亀井酒税企画官
 資料として、二回にわたり御報告いただいた海外実態調査についてまとめたA3版のものを御用意いたしました。こちらも御参考にしていただきながらお聞きになっていただきたいと思います。

岡本氏
 すみません。そのお話に入る前に、未成年者の飲酒について述べさせていただきたいことがあるのですがよろしいですか。
 先ほどの田嶼先生のお話にもありましたように、小学生、中学生ぐらいには先ほどのパンフレットがある程度影響力を持つだろうけれども、やはり高校生とか大学生になりますとこういうものは、ほとんど影響力はないと思いますので、小売店であるとかそれから飲食店というような所の現状を、きちんとチェックする必要があるだろうということなのです。
 今現在、例えば、コンビニなどで、一応建前上は20歳以下に見える人には身分証明書とかそういったものを見せてもらうとなっています。それから先ほどのポスターのように「確認中」とか「実施中」とか書いてあるものを張っている。しかし、実際にどれだけ本当にそういうことがされているかどうかということは疑問ですし、学生などが行く飲み屋に行ってもほとんど身分証明書を見せてくれなどと言われたのを見たことがないものですから、多分皆無に等しいのかなと勝手に想像しているのですけれども、その辺りはいかがなのでしょうか。
 まず、そういう実態について、多分調査はされてはいないでしょう。何か問題があったときとか、それから通報があったときには動かれる場合もあるのでしょうけれども、全国1万何千箇所のそういうふうな場所を全て調査するということは多分無理だとは思いますが、そういった実態調査みたいなものをある程度する必要があると思います。
 それから、アメリカの場合は、子供に買いに行かせて、実際に売ったところを処罰するというようなおとり捜査というようなことをやっているわけですが、日本の場合はそうはいかないかもしれません。ただ、例えば、アメリカなどは、年齢制限は21歳ですけれども、州によっては老けた若者もいるということから30歳ぐらいに見える人に対しても身分証明書の提示を求めるとかということを義務づけるところもあったわけです。日本の場合、多分まじめに身分証を確認している酒屋さんがあるのかどうかも疑問ですし、あったとしても多分10代ぐらいに見える人にしかやっていないような感じもしますし、その辺がアメリカとすごく違いがあるのかなというふうな印象があるのですが、やはり、もしやるのであれば30歳ぐらいまでの人を含めた年齢確認をするような指導が必要だと思いました。
 今の年齢確認のやり方やその基準のようなものが非常にあいまいですし、実際にほとんど行われていないようですし、その辺が非常に重要になってくるのかなと、特に10代の終わりくらいの方の飲酒というのを問題にするのであれば、その辺も把握する必要があるのかなと、そういう意見です。

奥村座長
 以前、業界の方が御説明くださったときも、今、岡本先生がおっしゃったことと似たことを聞いたことがあるのですが、作戦本部のこういった建前はよく分かるのですけれども、現場でどうなっているかですね。特に、レジに立っているのは圧倒的にアルバイトの方という現状の中で、本当にチェックが行われているだろうかと確認すると、店長さんが教育しているというお話で、店長さんが本当にそういう方を教育しているかどうかは現場をだれも見ていないわけなので、というような問答をしていたのを記憶しております。今、岡本先生がおっしゃったことが一つのポイントですね。
 でも、それをどこかに委託して調査してもらうというようなことを国税庁さんがやろうとすると、どうなのですか。まず予算を確保しないとできないという話になってくるのですか。予算が確保できれば、どこかに委託して調査するというようなことは可能なのですか。

亀井酒税企画官
 実施状況をどういうふうに確認をするかということが、一番難しいのではないかと思います。一昨年の懇談会での御議論を踏まえまして、例えば、酒類販売管理者の選任制度や酒類販売管理者に対する研修制度を立ち上げるなどの仕組みを作りました。それから、後で担当の方からも話があるかもしれませんけれども、小売酒販組合の青年部の方では、もっと確認していこうということで、パンフレットを作って、未成年者が酒を買いに来たときにどう断ればいいかというふうなことを勉強していこうとかそういった取組をしています。実際問題として、確認していますかと聞くと確認していますと言うと思いますし、どういうふうなやり方がいいのかというところからまず検討していかなければいけないのかなというのが正直なところです。

奥村座長
 調査したときに本当のことを言ってくれるかどうかでしょう。それには一工夫必要ですよね。でもこの懇談会のメンバーには毎日学生さんと接触しておられる方が非常に多くて、例えば、私でしたら大学のゼミの学生だけで60人ぐらいいて、そのゼミの学生の時間を10分間とればかなりのチェックはできるのです。あなたの小学校、中学校、高等学校あるいは今コンビニでアルバイトしているとき、私たちがこうやって議論しているようなことが本当かどうか。もし質問用紙を国税庁で用意してくださったら、「10分だけ時間ちょうだい」と言っておいて、60人くらいの正直な答えはすぐに得られますよ。
 多くの先生方が協力してくだされば、多分サンプル300ぐらいになるはずですから、信頼性のあるデータが出てきて、大体の状況のようなものは分かるのではないかと思います。

