奥村座長
 今御覧いただいているページで4というところに、先生方の社会的な要請の具体的対応策、今まさにおっしゃっているようなことがたくさん書いてありますね。
 夜間販売等の規制というのも挙げられていまして、それで外国の調査事例では皆規制をしていますよね。先ほどの経緯をお伺いすると、日本は以前から販売時間や販売の規制はなく、ただ以前はスーパーとかコンビニでは販売していませんでしたし、一般の酒屋さんは夜中に店を開けていなかったということで、事実上規制していたのですよね。それでお酒の販売は免許制なのですから、国税庁さんが適宜判断をして、夜間販売が可能な店舗に免許を与えなければ良かったのですね。でも今は、基本は自由化だと言われていて、コンビニでもスーパーでも縛りはないですから、そういう全国展開しているチェーン店では、真夜中も営業しているということで、エアーポケットみたいになってしまったのではないですか。以前から規制していない販売時間を今さら自由化時代に規制するわけにはいかないから、それでやらなかったというエアーポケットなのではないですか。
 では、なぜ規制しなかったのかが不思議ですね。仮に、今から真夜中は駄目だとか、ガソリンスタンドや学校の中では駄目だとかというような規制をしようとすると法律になるのですか、それともそれは地方の条例みたいなものでやるように誘導しようということになるのですか。

井澤課長補佐
 規制緩和の経緯でございますけれども、政府で規制緩和推進3カ年計画というものがございます。なぜ距離基準などを廃止したかということなのでございますが、この計画の基本的な方針といたしまして、経済的な規制は原則撤廃して自由化する、社会的規制は必要最低限という考え方が取られております。そのために人口基準、距離基準は経済的な需給調整だということで廃止ということとなりました。
 今後新たに販売時間や場所について規制をするかどうかにつきましては、社会的な規制は必要最小限ということでございますので、憲法上認められています営業の自由との関係で、それが必要最小限の範囲かどうか立法府で御議論いただくことになるのかと思います。

奥村座長
 ただ、市場経済だからできるだけ自由化した方がいいというお話と、真夜中にお酒を売るか売らないかというのは少し違うのではないかと思います。これは、市場経済外の話として位置付けられると思いますし、規制緩和時にエアーポケットでそれが抜けてしまったからということだと、何らかの対応をするということに対してはそんなに反対論拠というのはないと思うのです。例えば、18歳以上はお酒を飲んでもいいよということになれば大学の中で売る分にはどうということはないのですが、田嶼先生の御意見では、医学的な観点からやはり20歳の方がいいのだということですから、ちょっと大学の中で18歳、19歳の1、2年生とそれから20歳以上の3、4年生を分けて何か対応しろと言ってもそれは非現実的な話なのです。ですから何か、どういうものでしょうか。

岡本氏
 結局詰まるところ、我々は未成年者飲酒を本気である程度減らしていくつもりで意見を言っているのか、それとも現行の法律で何とかそれでいくのか、そういうことだと思うのです。ですから私の場合は本気で考えていますので、そうであれば、やらなくてはいけないことはやらなくてはいけない。ただ、全てを法律で、それこそアメリカの禁酒法ではないけれども、そういう形で極端に規制してしまうのはやはり問題だとは思うのですが、できる範囲で何か提言していくのがこの懇談会の趣旨であるとするならば、やはり言わざるを得ない部分だと思うのです。ですからその辺が、これから法律問題でそうなってくると思うのですけれども、どこまで本気でこの問題に対応するかというところが最終的に、皆さん気づかれていると思うのですけれども、そこが問題だと思うのです。

奥村座長
 せっかく海外でお調べいただいて、その欧米人というのは一番、市場経済を標榜しているのだけれども、その欧米の国々においてすら時間と場所については事実上規制していらっしゃるのに、日本は振り子が反対に振れてしまっていて、しかも振れた経緯が多分エアーポケットだと思うのです。前からこれを規制していれば、そこは規制したままでいいんじゃないかという議論があり得たと思うのだけれども、前も全く規制していなかったわけですよね。でも事実上規制されていたのです。だからそこの経緯でこうなってしまったと位置付けると何らかの対応措置があってもいいじゃないかという気がします。別に法律を作れというところまでいかなくてもいいでしょうが、国税庁で、戦略は考えていただかないといけないですね。

