会長
 よろしいでしょうか。続いて、「経済・社会の変化と納税者利便の向上」です。

課税部長
 課税部長の村上でございます。座って御説明させていただきます。

会長
 どうぞ。

課税部長
 大きなくくりの2でございますが、「経済・社会の変化と納税者の利便の向上」につきましては私のほうから簡単に御説明をしたいと思います。資料は11ページからです。
 その前に平成12年分の確定申告、既に4月2日で終わったわけでございますが、その状況、まだ数字は完全に集計できておりません。大体、毎年5月ぐらいに集計してマスコミ発表いたしておりますが、御参考までに若干の傾向を申し上げたいと思いますが、全体としての提出件数、これはほぼ横ばいか若干増加だと思われます。なお、平成11年は約2,000万件の確定申告が出ておりますので、やや2,000万件ちょっとぐらいが提出されているのではないかと思われます。そのうち、税額のある者は若干減少しておりますし、一方、還付申告は増加しております。これも、このところ近年同じような傾向が続いているところでございます。
 それでは、順次、以下各項目について御説明したいと思いますが、まず自書申告の推進でありますが、第1回の国税審議会におきましても、私のほうから「平成12年分の確定申告に向けての取り組み」と題しまして若干御説明を申し上げましたので、既に一度御説明したわけでございますが、一応、国税庁におきましては一昨年平成10年分から、できるだけ納税者御自身に確定申告書を自分で記載していただきまして、わかりにくいところがあれば助言させていただく、いわゆる自書申告の推進ということを全国的に推進いたしております。お手元に表を出しておりますが、これは実際に確定申告書を書いていただいた方にアンケート調査をした結果でありますが、1、2、3と書いてありますが、「3来年の確定申告に向けて」をちょっと見ていただきたいのでありますが、自分でもう作成ができると答えられた方は43.7%、自分一人で作成できると思うが職員のアドバイスを受けたい25.7%、約70%ぐらいの方から大体何とか自分で書けるという御回答をいただいているのではないかと思います。こういうことからも、自書申告につきましては大方の納税者の方々から好意的な評価をいただいているものと、我々は感じている次第でございます。
それから、本年からは、通常の所得税に加えまして、土地を売った場合などの譲渡所得につきましても、本年の確定申告から自書申告の推進に取り組みました。譲渡も確かに非常に難しい事案というか、特例適用等々あるわけですが、一般のおよそ半分以上は自分の土地・建物を売ったというような簡単なケースが多いと思いますので、案外この自書申告についてもスムーズにいったと報告を受けているところでございます。
 次の12ページを御覧いただきたいと思いますが、カラーコピーがありますが、これはタッチパネル方式による自動申告書作成機と申しますが、銀行の窓口にございますATMと同じようなものでございます。これはタッチパネルで画面が出てまいります。音声によるガイダンスがございますので、それに従いまして画面上のところを手で触れていただきますと、順次やっていきますと最後に申告書ができ上がる。それも自動的にプリントアウトされると、そういった機械でございます。これは、今のところは比較的簡単な還付申告を対象とした機械を導入いたしておりますが、昨年までは給与所得者のみだったんですが、今年はそれに加えまして公的年金のみの方も若干加えさせていただきました。設置台数も大幅に、全国に2,260台、税務署の窓口に置いてあるわけですが、そういったことで納税者の方に使っていただくということを心がけております。このタッチパネルによる申告書作成枚数につきましても、ちょっとまだ集計は終わっておりませんが相当増えているのではないかと思っております。
 次に13ページをお開きいただきたいのでありますが、御案内のとおり、確定申告書は御自身の住所地を所轄する税務署に申告していただくというのが法律上の仕組みでありますが、そういたしますと、なかなかサラリーマンの方等々、土・日に申告書を出したくても税務署が閉まっている、不便だという声も聞かれますので、ここの表に出してございますように、駅とか町の中心部とか、大変利便性の高いところにこういうセンターを設置しております。ここで申告書の用紙の交付、あるいは作成のアドバイスをしたり、場合によっては申告書の受付を行っているところであります。
 この税務署外の還付申告センターにつきましても、今年は大幅に設置箇所を増加いたしました。ここに51カ所記載しておりますが、昨年までは29カ所でございました。したがいまして、還付申告センターの利用状況につきましても相当大幅に増加しているものと思われます。