井澤課長補佐
 御参考でございますけれども、他省庁でもさまざまな調査研究をやってございまして、例えば、旧総務庁で平成13年に青少年とたばこ等に関する調査研究というものをやって報告がなされております。
 このアンケート調査によりますと、飲酒というのは本人の考えに任せればいいのだという中高生の割合が過半数以上になっているというデータでございますとか、久里浜病院の先生がプレゼンをされたかと思うのですけれども、そちらの全国調査でも中高生の飲酒割合が近年伸びているというデータがございます。
 警察庁では補導の件数を把握してございまして、飲酒で歩道されている少年は、平成14年に3万3,000人、平成15年に3万6,000人というデータがございます。
 あと、警察庁のデータだったと思いますが、時間帯については不明ですが、購入場所について、従来は自動販売機で買う割合がかなり高かったというデータがございます。近年、自動販売機で購入している割合は減っているのですが、補導されている件数は増えていますので、残念ながら一般の小売店なりスーパー、コンビニ等々対面販売の場での購入というのがなかなか減っていない現状にあるのではないかということが、さまざまなデータから読み取れるかと思います。

矢島氏
 よろしいでしょうか。それに付け加えまして、我々のやった総務庁の調査に関しましては、中高生が対象なのですが、お酒を買うときにお店の人、回りの人から買う際に注意されたかといった質問に対して、注意されたという人はほとんどいなかったというデータがあります。

奥村座長
 やはり、業界の方のおっしゃっていることと、実際の売り場の現状では違うのですね。

岡本氏
 すみません。実態確認もさることながら、「この棚にある商品には自分で年齢を証明できるものがなければ買えません」ということをむしろうたうべきだと思うのです。要するに、自分が「20歳以上である」という何か証明するものがなければ、この棚にあるこの商品は買えない。そういうようなことをやっていかないと年齢確認されるということが、実際の消費者の行動の中でごく当たり前になったのだというそういう認識が定着していかないと思うのです。非常に勇気のある酒販店のおじさんが年齢確認をしているだけというのでは、いつまでたっても実現できない話だと思います。たばこはパッケージに健康に注意しろとか書いてありますけれども、そうではなくて、この商品を買うときは20歳以上であることを証明する必要がありますって、そういう文句を入れさせた方がむしろいいと思います。

田中氏
 私は今の意見に大変賛成なのですけれども、「未成年者の飲酒は法律で禁止されています」ではなくて、「未成年者は身分証を確認します。できなければ酒を売りません」というカードなりポスターなりを店頭に張ればかなり効果はあると思います。現状は、もう調査するまでもなく、しなくてもノーチェックで売られているというのは明らかだと思いますので、むしろ調査以前の問題で、酒類の販売の団体がきちんと現場にそういうポスターなりステッカーなりをきちんと売り場に置いてもらうように働きかけると、そこでかなり浸透するのではないかと思います。

須磨氏
 ポスターの効果がどのくらいあるだろうかというのがポイントだと思います。どれだけ貼っても簡単に買えてしまうものは買ってしまうでしょう。子供たちは悪事をするのも喜びになっているところがありますので、いいとか悪いとかいう問題ではなく、どれだけ買うことにプレッシャーを与えられるかというのが現実問題としては大きなポイントだと思うのです。
 可能かどうかは分からないのですけれど、一般の酒類販売店が減っているということも考えますと、お酒に関しては声をかけて大人を通さないと売れないのだというところまで行けば、うそをつくのはやはり心が痛むというのがあると思うので、ただ陳列棚にポスターを張るのではなく、ある種別のコーナーで大人を通さないと「このお酒をください」と言えない状況にすれば、子供も今までよりもきっとプレッシャーが増えるのだろうと思います。そうなると、頑張ろうという大人のいる酒販店の方が、お酒のお店として成立しやすくなるというところにも結びつく気がするのですけれど、いかがでございましょうか。そういうことは可能なのでしょうか。

岡本氏
 私も似たようなことを考えています。例えば、レジの後ろにだけ酒を置くとか、これは物理的に可能な店とそうでない店があると思います。レジの後ろにしか酒が置かれていない状態で、子供が「これください」と買う場合にはかなりプレッシャーがあると思うのですがいかがでしょうか。

