会長
 最後になりますが、税理士法です。

総務課長
 それでは、続きまして税理士法の改正の関係について御説明させていただきたいと思います。
 前回、ちょっと時間の関係で若干簡単にしか触れることができませんでしたので、全体像、その概要をもう一度お話しさせていただきたいと思います。
 まず、その前に最近の情勢でございますけれども、税理士法の一部を改正する法案につきましては、3月9日に閣議決定されまして国会に提出、参議院で先に審議することとされたわけでございます。その後、4月2日に参議院の財務金融委員会に送致されまして、同委員会におきまして4月5日に1回目の審議が行われておりまして、2回目の審議は明日予定されております。国会のことでございますので分かりませんが、順調に御審議いただければ明日の委員会で可決、翌11日に参議院の本会議で可決の可能性もあるのではないかというふうに伺っておりまして、そうなりますと、その後の衆議院ということになります。衆議院の審議日程等についてはまだ未定と聞いておりますけれども、法改正が行われることになりますと、今後、政省令の作成、あるいは通達の改正、また税理士会における会則の変更等の作業が必要になってくるわけでございます。
 そこで、税理士法改正の全体像でございますが、32ページのほうに基本的考え方と主な改正項目、図で示させていただいております。「規制緩和の要請」、「納税者利便の向上」、「信頼される税理士制度」、一応今回の見直しの視点としては、大きくこの3つが挙げられようかと思います。
 主な中身でございますが、1つは一番上に書いてございます税理士法人制度の創設、今まで法人形態の税理士業務というのは認められていなかったわけでございますが、今回、合名会社に準ずる法人という形で税理士法人が認められるということになっております。
 それから、2つ目の税理士試験制度の見直しでございますが、受験資格要件の緩和につきましては、実務経験年数5年とか3年とか、いろいろ事細かに決めておったわけですが、一律3年に短縮するなどの緩和をいたします。この関係では受験者がかなり増えてくる可能性もございます。試験科目の免除制度の見直しについては、後で若干詳しく申し上げたいと思います。
 それから3つ目の、税理士からの意見聴取制度の拡充ということでございますが、現在、申告書等に計算事項等を記載した書面を付けていただきます。税務当局が調査いたしまして、更正などを行う際に税理士の方から意見を聞くという規定になっておりますが、これを更正の際ではなくて一定の条件を満たす場合には調査の着手前にも行うという形で行っていくという意味での拡充でございます。
 それから、一番下でございますけれども、「税理士が裁判所において補佐人となる制度の創設」と書いてございますが、これからある意味で訴訟社会の方向へ進んでいくことになろうかと思いますけれども、租税に関する訴訟につきまして、補佐人として弁護士である訴訟代理人とともに出頭して陳述ができるとするものでございます。現行でも裁判所の許可を得ますと補佐人となれるという規定はあるわけでございますけれども、今回の改正は、そういう意味では裁判所の許可が不要となるという点で意義があるものでございます。
 それから、先ほど申し上げました試験科目の免除制度の見直しでございますけれども、次のページに若干細かく書いてございます。3のところでございます。
 大きく3つございまして、一つは3の(1)の学位取得等による試験科目の免除制度、これの見直しということでございます。これにつきましては、ちょっと恐縮ですが1ページ飛んで最後の35ページを御覧いただきたいと思います。修士の学位取得者に対する試験免除でございますけれども、現行、いわゆるダブルマスターと称しまして、法律学又は財政学でマスターをとる、もう一度今度は商学でマスターをとりますと両方の試験が免除されて、無試験で税理士資格が取得できるという制度になっておりますが、それが税理士試験の抜け道となっているとの批判がございますので、税法に属する科目、会計学に属する科目、それぞれ1科目は試験に合格していただく、と。
 それが1つと、それから2つ目に書いてございますように、実は今、法律学又は財政学、商学というふうな大くくりの形にしてございますので、憲法を専門にしても、刑法を専門にしても、修士論文を書けば税理士の法律学の税法に属する科目が免除になるという形になっておりまして、これもそういう意味では税理士の専門家としての立場を考えますとややどうかということがございますので、その学問領域について妥当かどうか、これを国税審議会で認定していただくというふうな形の法案にいたしてございます。具体的な認定は、国税審議会に置かれる試験委員に恐らく御担当いただくことになろうかと思いますが、こうした1科目とそれから領域の限定、それから、さらに「不正の手段によって試験免除を受け、又は受けようとした者に対して免除の取消等」というのが加わっておりますけれども、これは、昨今、インターネット等で修士論文が、これ免除になるものですから売買されているというふうな実例も聞きますので、そういうことが発覚した場合にはという規定でございます。これはマスターについて試験を厳格化といいますか、難しくするという、そういうことでは決してございませんで、そういう意味では抜け道にならないようにするということでございます。
 それから、税務官公署職員の試験科目の免除についてでございますが、恐縮ですが前のページの34ページの下の段を御覧いただきたいと思いますが、上のほうは先ほどのマスターに関する規定でございますけれども、下のほう、現行では国税審議会の指定した研修を修了するとともに、左のイ、ロ、ハで書いてございますけれども、23年から28年の実務経験によって会計学に属する科目の試験免除を受けるという形でございます。しかしながら、この指定研修の内容がよく分からないという御指摘もございましたので、そこで、この指定研修の要件、例えば会計学に属する科目を必修とする、あるいは研修の内容の水準、それを習得するための研修時間が設定されているか、あるいは研修の効果を測定するための試験がちゃんと行われてその合格が修了要件になっているか、そういったことにつきまして財務省令で定めまして、こうした要件に適合しているかどうか、あるいは研修内容等についても継続的に国税審議会で検証していただくというふうな法案の内容になっておるわけでございます。
 こうした改正に伴いまして、試験委員の職務などにつきましても当然国税審議会での改正も必要になってこようかと思いますが、さらに税理士分科会の役割もそういう意味では増加することになてっこようかと思います。先般の審議会の席上でも辻山委員からそういう御提言をいただいたところでございますけれども、税理士法改正後にまた税理士分科会の委員の活動についても検討をお願いしたいと考えているところでございます。
 以上が税理士法改正の関係でございます。
 以上、私どものほうからの全体像の説明をこれで終わらさせていただきます。