前田課長補佐
 未成年者飲酒禁止法の関係で、夜間販売の話が今出ているのでそのことについてよろしいですか。例えば、夜間になぜ売ってはいけないのかというふうな部分を考えてみますと、昔は、夜間は店が閉まっていて、多分買いに来る人もいなかったでしょうが、自動販売機だけが動いていて、でもその自動販売機は寝てしまうと管理できないから、それではいけないということで11時から5時までは自動販売機は自粛しましょうというのが起こってきました。現在はコンビニで24時間営業とか、先ほど言われたようにスーパーでも24時間営業しているところがある。では24時間営業しているところで夜間に酒を売ってはいけないのかというところの部分で、売ってはいけないのが、例えば、適正飲酒で夜中飲むと体に悪いよというか、夜中は未成年者のチェックができないからとか何らかの部分があるという話になれば、夜間の販売を禁止というふうな究極な手段もとれるのでしょう。現在は、夜間でも昼間でも未成年者には売ってはいけないような販売体制をとっていますから、特に夜間は注意をしなくてはいけないというふうに考えている店舗もあると思います。
 それから夜間販売を禁止するときに、なぜそこを禁止するのかという、場所もそうなのでしょうけれど、その場所がなぜ禁止なのか、それは未成年者が禁止なのか大人も含めて禁止なのかというところはあると思うのです。

奥村座長
 もう一つあるのではないですか。ディスオーダーということが物差しとしてあってもいいですよね。真夜中になぜ売ってはいけないのか、あるいは場所によってなぜいけないのか。その社会的な秩序を乱す可能性がある所はチェックしましょうというのはあってもいいですよね。

前田課長補佐
 ですから日本全国駄目なのか、ある特定の所は駄目なのかというふうな選択肢もある。

岡本氏
 多分夜中の販売というのは、別に未成年者だけの問題だけではないと思うのです。だから20歳以上の人も、もしそういうことになれば買えなくなるということ、要するに販売自体を禁止するということになるわけですよね。

前田課長補佐
 夜中に販売しないという話になれば、だれも買えないという話になります。そうするとだれも買えないようにするのか、未成年者のチェックを厳しくするのかという、それはちょっと段階があると思います。

奥村座長
 この欧米の例で時間制限をなさっているのはいかがでしょうか。未成年者だけをターゲットにしているのか、やはりディスオーダーの方、あるいは倫理的な観点からやっている可能性が大きいのか。場所については明らかにディスオーダーの方でしょうね。深夜は駄目だという国が圧倒的に多いのですけれども、これは両方ですかね。もともと店が夜中にやっていないということなのでしょうか。

田中氏
 イギリスのパブなどの場合は、時間を徹底したのですね。それはビンヂドリンキングが流行したためです。ただ実質的に夜3時、4時までパブをやる人はいないということです。

岡本氏
 アメリカの話になりますけれども、実は営業時間とかはもう19世紀から決まっていたものなのです。場所に関して言えばそれこそ教会の回り云々、植民地時代からの話なのです。ですから、先ほどおっしゃったみたいに日本の場合はほとんどそういう法律はありませんでしたが、アメリカの場合にはそれこそ100年、200年、300年の規制の伝統があるのが現在に続いているということで、あまり違和感なくある程度受け入れられている部分があるのかと思います。それを現在何もない日本にいきなり持ってきた場合に、多分国税庁の皆さんが御心配されているような規制過多と言いましょうか、そういう反発も当然出てくるでしょうし、その辺少し難しい問題があります。

田中氏
 ヨーロッパでも現実はかなり弾力的に運用して、杓子定規に運用しているところは少ないと思うのです。もちろん、未成年者に売るとかそういうことは厳しくしなければいけません。ただ、やはり一番弊害が出るのは中高生ですよね。もちろん大学生でも死亡事故がありますけれども、とりあえず中高生が今以上に厳しくなるということはかなり社会的な要請にたえられるものではないかなと思います。
 大学についても大学が本気になる問題でしょう。酒税課が法律で何とかするというよりも、むしろ大学の管理者が、大学内でも身分証明書なりをきちんと確認して販売すればいいわけで、3年生が買ったのを1年生が飲むかどうかという問題も、それはまた大学側で啓発をきちんとやるべき問題ではないでしょうか。

奥村座長
 あと海外の事例等でいかがでしょうか。特に日本と大きな違いがあるところは今の時間と場所ですか。ほかのところは比較的似ているのでしょうか。

亀井酒税企画官
 広告規制については法的規制でやられているか、自主規制でやられているか。法的規制があって実施段階がNGOのようなところでやられているか。この3つありました。我が国では前回もお話がありましたように業界団体の自主規制で、おおむね守られているというふうな話があったのですけれども、各国との情勢を踏まえて今後どうするべきかという議論もございますし、それから先ほどありましたけれども「お酒は20歳になってから」という製品表示だけでいいのかどうかというのも、問題があるのかなという感じはします。