初谷課長補佐
 年齢を証明しないと買えませんというふうなやり方をつくるということは、それは非常に効果のあるやり方だと思いますが、買う側が年齢を証明しなければいけない義務がどこにあるのかと聞かれたときにお店の人が何と答えるのかというところはあります。買う方が年齢を証明しないと買えないということが、どこで決まっているんだと聞かれたら、法律で決まっているわけでもないし、年齢確認義務というのは売る方にだけあるのであって、買う方には年齢を証明しなければいけない義務というのはないというところが問題点としてあると思います。
 もう一つ、レジの後ろにあって人を通さないと買えないというやり方も非常に、現にアメリカでやられている方法で、効果的な方法だとは思うのですけれども、規制強化みたいになりますよね。今スーパーでもコンビニでも人に声をかけないで、自分で商品を手にとって、それをかごに入れるというのが買い物のスタイルとして定着していて、そういった消費者の自由というのを、大人にもそうすることになるわけですから、それを奪ってしまっていいのかということはまた別途議論しなければいけないような気はいたします。

奥村座長
 現状はよく理解できます。今回お調べいただいたイギリス、フランス、ドイツ、アメリカでは、販売時間とか販売場所というのを何らかの形で規制していますよね。アメリカは州によって違うのかも知れませんが、調査結果では全部そうですよね。それで日本は、今は販売時間に関しては全く自由と考えていいですか。前は規制があったのですか。

前田課長補佐
 販売時間に対する規制はございません。

奥村座長
 前もなかったですか。前は一般の小売店がやっていたから真夜中は営業していなかったということはありますよね。それはスーパーやコンビニは営業するようになってきている。
 次に出店場所については、現状は一切制限していないと考えていいですか。我々の大学の中ですらお酒を飲ませている。免許をおろすときに、学校の中は駄目だというようなものはないとおっしゃっていましたよね。

井澤課長補佐
 明確に規制という形ではございません。ただ明らかに、ここは社会通念上おかしいだろうという場合には税務署の方で指導することはございます。

奥村座長
 そういう例はありますか。

井澤課長補佐
 例えば、老人ホームの内部とか、だれもいないところで自動販売機だけ置いて営業したりとか、病院の中で販売したりとか、そういったケースで個々に指導をしたというケースはございますけれども、一律に駄目だという形での規制はありません。

奥村座長
 ちょっと待ってください。老人ホームは駄目で、何で学校の中は良いのですか。法律で、未成年者は駄目だとおっしゃっていて、老人は駄目だとおっしゃっていないのですが、そこはどういうふうに結びついているのですか。

井澤課長補佐
 学校の中も、場所によっては指導することはあり得るかとは思いますが、規制という形ではしておりません。

奥村座長
 老人ホームは指導しているということですか。

井澤課長補佐
 こちらも個別のケースということで、個々のケースごとに指導することはあり得るということでございます。

奥村座長
 あり得るということですね。

亀井酒税企画官
 今、指導のケースとして分かりやすいのは、一時期議論があった、高速道路のサービスエリアで酒を売るという申請については、それは問題だろうということで、そこは御勘弁願いたいと、指導でやめていただいたことがあります。
 そのほかに、お酒の免許を付与できるかどうかというのは、酒税の保全の観点からもございますし、それからもともとそこに店舗を構えてはいけないというような、例えば、市街化調整地域とかいろいろございますし、そういったことからも指導的な要件はあるというふうに思います。

奥村座長
 時間とか場所はどうでしょうか。日本は少し振り子が振り過ぎる傾向があるのですけれども、この問題についてもアメリカ、ヨーロッパ以上に時間と場所については完璧に自由化してしまっているのは現状のようですね。

初谷課長補佐
 すみません、補足させていただきます。昨年、免許要件の規制緩和の後の11月に通達を出しまして、そこで学校とか病院とかガソリンスタンドとか一定の注意が必要な所については重点的に指導するようにということで、各税務署の方に通達を出しまして、その指導は実施しております。特定の場所、例えば、学校の中は駄目だというのではなくて、一応免許の付与はできるけれども、その際には、購入者が学生のときには学生証でちゃんと年齢を確認するようにというような重点的な指導を実施しています。

奥村座長
 その指導はだれがしているのですか。その学校の所在地を所管している税務署の中にある酒税担当の方ですか。

初谷課長補佐
 はい。税務署の職員です。

奥村座長
 でもコンビニエンスストアなどはチェーン展開していますから、チェーン店の本部に対しての指導だけでなく、そのチェーン店の店舗ごとに、例えば、学校の中にある店舗にまで個別に指導しているのですか。

初谷課長補佐
 そうですね。数的に全ての学校にコンビニがあるかどうか分かりませんけれども、まず、免許を取得しなければお酒は売れません。

奥村座長
 店舗ごとにですか。

初谷課長補佐
 店舗ごとにです。免許を付与するときには、酒販店は一般的な記帳の義務があることとか、そういういろいろな話をするときに未成年者飲酒防止の関係だとかという話をするのですけれども、そのとき店舗の出店場所が、例えば、大学であれば客の半分はもしかしたら未成年者ということもあるでしょうから、学校で売ること自体は禁止されていないけれども、「未成年者に売ってはいけないのだから年齢を学生証等で確認してください」というふうな個別な指導を行っていくわけです。