 それから、次に14ページでございますが、確定申告書の様式の見直しを来年から実施したいと考えております。今、説明申し上げましたように、自書申告の推進・定着を進めているわけでありますから、その過程で確定申告書の書き方、手引の見直し、できるだけ分かりやすい形に直しているのでありますが、さらに分かりやすい、書きやすい申告書を、という納税者の皆様の声に応えまして、一応、皆様方の御意見も聞きつつ、こういう申告書の様式を考えてまいりました。
 ちょっと見ていただきたいのですが、次のページに、カラー版の申告書の実物でありますが、これは申告書A様式、実は申告書は従来6種類ほどございましたが、AとB、2本にいたします。ちょっと発想の転換があるのですが、Bが一般の申告書なのです。Aはむしろ簡単な申告書。Aという申告書は、ここに書いてあります給与所得者とかの雑の中の配当、公的年金受給者、そういった方々に利用していただけるものなんですが、先ほど申しましたように2,000万人のうち約1,000万人がこの申告書Aで対応可能になります。約半分が簡単な申告書でお済みになるということであります。
 したがいまして、先ほど申しましたタッチパネルも、このA様式1本に対応した形のタッチパネルを現在開発中であります。それに対しまして、この様式の方は大体半分、要するに1,000万人いらっしゃるわけですが、理論的にはすべてATMのようなタッチパネルで処理が可能、もちろん、機械を何台設置するか、これは予算の制約もございますからなかなか自由には設置できないわけでございますが、そういったことが可能になってまいります。
 なお、これは来年からでございますので、今年確定申告を終わりまして、4月以降に本格的なPRを行ってまいりたいと考えております。
 次の15ページでありますが、「税務署における総合窓口設置状況」と書いてございます。総合窓口が20署、一般の受付窓口が240署という表示があります。いわゆるこの総合窓口と申しますのは、来署される納税者の方々に非常に親しみやすく利用していただきやすい税務署を目指しまして、玄関付近に一定のスペースをとりまして、案内事務であるとか、それから申告書等の用紙の交付───実は、用紙といっても税務署には何百種類も用紙があるのでございますが、それを窓口で一括して交付するとか、あるいは簡単な税務相談、さらには文書の受付、申告書を含めまして文書・届出書の受付、それから路線価の閲覧なんかもやってございます。路線価は、現在全国に広げていきたいと思っておりますが、とりあえず東京局で、全国の路線価がCD−ROMに入っております。路線価は、御案内のとおり、全部並べますと5メートルぐらいになるんですが、CD−ROMだと小さいものですから、そういうCD−ROMをパソコンにかけますとすぐ絵が出てまいりますのでそういったCD−ROMにしておりますが、そういう路線価をぱっと窓口で見れるとか、あるいは納税証明につきましても税務署の各部門に足を運んでいただかなくても受付で発行できるとか、そういった機能を持っていますのが総合窓口であります。ただ、やはり庁舎のスペースの問題とか人員等々の問題がございますので、全国のすべての税務署に総合窓口を置くほどの余裕もなかなかございませんので、その他240の税務署には、通常の案内業務であるとか申告書の交付とか、そういったことを行う受付窓口を設置しているところであります。さらに加えまして、本年、13年7月から、これはまだ仮称ではございますが「納税者保護官」というものを国税局並びに税務署に設置する予定であります。全税務署ということではなくて主要な税務署でありますが、これは納税者の皆様方から寄せられた苦情などを、納税者の立場に立って迅速かつ的確に処理するためのポストであります。具体的な細かいところは現在検討中でありますが、本年の定期人事異動7月以降に納税者保護官(仮称)というものを設置したいと考えております。
 以上、様々な側面から納税者利便の向上の観点に立って各種の施策を展開しているところであります。
 引き続きまして、大きな2の(2)経済・社会の情報化への対応、一点だけ申し上げたいと思います。それは電子商取引への対応ということであります。
 すみません、16ページに戻っていただけますか。路線価のCD−ROMの絵がありました。これはどんどんクリックしていただきますと御自身の住所地の路線価図が検索できて表示できるという、そういう機械であります。
