奥村座長
 ありがとうございました。
 それでは、先ほどと同じようにお進めいただきたいと思います。
 今、御説明いただいた中では、田嶼先生や小宮先生にも入っていただいているのですが、何か追加的なことでお教えいただけることはございますか。

田嶼氏
 第14回のヒアリングのときにも申し上げたことなのですが、飲酒によって健康問題に関してどのぐらい具合悪いことが起こっているのか、そして、それが特に青少年においてどのくらい大きな問題になっているかということに関して、エビデンスが幾つかあるわけですから、それをバックにして、強力なメッセージを出していただきたいと思います。丸山先生から、青少年のときから習慣性にアルコールを飲用していると、海馬のあたりが萎縮していき、記憶に問題が起こるというはっきりしたエビデンスがあるというお話を伺いました。最近、非常に世の中は健康志向でありますから、そういうことをもっと分かりやすく世間に知らせていくことが、少しずつ青少年における飲酒を減らす方向につながるのではないかと期待しています。

小宮氏
 追加というのではないのですけれども、先ほどの議論を聞かせていただきまして、私の意見ですけれども、未成年者の飲酒を禁止する年齢ですけれども、これは座長がおっしゃったことと、私は同意見で、どうも大学生、18歳、19歳に禁止しているといっても本当に実効性がないということで、逆に実効性がないと、法律自体が甘く見られるといいますか、逆に17歳、16歳あたりでも、あんな法律あってないようなものだという風潮が蔓延していくことが、一番怖いことです。つくった以上はもう厳格に守るぐらいの、法律自体の信用性が失われますから、そういう意味では、先ほど医学的には18歳も20歳もほとんど変わらないというのであれば、逆に法律の威厳を高めるためにも、これも18歳で切るべきではないかなと思います。ほかのいろいろな青少年の健全育成の法律を見ても、18歳の方がむしろ圧倒的に多いのでありますから、そういう整合性をとるという意味でも、18歳で切ることを検討していただいた方がいいのではないかなという感じがしています。
 それから、社会的な要請ということで、いろいろ今回、こういう懇談会を設けていますけれども、これは私の個人的な感想ですけれども、恐らく一般の人たちから、例えば未成年者に酒を飲ませるなというのは、家の中で飲んでいることを問題にしているのではなくて、例えば、夏になると公園でお酒を飲みながら花火をやったり、大騒ぎしたりして、その騒音がひどいために、そういうことに対して非常にクレームが来て、なんだあの中学生、高校生なのに酒を飲んで大騒ぎを夜中にしているということではないでしょうか。私なんかもいろいろ現場を見ているとそういう声が非常に強いもので、そこで私の報告とも関連しますけれども、場所でもってある程度飲んでいいところ、飲んで悪いところというような規制の仕方、あるいは対応策の講じ方というのも検討すべき時期にきているのではないかと思います。それが逆に社会的要請といいますか、いろいろな酒類販売に対するクレームを軽減することにつながっていくと思います。家庭にはできるだけ入らないようにして、しかし、公共の場所ではきちんと厳格にそれを規制するというような形の方向性がいいのではないかと思います。
 それから、今の三つのヒアリングの中で、学校教育の中での問題が出てきましたけれども、これはどうも私の見ている限り、このヒアリングのときには文科省と提携して厚生労働省もやっていると言っていますけれども、本当にそんなに真剣にやっているのかなとかなり疑問なところがありまして、例えば、警察官が中学校に行って非行防止教育なんかでアルコールの話なんかをしていますけれども、林先生がおっしゃっているように、ほとんど効果がないのではと思います。中学生にアルコールは何歳から飲んでいいのですかと質問すると、20歳とみんな答えます。何で20歳になるまでアルコールを飲んではいけないか知っていますかと質問すると、法律に書いてあるからとみんな知っているのです。知っていることを今さらくどくど言っても、要するに法律で書いてあるといっても、そんなことは重々承知なわけで、しかし、やってしまうというところに問題があるのです。これはもうアルコールという狭い問題ではなくて、非行防止とか、そういう広い枠組みで、この非行防止も単にあれをしちゃ駄目、これはしちゃ駄目だというのではなくて、自分がそういう行為をしたら、どのくらい被害者にインパクトを与えるのかと、その気付きから出発しないと反省をしないといいますか、非行防止できないのではないでしょうか。このような考え方が、今、欧米では主流になってきました。ただ駄目だ、駄目だと言うのではなくて、もしアルコールを飲んでこういう行為をしたら、一体被害者にどういう影響を与えるのか、あるいは地域にどういう影響を与えるのかと、そういうところからもっと広い枠組みでとらえる必要があるのでしょう。そのためには、ちょっとこの場所が違うかもしれませんけれども、文科省の方でもアルコール乱用の何とか教室ではなくて、もっと通年レベルできちっと非行防止という大きな枠組みの中でアルコール問題も位置づけるというような内容で今後はやっていく必要があるのではないかと思いました。