会長
 どうも長時間、全般につきまして御説明いただきまして、どうもありがとうございました。
 これから御質問、御意見を伺うんですが、このページ数でいきますと、多分、最初に今日の、大体、説明の項目別がございまして、最初から全般にわたるとあちこちに質問が散らばってしまいますので、恐縮ですが大体半分ぐらいに切って、行政の在り方の変化への対応、それから経済・社会の変化と納税者利便の向上、納税環境の整備ぐらいまでですか、一応、そこを前半ぐらいの感じで、後のこともちろんまた御自由にあれですが、ですから、最初のほうの半分ぐらいのことについて御質問、御意見、それからまたあと半分、あるいは全体、時間は大体1時間程度ですから、多分5時10分か15分ぐらいまでを予定しておりますので、時間が一応ございますので、どうぞ御自由に、御質問あるいは御意見ございましたらどなたからでもお願いいたします。どうぞ。
 それから、このマイクはボタンを押すようになっておりますが、押さなくもよろしいと。自動的に動くそうでありますので。
 では、どうぞ、御自由に御発言を。どなたからでも。
 なかなか御発言がないので、最初に私がちょっと、情報の保護ですが、これは情報保護法というのが確かできましたよね、全体の個人情報保護の。それは企画庁だったかな、内閣府の。私は、これをなぜ知っているかというと、金融関係で情報の保護というお話がありまして、これは別に国税に関しては完全に別枠になっていると考えてよろしいんですか、法律上は。ちょっと情報保護法というのは最近非常に広い範囲にわたっておりますので、国税に関しては。