 17ページでありますが、御案内のとおり、今現在インターネットが非常に急速に普及しております。電子商取引が爆発的に増加しているわけでありますが、ここに書いてございますように、電子商取引というのは通常の取引といろいろ異なった特徴ございます。一つはネットワークを通じて取引が広域化、国際化───いわゆるボーダーレス、自由に瞬時にできるという特徴がございます。それから、SOHOとかよく言われますが、こういうビジネスに参入が非常に容易であるとか、お名前もなかなか分かりにくいとか、我々の立場ですと納税者がどなたかよく分からないといった問題がございます。それから、機械───パソコンでありますからデータの消去が極めて容易であるとか、そういう電子的な取引情報等の把握が困難といった特別な事情がございます。
 したがって、通常の我々の伝統的な税務手法、税務の対応ではやや不十分かなということで、ここに書いていますように、電子商取引専門調査チームというのを各国税局に作っております。これは事務系統横断的といいますか、どこの部に属するというのもはっきりしないんですが、すべての部からエキスパートを、電子商取引であるとか、あるいは国際課税に強い者を集めまして一つのチームを作りまして、専門に電子商取引の調査を行っております。調査だけでなく、もちろんプロバイダー等、電子商取引関連事業者、あるいは電子商取引をやっている方の税務調査及び資料の収集を行っているところであります。
 次の18ページにまたカラーコピーがございますが、これはよくある非常に簡単な例でありますが、実際の納税者の方は、この場合は出版業を営む法人のケースなんですが、実際にインターネット上にホームページを開設されまして個人輸入の代行業も行っております。非常に簡単にできますから。この法人はカスタマーからe−メールで全部注文を受けます。そうすると、アメリカから仕入れていますから、アメリカにe−メールを送って、アメリカから航空便で、医薬品なんですが送っていただく。その航空便がそれぞれ注文を出されたところに届く。そういうシステムになりますが、こういうのも電子商取引チームで把握し、課税をさせていただくところであります。
 この電子商取引に対する課税問題というのは、税制、執行、両面があるわけですが、御案内のとおり、現在OECDでいろいろ税制、執行両面の議論がなされているところであります。我々といたしましても主税局ともども、こういうOECDの議論に参加しておりますし、また各国の税務当局もこういうe−コマースの発展に対して非常に高い関心を持っておりますので、いろいろな国際会議の場等々でそれぞれの情報の交換なり知識の共有を行っているところであります。
 以上で私の説明を終わります。

審議官
 審議官の塚原でございます。
 私のほうからは経済・社会の情報化に対する対応の2つ目の局面でございます、国税庁自身の高度情報化の部分を御説明させていただきます。資料は19ページからになります。
 19ページの資料を御覧いただきますと「国税庁における電子政府実現に向けた取組」ということで、電子申告、電子申請等、それから電子納税、これらいわば国民と国税庁との間のインターフェースの電子化の問題をまとめてございます。ここにございますように、これらの電子化につきましては、平成15年度中の運用開始を目指して全庁的に現在取り組んでいるところでございます。
 最初の電子申告につきましては、対象税目は申告所得税、法人税及び消費税を優先するという考え方でおります。また、2つ目の電子申請等につきましては、導入時から原則としてすべての手続を対象とする。電子納税につきましても導入時から全税目を対象とするということを目標に考えているところでございます。
 現在、これらのシステムの着実な導入を図るための技術的な問題あるいは制度的な問題、これらの検討を行っているところでございまして、これらの検討を踏まえまして、これらの導入手順について今後詳細を詰めていきたいというふうに考えているところでございます。
 次の20ページを御覧いただきますと、電子申告あるいは電子申請等のイメージ図がございます。簡単に御説明いたしますと、左側に納税者のサイド、右側に国税、税務署のサイドを図解しております。納税者につきましては、納税者御本人が直接行う場合、それから税理士の先生方に委任をいたしまして税理士経由で申告などを行う場合、大きく2つ考えられるわけでございます。いずれの場合も、パソコンなどを利用して申告・申請などのデータを作成していただき、インターネットを経由いたしまして国税サイドの受付システムのところにデータの送信をしていただきます。この際、このデータにつきましては暗号化の措置を必要といたしますし、また正しい本人であるかどうかの本人確認、これらの仕組みもここに置く必要があるわけでございます。受付システムに入ってまいりましたデータは税務署などへ送信され、国税内部での処理が行われることになります。