奥村座長
 どうもありがとうございました。

田嶼氏
 今の御発言についてお伺いしてよろしいでしょうか。先生の御発言は、本当におっしゃるとおりだと思いました。それはどちらかというとソフトの面ですね。教育の面と言ってもいいと思うのですけれども、規制の面ではどのようにお考えになっていらっしゃいますか。規制は緩くして、そして、本質的な訴えるものの方に重きを置くべきだというお考えでしょうか。

小宮氏
 そうですね。ですから、年齢はほかの青少年育成のいろいろなものと整合性をとって、18歳未満は駄目だというふうにしておいて、これはある意味、ちょっと規制緩和の方にいくわけですけれども、しかし、場所できちんと取り締まるようにすればよいと思います。例えば、公園で17歳、18歳の若者がお酒を飲んでわめいていて、そこに警察官が来て駄目ですよと言っても、そこに補導とか、そういうものの根拠がまだ今のところないのですよね。そこで、大きなお世話だとか、俺はもう21歳だよなんて言われたら、そこでもう終わってしまうような話になってしまうので、そこはきちんと、それこそ検挙をして厳格にやっていくという、そういう硬軟両方、飴と鞭であるべきだと思います。

田嶼氏
 分かりました。青少年はできるだけアルコールを飲まない方がいいに決まっているのですが、どこかで線を引くとしたら、やはり受け入れられる年齢というのがあるだろうと思うんですね。それは海外がどういう状況になっているかということもあると思うんです。でも、一度こうと決めたならば、それに反した場合にはきちっと罰則をつくっていただいて、それを執行していただくということの2本立てでいかないと、どんどん子供たちを甘やかしてしまうと思うのですね。第15回、私は出席できませんでしたけれども、このときに大人の世界と子供の世界を区分けするゾーニングという考え方に基づいているということが書かれておりますけれども、幾つまではあなたたちはこういうことはしてはいけないのだと、大人ではないのだということを大人たちがきちっと子供たちに示すということが必要なのではないかと思います。

田中氏
 不確かな情報で、今度海外調査のときにぜひ機会があったら調べていただきたい点なのですが、以前、社会人の大学生を連れてロサンゼルスの研修に行ったときに、その大学生が夜12時過ぎにホテルに帰らないで、お酒を飲みながら路上をぷらぷら歩いていました。そして、帰ってこなくてみんなで大慌てしていたら、警察の牢獄に入っていまして、関係者が迎えに行きましたところ、その社会人の学生が大変しょげておりました。警察の方に伺ったら、お酒を飲んで一人で街をぷらぷらしていると犯罪に出会う機会があるので、検挙したのではなくて保護したのだそうです。でも社会人ですから、逮捕されたとえらいしょげていたのです。逆に言うと、悪いことをしているから罰則というのではなくて、未成年者がいろいろな犯罪に巻き込まれたり、それから、そういう悪い大人の餌食にならないようにするために保護するという考え方も海外ではあるんだなということを知りました。日本でいきなりそれを導入すればいいか悪いかは別問題として、検挙ではなくて保護という考え方も一つあるのかなと考えています。

奥村座長
 田嶼先生、情報はエビデンスがないと、いくら立派な文句を言っていても、次第に効果は逓減していくからという御専門の方の話があって、では、未成年者は駄目ですよという情報に対してエビデンスを付けなさいと言われたときに、18歳、20歳、あるいは何かお酒を飲み始める年齢が遅ければ遅いほどいいということは、20歳よりは25歳から飲み始めた方がいいということなのですか。