総務課長
 情報保護の関係で申し上げますと、一つは既にデータ保護法 (電子計算機処理に係る個人情報保護法)というのがございまして、これは官公庁が電子ファイルの形で電磁データの形で保持しておるものについての保護を図るというものでございます。その趣旨としては、そういう電磁データでファイルされている中の個人情報が誤っていないかという形で請求がございますと、本人のほうに、こういう形でデータがファイルされておりますということを開示するというシステムになってございまして、そういう請求も、年間数件でございますけれどもございます。
 今、貝塚会長おっしゃられました、報道等されております個人情報保護法というのは、基本的に民間の中で何らかの形で顧客データとか、そういう形で保持しておるものについて、その保護を図るというのが趣旨でございます。
 ちなみに、私どもの関連で申しますと、そういう民間におきます個人情報の形で、それが個人情報ということで本人の了解がないと第三者に開示できないということになりますと、例えば私ども調査の際に、任意でございますけれどもそういうことを聴取したり、資料の提出をお願いしたりする場合がございます。それがすべてこの個人情報保護法で本人の了解を得ないとできないということになりますと支障がありますので、税務行政上、そういった場合におきましては、御本人の同意がなくても一定の場合には構わないという例外扱いを法案の中で定めていただいている、税務という書き方ではございませんけれども、そういう形になってございます。

会長
 どうぞ、御自由に御質問あるいは御発言を。
 この新しい申告書は、皆さん多分多少御経験があるでしょうが、今は、かなり簡略化されていますね。
 どうぞ。

尾崎委員
 同じ情報公開の話なんですけれども、今日までに何件ぐらい国税庁に対して出ていますか。

総務課長
 先週1週間、実質的には4月2日から4月6日の金曜日まででございますけれども、国税庁と局署合わせまして181件の請求がございます。これは、例えば同じものにつきましても、何年度のAという資料、何年度のAという資料ということで、9年、 10年、11年と来ましたら、それぞれ1件とカウントしまして3件と数えて、それのトータルが181件ということでございます。

平岩委員
 すみません、それに関連してなんですけれども、その中で不開示になったというのはどのぐらいあるんですか。

総務課長
 実はまだ請求を受けまして、今、まずどの文書かという特定作業から入りまして、その文書について開示か不開示かという決定を、まだ作業を進めておる最中でございます。

平岩委員
 まだですね。

総務課長
 一応、原則30日までの期限内にということで、特別の事情があればさらに延長可能でございますけれども、今、鋭意作業を進めておるところでございます。

会長
 どうぞ。

水野委員
 私も情報公開法のことでちょっと伺わせていただきたいと思いまして、実はこの秋に大学の公開講座で、情報公開と租税法の関係を話をしなければいけないということもありまして、非常に難しい分野なんですが、昔、徴税虎の巻事件というので、もう大分昔の話ですけれども、いわゆる税務署のほうで持っている、大体所得の標準率ですね、一般のこのぐらいの人だったら、このぐらいの収入を得ているものであるという、そういう統計を作っていたのを納税者が見せろといって、税務署が見せないとやり合ったあれなんですけれども、さて、そういったような経緯がありまして、他方でやはり推計課税の中で、同業者と比べる場合に、その同業者の名前を明らかにすることができないからA企業とかB企業とかでやってきた。これに対しても、納税者のほうは明らかにしろといって裁判になったりするわけですが。さらに、それが、最近では移転価格税制といいますか、国際課税の分野でも、日本の政府は全然企業の名前を明らかにしないで比較している、よその国はちゃんと出しているじゃないかということで、またもめたりしましたですけれども。こういったような、他の納税者、あるいは納税者本人にかかわるデータですけれども、先ほどもちょっと御説明はあったのですけれども、情報公開の中で要求された情報の中に個人情報が入っている場合、これはどう考えたらよろしいのかということを、ちょっとお教えいただけたらありがたいのですが。