奥村座長
 テレビなどの団体に対して、そういう要望をなさったことはおありなのですか。ドラマを作るときにあまり誘飲するようなシーンは入れないでくださいといったような要望はできるのですか。

亀井酒税企画官
 業界の方に聞いてみますとテレビで、例えば、暴力的なシーンとか飲酒のシーンだとか、そういう自主コードみたいなものがあって、そこの中で対応しているというふうには聞いていますけれども、私どもの方から直接要望といったことは今のところないと思います。

奥村座長
 先ほどの小学校か中学校のパンフレットの中にも、何かそういうテレビを見ていると格好のいいシーンが出てきてというようなお話がありましたよね。

須磨氏
 国土交通省の作文コンクールというのがありまして、審査委員をしているのですが、作文というのは自分から書かなくてはいけなくて、学校が生徒に書かせるわけです。書かせるという行為で、書かなくてはいけないので一生懸命考えてくれるのです。結構大人が見てああそうなんだと思うような内容のことが書かれていたりするもので、幾ら上から言っても駄目であれば向こうから考えさせる。改めて見つめさせるための方策として、例えば、国税庁がそういったお酒の作文コンクールを催すということが可能であれば、国税庁は税金を取っているところと皆思っていますから、国税庁自身のお酒に対する姿勢も伝わるし、学校にそれをお願いするということで学校も何か考えてくれる可能性が出てくるし、その課題を与えることによってなるべく小学生から中学生がいいと思う、私は中学生ぐらいがいいと思うのですが、中学生自身がお酒について書くためにでもこういうパンフレットを熟読してくれる可能性が出てくるのではないかと思います。国税庁はそういうことはできるのでしょうか。

初谷課長補佐
 国税庁では、税についての作文コンクールを関係団体と協力してやっておりまして、何かの縛りがあってできないということはないと思います。

須磨氏
 ぜひお願いしたいと思います。

奥村座長
 税の方は人気のある芸能人なんかをポスターに登場させたりしているではないですか。何か情報で工夫する余地があるかですね。

前田課長補佐
 今、須磨先生の方から言われた考えが、ビール酒造組合がやっているポスターとか標語とかです。標語一つ書くにもどうしたらいいのかと、それを一つ未成年者自身に考えてもらおうということで取組が始まったのがこの未成年者飲酒防止のキャンペーンの部分です。今年3回目ですけれども、だんだん広がってきていると思います。

須磨氏
 子供が書いた作文で、それが賞を取って冊子に載ると、子供が書いたものは子供が結構読むのです。それによって情報が広がるという方が、大人が子供に言うよりも波及効果があるのではないかというふうに思っております。

井岸氏
 広告規制について、こういうことができるのかどうかという質問が一つあるのですが、要するに業界の自主広告基準みたいなものを作らせるという指導ができるのでしょうか。というのは実際にアルコール商品の、例えば、テレビの宣伝、フィルムをつくるみたいな場面を想定しますと、その放映時間とかあるいは表現といっても、いろいろ抽象的な問題だと思います。放映時間の場合は時間制限を設けることで何とかなるかもしれないけども、内容については非常に抽象的なものであって、こういうものはいけないのだという、そこは業界で自主基準を作らない限りはなかなかうまくいかないのではないかと思うのです。
 例えば、自分の経験で、清酒の宣伝の例として、ここでお話していいかどうか分かりませんけれども、石川さゆりさんの場合についてお話します。彼女が20歳になったら使おうということで、彼女自身は20歳前から実際には大人びた感じの女性といいますか、日本酒向きの女性だったので皆が活用したかったのですが、20歳になるまで控えていたわけです。ただ本当にそういうことをしていいのかという問題があるわけです。20歳なったらすぐに使ってしまう。それで今の缶酎ハイみたいなものは、極端な話、モーニング娘が出てきてもおかしくないような広告内容になっています。こういうことが野放しになってしまうということ自体が、未成年者が簡単にジュースの次はもう缶チューハイを飲んでいいんだという感覚を生んでいるのではないでしょうか。やはりその辺は業界ごとに自分で自主基準を作らせていかなければいけないのではないかなと思うのですが、いかがでしょうか。

初谷課長補佐
 モーニング娘みたいな未成年者がというところはもう自主基準があって、未成年者は広告には出さないことになっておりまして、そこは守られております。

亀井酒税企画官
 ただ、今、井岸先生がおっしゃったように時代の要請に合わせて、例えば、先般も議論がございましたように、社会的な要請に対応していったらいいのではないかといったことについて、我々が行政指導をしていくというのは当然できるのだろうというふうに考えています。またそうしなければいけないのではないかなというふうに思っています。