田嶼氏
 ええ、丸山先生の御報告の中に入っていたと思います。25歳を境にして二分に分けたときのお話です。もう一度確認してみます。

奥村座長
 そうなんですか。そういうエビデンスということになってきたときと、年齢の区切り方ですね。そこは割合サイエンティフィックにやれる問題なのか、それとも体重とかその他の要件の方がはるかに効いてくるんだということ、年齢ではなくてということなんでしょうか。

田嶼氏
 このようなことを決めるときには、健康面といいますか、その切り口だけでは決まらないと思うんです。社会的なこともあるでしょうし、いろいろな要因を考え合わせて、そして最も適切な年齢を決めるということだろうと思います。ですから、一つのエビデンスだけが非常な重みを持つということはないだろうと思うんです。医学的に見て、飲酒をする年齢は遅い方がいいに決まっているけれども、そして、それを裏づけるデータはあるけれども、それによって即何歳にしなくてはいけないということにはつながらないだろうということだと思います。

水谷氏
 医学的には全然私は存じませんけれども、相当個人差のある問題だろうと思っているわけです。アルコール分解酵素がある人とない人では全く違いますしね。男と女でも相当差があるのでしょう。ですから、体重というお話が先ほど出ましたけれども、体重とかそういうのも影響はあると思います。それを細かく言えば切りがないですけれども、大雑把に一番納得性のある、客観的にというので年齢で決めているに過ぎないのではないかと私は思いまして、そういう点からいくと、罰則とか規則が厳しい割にはかなりいいかげんな決め方だなという具合に思っているわけです。アルコールが飲めない人にとりましては、罰則が強ければ強いほど助かるわけです。昔は酒が飲めないと、もう悪いことのように言われたものですから、やむを得ず無理して飲んでというようなことがありましたが、最近そういうことが非常になくなりまして、いい傾向だと私は思うのです。その傾向で飲める人に対して飲むなと言うのもかわいそうだし、飲めない人に飲めというのもおかしな話でして、もう少し自立的に考えていくべき問題で、それこそ教育の問題だろうという具合に思いまして、規則とかいうもので縛るというのは非常に無理があるのではないかという感じを私自身は持っております。

奥村座長
 水谷先生は、未成年者は飲むなということ自体、むしろなくした方がいいという極論にいきますか。それとも未成年者でないとするのは、それは18歳か20歳か分からないけれども、そのぐらいは認めてやるというお立場ですか。

水谷氏
 私はもう客観的な基準として年齢ぐらいしかないのではないかという意味で、20歳ともう決めたら、それでいいのではないかと思っております。これを座長のおっしゃるように18歳に下げるというのは、やはり私はどうかなと思っております。アメリカが21歳に上げたそうですが、上げるのもどうかなという感じで、非常に大雑把なことなのですから、それはそれで規則を盾にして云々よりは、むしろお酒についての教育というのでしょうか、家庭の教育だと私は思いますけれども、それをもっと徹底しなさいということかなと思っております。

奥村座長
 多分条件が認められれば、今、水谷先生がおっしゃったことに反対の人はいないのですけれども、問題はその家庭なり学校なりの教育が、水谷先生がおっしゃっているような十分条件を満たさないので、規則にしたがってということもあり得ると思います。
 ところで、日本と行き来が活発になる国と比較して、年齢制限がかなり違っていますと、国際交流とのかかわりという点ではどうなのでしょうか。多分EUは一緒にしたのでしょうね。それともEU内でポルトガルとドイツでは違いますみたいになっているのですかね。行き来は自由にしたのですから、多分一緒にするのでしょう。中国では年齢制限はあるのでしょうか。そうすると、国際化とのかかわりもここでは出てくるので、また検討課題になりそうですね。アメリカは21歳ですが、ドイツは、16歳ですよね。ドイツの人が私のゼミに入っているのだけれども、その人たちにあなたの国は16歳でも、日本では 20歳ですとはなかなか現実の場ではいかないでしょう。このようなことが今後出てくるかもしれませんね。
 ほかに何かございますか。次へいってよろしいですか。
 では、次の箇所をお願いします。

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