総務課長
 基本的には個人に関する情報───法人も同じでございますけれども、は不開示ということになってまいります。一つは例えば個人情報と申しましても役所の者が官職として公務でついておると、そういう場合の書類についてはそれはもう公表だということになってございますけれども、そういう例外は別といたしまして基本的には不開示と、私ども考えております。もっとも、これもギリギリ申し上げますと、私どもが不開示の決定をいたしましても、請求者の方が不服をお申立てになられて審査会に行き、審査会のほうでこれは開示すべきだと、あるいは開示しても何ら害はないというふうな決定をされますと、またそれを参考に私どもがどうするかということになります。それでも不開示だということになりますと、───不服申立て前置主義ではありませんけれども、訴訟になって進むわけでございますが、私どもとしては、先ほど申し上げましたように個人の情報につきましては基本的には不開示、それが全体的に、例えば申告書のようにかなりもう個人の個別データに近いものは、全体として不開示になるのか、あるいは、物によっては個人情報が出てくるところだけ部分的に消して部分開示とするのか、そういった点はそれぞれ個々のケースで異なろうかと思いますけれども、私どもは今のところそういう考えでおります。

水野委員
 ありがとうございます。

国税庁次長
 ちょっとよろしいでしょうか。

会長
 どうぞ。

国税庁次長
 補足させていただきますと、今、水野先生が言われました海外の国際取引のような場合も、アメリカでも個人個別の企業の課税情報を出すということはしていないだろうと思うんですね。例えば、有価証券報告書で明らかな収益率とか、そういうものを例にとって、それと比較の上で、この企業は収益率が低過ぎるから明らかにこれはもっと出すべきだというような御議論をされるのであって、各個別の取引を開示するという話には、海外でもなっていないんではないかと。日本の場合にはAという商品が一体幾らで通常輸出されているかというところまで比較して課税する、しないというのをやるわけですけれども、これはアメリカでも当然守秘義務がかかっているだろうと存じます。

水野委員
 ありがとうございました。
 ちょっとくどいようですが、またちょっと同じことで質問、勉強させていただきたいと思うんですが、今度は逆に、情報公開法があることによって、いわゆる納税者が自分の納めた───税目にもよりますけれども、自分の税金が適正だったんだろうかということで、ほかの人はどう課税されているか、データが欲しいと。典型的には地方税ですが固定資産税、あるいは相続税ですと路線価でやっていますけれども、ちょうどたまたま近くで売買された家があった場合に、非常に参考になるデータになるわけですね。そういうような形で請求してくる、と。それを情報公開法のもとで言ってきた場合、やはりこれは特定個人にかかわるものであると、自分の税額の算定に非常に有益であってもやはりこれはバツにするのでしょうか。それとも、当然、名前を隠すも何も、近所でしたら分かっていますから、そういう場合はやっぱり特例的に明らかにするのかどうかですね。というのは、逆に言いますと、税務署側はデータを持っていますから、それは非常に認定のときにいろいろ活きるわけですけれども、納税者は、自分の税額が適当かなといって争おうと思ったときには、どうしても税務署が持っているデータが欲しいと、そういうことになるわけですが、それはほとんど個人情報が絡んでくるので難しいわけですが、やっぱりこういうのは基本的にはノーと考えてよろしいのでしょうか。

総務課長
 そういう場合も、おっしゃるとおり、基本的にはノーというふうに私ども考えております。実は特に情報公開絡みよりは、むしろ不動産のその情報をもう少し広くいろいろなところから外へ出すべきだという話がございまして、国税庁であればいっぱいそういう情報があるではないかというお話があったこともあるんですけれども、基本的には集計としての計数はこれは別でございますけれども、1件しかなくてそれによって簡単に個人の推測がつくというものについてはノーだと考えております。例えて言えば、現在出しております統計なんかでも、ある管内に酒屋さんが1軒しかない、と。そうすると、その管内での酒の税収というのを統計で出しますと、そこがそれだけだと販売量もこうだとかというのが分かってしまうということで、そういう場合はやはりノット・アベーラブルということで、統計上も推測されるおそれがあるということで伏せさせていただいております。

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