奥村座長
 お話がもう社会的要請の方に入っていますので、何かお酒を飲まない方がいいようなことばかりで議論をどんどん進めているのですが、先ほど濱田鑑定企画官がおっしゃってくださったように、飲んだ方が体にいいのだというところも、適正飲酒の推進というところで何か取り扱うことができるといいですよね。

濱田鑑定企画官
 先ほど須磨先生からあったのですけれども、お酒の品質というものを飲んだ瞬間での好みと考えると、安くてもいいのがあるのかも分からないのですけれども、その品質というものをもっと適正飲酒の考えで、心地よく飲める、それから謂れを楽しみながら飲める。つまり健康的でまた適正飲酒ができることや、その謂れとか製造方法とかもっと付属的なものを含めたものまでを品質と考えると、単に安いだけのお酒にそういう品質があるかというと多分ないと思うのです。そういうことでお酒は致酔性があるけれども、国民生活にとって重要なものであると考えた場合には、適正飲酒ができるような品質のものについて、国としてやるかどうかは別にしても、何らかの形で応援していく必要があると思います。単に経済性だけに任せた場合には、今言った安い酒だけに流れていってしまって、国民の健康にもプラスにならないのではないかという感じがするのです。

須磨氏
 悪酔いするということですか。

濱田鑑定企画官
 先ほど田中先生がおっしゃったように、味わって飲む。要するに、この酒は伝統的なものでという謂れを語り合いながら飲むとか、そういったことです。単に値段を高くすればいいというものではなくて、もっと製造法にこだわったお酒であれば、味わって飲むのではないかなというふうに思うのです。

須磨氏
 文化的な面ですか。それとも体に影響するということですか。

濱田鑑定企画官
 文化的な面が強いかもしれません。

奥村座長
 お酒を開発して健康によい、肝臓を痛めない酒を造ろうというような動きはあるのですか。

濱田鑑定企画官
 一部にはあります。

奥村座長
 そういうのをむしろ応援していただきたいですよね。

濱田鑑定企画官
 酒類総合研究所においては、お酒の中にボケ防止に効果があるという成分がどれくらい入っているのだろうかとか、それをたくさん造らせるにはどういう製造方法がいいだろうかというのは、少し今研究を始めております。

田中氏
 ヨーロッパの調査でもそうですが、やはり一つは食事と一緒に、酔うためではなくて食事を楽しむために飲むというのと、農産物をベースにしてその中での伝統的な発酵等の技術に支えられた品質の物を楽しむ、というふうなことがやはりベースとしてあるし、それは日本でも同じことが言えるのではないかと思うのです。

田嶼氏
 そして、何よりも適量とされる純アルコールの量ですね。1日に飲むとより健康であるという量。この知識、これを生かせる知識を浸透させるということが大切だと思います。

奥村座長
 いただいている時間になってまいりましたので、本日はこれで終了させていただきたいと思いますが、この後のことを事務局から、どういう流れになるか御説明いただけますか。

亀井酒税企画官
 論点整理を前回と今回との2回にわたって御議論していただいたということでございますので、いただいた御議論を踏まえて、私どもの方で取りまとめ案の作業に入りまして、次回11月22日とその後の11月29日の2回に分けて、また御議論していただくということにしたいと思います。

奥村座長
 イメージ的には、この平成14年9月のような冊子を作るおつもりですか。

亀井酒税企画官
 また御議論していただくことになると思うのですが、今までのものを踏まえたことを冊子にしたいと考えております。

奥村座長
 冊子にまとめたいということがゴールですか。あと2回ばかり議論を詰めまして、できればこの第1回目の懇談会と同様の研究レポートを作成したいというのをゴールにしてやっていきたいということですので、よろしくお願いいたします。

矢島氏
 あと2回というのは、あと2回でこの懇談会は終了ということでございましょうか。

亀井酒税企画官
 2回でまとめられるところまで、まとめていきたいなというふうに思っています。ただ、そこで御議論が尽くされない場合については、例えば、中間的に取りまとめるとか、そういうこともいろいろと考えられると思います。次回、私どもの提案を受けて、ここはもっとこう考えるべきだという意見もございましょうし、そこはまた考えていきたいなというふうに思っています。

奥村座長
 とりあえず、今回与えられたテーマに関しては今までの検討を踏まえ、とりまとめておきたいということで今事務局の方は作業をしているということです。
 それでよろしいですか。

亀井酒税企画官
 ただ、それが最終的な取りまとめになるのか、中間的なとりまとめになるのかということについては、また御議論の過程であるだろうと思います。

奥村座長
 それでは今日はこれで終わりにします。ありがとうございました。

─ 了 ─

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