 こうした電子申告の導入に向けた準備作業の一環といたしまして、昨年11月から本年の3月まで、東京国税局内の2つの税務署でこの電子申告の実験を、納税者、税理士の先生方の協力を得ながら実施してきたところでございます。
 次に、21ページを御覧いただきますと、電子納税についてのイメージ図でございます。現在インターネットなどのいろいろな情報通信技術を使いまして民間取引における決済手段の多様化というのが行われているところでございますが、国税庁といたしましても、納税者の方々の利便性の向上を図るという観点から、新しい決済手段を納税手段として利用できるように現在検討を進めているところでございます。
 電子納税実現のためには、この21ページの図にございますように、インターネットバンキングなどを利用して納税者の方々が金融機関に対して納付の指図を行っていただき、そのデータが電子的に国税当局に送信されてくるということが必要でございます。そのための、日本銀行あるいは金融機関などを含めたインフラ整備が不可欠となるわけでございます。
 このため、国税を含めた公金収納のための新たなネットワークの構築を目指して、金融機関、官公庁などが参加する日本マルチペイメント・ネットワーク推進協議会、こういった協議会があるわけでございますが、こういった場で、パソコン、携帯電話、ATMなどを用いた納付手段の検討が現在行われており、国税庁もこれに参加しているところでございまして、国庫金納付手続の電子化の一環として電子納税の実現に向けて技術的な検討を現在行っているところでございます。
 先ほども申し上げましたように、今後これらのインフラ整備、公金収納のためのネットワークの構築、国税納付のためのチャンネル提供など、金融機関などにおけるインフラ整備、これらを前提といたしまして15年度までに電子納税を実現したいというふうに考えている次第でございます。
 次の22ページでございますが、こちらは国税部内のコンピュータシステム───KSKシステムと呼んでございます。国税総合管理システム、頭文字をとりましてKSKシステムでございますが、このシステムの導入状況について簡単に御説明いたします。
 このシステムは、目的といたしましては、税務行政を取り巻く環境の変化に対応して、税務行政の効率化・高度化を図り、適正・公平な課税を目指していくこと、さらには、先ほど御説明いたしました電子政府の実現の一環であります電子申告、電子納税など、税務行政のIT化に不可欠な情報通信基盤を提供する、こういう目的で現在導入を進めているところでございます。全国に拡大されますと、地域あるいは税目を超えた情報の一元管理が可能になるコンピュータシステムとなるところでございます。
 このシステムは、平成7年1月、東京国税局の2つの税務署において試行を開始いたしまして、その後、順次、導入局署を拡大してきております。この22ページの日本地図に示しておりますように、現在、平成12年11月、名古屋局全署、関東信越局埼玉県南10署、この、上から3つの網かけをしました部分、ここまで整備されてきているところでございまして、現時点では5つの国税局、227の税務署にシステムが導入されております。税額で見ますと、カバー率が既に約72%になっているところでございます。平成13年度において、残りの全部の国税局、税務署───税務署の数にして297署に平成13年度中にKSKシステムを導入する予定としております。この地図で見ていただきますと、白抜きの部分、これに13年度中に拡大いたしまして、全国のすべての税務署に導入するということを計画しているところでございます。
 これが拡大されますと、国税内部での各種の税務データのコンピュータ処理が拡大されまして、申告・決算事績などの必要な情報の蓄積・管理によりまして、情報の多角的な分析、随時の活用、これらが可能になり、効果的な税務調査、的確な滞納整理の実施などが可能になると期待されるところでございます。
 また、さらに納税証明書の自動作成による迅速な発行、あるいは随時の情報参照が可能になりますので、納税者からの問い合わせなどに対して迅速な対応が可能になるなど、納税者利便の向上に資するものというふうに考えているところでございます。
 以上でございます。

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