奥村座長
 それは、現場の学生を見ていると、どうでしょうかね。

須磨氏
 酒税法とおっしゃいましたけれども、もともとこの懇談会は、業界主体の法律を、こういう時代だから社会的要請の観点から考え直してみようという集まり委員会だと思うのです。だったら枠組み全体を変えた方がいいのではないかと思います。今までできなかったことをもっと違う方向から見て、法律化することは可能なのでしょうか。そこが難しいのでしょうが、一番のポイントだと思います。

初谷課長補佐
 そうですね。

奥村座長
 以前出た意見で、「売る方だけじゃなくて、実際のお酒を飲ませる場所についても何か規制をしないと現実的ではない」というのがありました。最近、盛んにマスメディアで学校のアメニティについてこんなに良くなったと特集してますよね。この間もある学校は、高いビルの上の方にラウンジを作って、そこから海かなんかを見ながら学生がお酒を飲めるようになったとか、サロンのようなものを作っているとかというような紹介をしているではないですか。そういうところでは平気で学生に酒を飲ませていて、むしろそれをうたい文句にしているのですよね。そうするとやはり売る方だけを、学校の中のコンビニの支店をチェックなさったとしてもあまり効果はないですね。

前田課長補佐
 未成年者の飲酒については、基本的なものは未成年者飲酒禁止法で規制しています。何回か議論になりましたけれども、この法律では、「未成年者は飲んではいけない」、「営業者は未成年者が飲むことを知って売ってはいけない」、そして「親は止めなくてはいけない」というのがある。「未成年者は飲んではいけない」という規定はあるけれども、買ってはいけないというのはないではないかという議論になったことがあると思います。それから「未成年者が飲むことを知っていて売ってはいけない」ということですから、おつかいであれば一応法律的には問題ないということになるわけです。ですが、おつかいかどうかというのを確認するのは難しいので、今は、「未成年者にお酒を売りません」というふうな取り組みをしていきましょうということになってきたわけです。
 ですからここで一つ法律という話の部分になれば、未成年者飲酒禁止法は今のままで機能しているのかどうかという点です。「未成年者は買ってはいけません」という規定を設ける必要があるのか。「未成年者は飲んではいけません」という部分には罰則はありません。売る側には免許取消という罰則があります。未成年者に対して、飲んではいけない、買ってはいけないという規定にして、しかもそれに罰則みたいなものまで設ける必要があるのかどうかというのがあると思います。

田嶼氏
 今のお話はよく分かりました。私も最初から未成年者に飲ませないためには、法律できちんと規定されていることについて、実行可能なところから固めていく方が効率的ではないかと思っていたのです。現行法では「売ってはいけない」ということですね。だったらなぜアメリカのように、これは未成年者かもしれないなと思った人に必ず年齢確認のためのIDを出させると、それを確認するということを徹底できないのかなと思っていたのです。そちらの方を義務付けることはできるわけですね。
 私、20年ほど前にアメリカに留学していたときに、ビールを買いに行くと、必ず身分証明書を出しなさいと言われました。それが当たり前のように言われたのです。だから、それが日本でも当たり前のように行われるようになれば、今度は売るほうに対する動機付けといいますか、これはしなくてはいけないことだということが浸透するというふうに思いました。
 そこで規制できないとすれば、次は対面販売でないものへの規制でしょう。だから自動販売機についての問題が残る。自販機については、最近は年齢確認のできないものはどんどん少ない方向になっているというので、その辺に対する努力はなされているのでしょう。それで自販機の問題が解決すれば、少なくとも売るほうについてのある程度の規制ができて、そしてそれが未成年者の飲酒に歯止めをかける最初のステップになるだろうと、そういうふうに思いました。

田中氏
 まさに「未成年者に売ってはいけない」ということを、年齢確認することで確実なものにして、自動販売機は少なくする。それと飲んではいけないという場所というのは、これは未成年者の問題ではなくて、大人も当然含む問題ですから、これは法律というのか、広く言えば公序良俗の問題だと思います。例えば、美術館とか博物館とか劇場とか、飲み物食べ物を持ちこんではいけないとか、学校の教室の中で酒を飲んではいけないとか、それは施設の管理者なりそういうところが徹底すればいいわけで、東京都だったら東京都の公園の管理者が公園内で飲酒する人をきちんと排除しなければいけない。未だに公共の場所である駅前でホームレスを野放しにしておくような状態では、とても飲酒の管理などできないでしょう。やはり公共の場で、こういうことを施設管理者がきちんとやる問題ではないかなと思います。

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