申し上げたいと思います。資料は28ページを御覧いただきたいと思います。
 まず、独立行政法人酒類総合研究所についてでございますが、「醸造研究所」と言っておりました国税庁のこの研究機関が、4月1日から独立行政法人として新たなスタートを切ったところでございます。
 従来から酒類の醸造技術についての研究を伝統的にやってきているところでございますが、従来の研究業務を引き続き実施していくとともに、この長年の研究ノウハウの蓄積を生かした技術支援はもちろんのこと、酒類業界や国民のニーズを的確に把握して、例えば流通の関係者への酒類の商品知識の講習、あるいは消費者の方々へのお酒に関する教養講座の開催など、業務内容の充実に努めていくこととしているところでございます。
 この独立行政法人のさらに詳しい資料がその次の29ページに出てございますが、この29ページの右側が新しい研究所の業務の主なものでございまして、黒い星印がついている業務がただいま申し上げました流通あるいは消費者向けの業務ということで、新たに充実に努めていくとされているものでございます。
 次に資料の30ページでございますが、酒類小売業免許の規制緩和の動きについて御説明申し上げたいと思います。
 この30ページの資料にございますように、酒類小売業免許に係る需給調整規制につきましては、平成10年3月に閣議決定されました規制緩和推進3カ年計画において、人口基準については平成10年9月から段階的な緩和を着実に行い、平成15年9月1日をもって廃止する。それから、距離基準につきましては、平成12年9月1日をもって廃止するということとされていたところでございます。この閣議決定については平成11年3月あるいは平成12年3月ということで、3カ年計画の改定、再改定においても同様の内容が盛り込まれておりまして、国税庁としてはこの閣議決定に従って緩和措置を着実に実施してきていたところでございます。
 なお、昨年夏の動きといたしまして、昨年8月末に追加の閣議決定が行われまして、規制緩和を円滑に進める上での環境整備を図るために、距離基準の廃止など、昨年9月1日に実施予定の措置につきまして本年1月1日から実施するということにされております。これによりまして、昨年9月1日からスタートする予定でありました平成12年免許年度の免許事務については本年1月からスタートすることとされて、現在これに基づいた処理が進められているところでございます。
 次の31ページを御覧いただきますと、酒の小売業免許の需給調整要件についてまとめられてございます。
 最初の人口基準につきまして、小売販売地域においてこの基準に基づいた免許枠が出ない場合でも段階的な緩和を確実に実施するという目的で、既存小売店数の2%相当の免許を新規に与えるという、いわゆる2%条項によりまして、特例的な免許枠を算出・付与してきたところでございますが、距離基準の廃止、人口基準の緩和に伴う激変緩和措置として、この特例的な免許枠の計算は平成11免許年度をもって廃止するということとされたところでございます。
 この31ページの中ごろ以降、酒類小売業免許場数の推移表にございますように、小売業免許場数の推移は規制緩和に伴いまして年々増加してきているところでございまして、平成11年度末では177,482場というふうになっております。先ほども御説明申し上げました平成12免許年度の免許枠、一番下に出てございますが、これは前年の5,584件から1,386件増加して6,970枠というふうになっております。これは過去最大の免許枠というところになっております。この6,970件の免許枠に対しまして、現在提出されております申請書の数が14,319件という申請総数になっておりまして、現在これらの処理をしているところでございます。
 国税庁といたしましては、今後ともこれまでと同様、閣議決定に従った規制緩和措置を実施していくこととしているところでございます。
 最近の酒類行政を巡る動きについての御説明は以上でございます。

←前ページに戻る

次ページへつづく→